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ワールド・エンジン・データブック 2019-2020:from inside(2)


とにかく地道な作業が続くワールド・エンジン・データブック。一冊の本にまとめるためには決まったフォーマットに則りデータを載せないといけない——のだが一筋縄ではいかない。今回は、データ収集自体にそれほどの苦労はないのだが、とにかくバリエーションが多く把握に手こずるドイツについて。




TEXT●三浦祥兒(MIURA Shoji)

フォルクスワーゲン

 ドイツ車のデータ整理でいつも問題になるのはVWだった。ワールド・エンジン・データブック(EDB)ではセアトやシュコダといった子会社のデータは除外しているのだが、それでも種別が多すぎてヤヤコシイことこの上ない。ゴルフ1車種で搭載エンジンが10種類を超えていたのだ。ドイツ本国だけでなく、東欧や南欧、中南米で生産される旧いエンジンがやたらとあり、ご丁寧にそれらはラインアップの隙間を埋めるべくくまなく本国のカタログに並べられていたから始末に困る。




 今年になって一気に状況が変化した。あれほど多かったエンジンは徹底的に絞られ、1.0ℓの3気筒、1.5ℓの4気筒、2.0ℓの4気筒の実質3機種だけになった。「実質的に」という註釈が付くのは、トゥアレグ用にV6が残っているからなのだが、VWグループ全体からすれば、大型のSUVはアウディのQシリーズやポルシェ・カイエンが主力となっているので、トゥアレグのためにV6を存続させる必然性は減っている。既にフェートンのようなEセグ車はラインアップから落とされ、技術的に見れば実に興味深いVWの狭角V(W)エンジンは、ブガッティやベントレー用以外、完全に消滅した。




 1.6ℓや1.8ℓというVWの量販車種の看板だった中間排気量直4も最早存在しない。ダウンサイジングターボの嚆矢となった1.4ℓのTSIは、ライトサイジングを標榜する1.5ℓのEA211「Evo」に切り替わった。




 車種で言えば、ビートルやシロッコは生産中止となり、大型セダンとともにスポーティーカーと呼べる車種はなくなって、代わりにカタログ上にはEVがその存在を誇示するようになった。




 変化が著しいのはディーゼルエンジンが激減したこと。2年半前に起こったディーゼルゲートの影響で、北米市場にからディーゼル引っ込めざるを得なくなったのが本国マーケットにも響いているのかもしれない。やはりトゥアレグ用のV6&V8ディーゼルは同門のアウディ設計なので、いよいよVWのディーゼルエンジンラインアップはシュリンクしていることになる。ディーゼルを整理したのはアウディも同様で、特に小排気量DEがラインアップから落ちたのが目立つ。ガソリンエンジンと違って、ボア径が小さいディーゼルは燃焼が厳しいのは周知の事実であり、価格面で後処理にカネをかけられない故に、今後はRDEに適応できずにガソリンHEVに取って代わることになると思う。




 VWが「直列エンジン専業メーカー」になったのと裏腹に、アウディは新しいV8ターボを投入する等、機種は整理されたもののマルチシリンダーがまだまだ幅を効かせている。元を辿れば80年代までさかのぼれる5気筒エンジンも未だ顕在。こうしたマルチシリンダーは、ポルシェ用を含め先頃亡くなったフェルディナンド・ピエヒ主導の開発であり、経営面ではピエヒをはじめとするポルシェ一族の影響力が排除されるようになったにもかかわらず、その遺産がしばらくはVWグループの利益率に貢献することになるのは皮肉なモノだ。




 VWではEA211系は1.5ℓのEvoに切り替わったけれど、アウディにはまだ1.4ℓ版が生き残っている。穿った見方をすれば、車種を整理したVWに対してどんどん車種を増やした結果、エンジン供給が追いつかないのではないか?とも取れる。

BMWとダイムラー

 所帯構成が複雑で、上から下までワイドなラインアップを敷かざるを得ないVWグループと違い、BMWのエンジン構成は実に簡潔にして明瞭。現在の直6の原型ともいえるライトシックスから、BMWはエンジンのサイクルチェンジをかなり系統だてて行っており、ターボにしろモジュラーシステムにしろ、きちんと段階を踏んで進化させているし、バルブトロニックを連綿と使い続けるように、行き当たりばったりで作ったり止めたりしないのが矜持なのだろう。




 そのモジュラーの直3・4・6が出揃っていることもあって、車両サイズに合わせてキレイなエンジン・ヒエラルキーが構築されている。ターボ時代になって、車名を排気量ではなく出力で区分けするようになって久しいが、だからといって、過給圧の設定範囲を無闇に拡げず、直4で300psが必要ならばすっぱり6気筒にしてサイズを上げるあたり、内燃機関の使い分けに筋が通っていると思わせる。




 吸排気方向を逆転し、Vバンク間排気として排気干渉を廃しながらシングルターボを可能としたV8や、フラッグシップのV12もしっかりと残されており、当面「バイエルン発動機製造所」の名は未だ揺るぐことはなさそうに見える。FCVやHEVについてはトヨタと協業することで、リソースを整理集中する効果があったのだろう。生産台数でいえば、年間約250万台とスズキより少ない小規模メーカーが、これだけのエンジンラインアップを揃えられるのは一種の驚きであり、それだけ利益率が高い「プレミアム・ブランド」なのだということもできる。




 ブランドイメージからはBMWと同等ともとれるメルセデスも、3気筒こそないものの、基本的に直4を量販設定としつつV6をモジュラー直6に置き換えつつあり、エンジン構成はBMWと似通っている。




 しかし、昨年から投入された1.3ℓの直4ガソリンターボと、1.6ℓのディーゼルというボトムレンジのエンジンは、実のところルノー・日産製であり、ミニで培ったFF技術を大々的に展開しつつエンジンも専用設計としたBMWとはちょっと実情が異なる。乗ってみてもAクラスとBクラスはFRのベンツとは明らかにテイストの違う代物で、廉価な小型車についてはマーケティングの必要性から揃えた以上の何者でもないといえるだろう。むしろ三菱との提携時代に生まれて、その後継子扱いになっていたスウォッチにルノー陣営を引き込んでICEVのマーケットを確保しつつ、自社ブランドとしてはEV(EQ)に転換させた寝技の方が光って見える。AやBは今更どうやってもミニのような独自のブランドを形成できないから、そこは他所さんに任せましょう……というわけ。




 そうなると、利益率が高く、他国では作れない(作っても大して売れない)大排気量マルチシリンダーに、勢い注力することになる。EUにゴリ押ししてPHEVのEV走行時CO2排出量をゼロカウントにさせたのも、裏を返せばV8やV12の市場を守るためであり、生産量はともかく、データ上でやたらBMW&ベンツにマルチシリンダーが多いようにみえるのも、むべなるかな、ということなのであった。(続く)

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