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日産NV350キャラバンのメカニズムをピンポイント解説!


商用バンとしての実務面だけでなく、パーソナルユースでの満足度も高めるという2兎を追うために、メカニズムに求められた課題も多い今回のマイナーチェンジ。より乗用車ライクな造形のVモーショングリルを実現するための冷却系や日常でのドライブでも主戦場たる現場でも役に立つ先進装備に注目してほしい。




REPORT●安藤 眞(ANDO Makoto)


PHOTO●平野 陽(HIRANO Akio)




※本稿は2017年7月発売の「新型VV350キャラバンのすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様が現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。

ロングボディ・標準幅・標準ルーフ 2WD

標準ボディ車は、4ナンバー枠いっぱいのサイズ。全幅は1695㎜と、一間(約1818㎜)幅のスペースがあれば駐めておくことができる。ホイールベースは2555㎜とMクラスのミニバンより短く、2WD車の最小回転半径は5.2mと小回りがきく。



全長:4695㎜


全幅:1695㎜


全高:1990㎜


ホイールベース:2555㎜


フロントトレッド:1475㎜


リヤトレッド:1450㎜
着座位置が高いため、乗降時にはステップとアシストグリップが頼りになる。足を掛けた時の力の方向を考えると、ステップは少し後傾していても良いのではないか。問題は、ドアの見切り線が水平でなくなることか。

後席ドアの開口幅は十分に広く、ステップも低く、乗り降りはしやすい。ただし、ステップがあと5㎝前方に長ければ、もっと良くなるのではないか(ノブ付き扉はサービスホールではなさそうだし、中には何もない)。

コンデンサー&ラジエーターへの導風

NV350キャラバンは、ラジエーターとコンデンサーの配置が独特。グリル裏に置いたほうが効率は良さそうに見えるが、そうなると電動ファンを追加する必要が生じ、コンデンサーを通過した空気を使うことになるので、冷却効率自体は悪くなってしまう。

冷却系の配置とVモーショングリル

Vモーションデザインの大型化によって、エンジン冷却風の導入口面積が制約され、バンパーデザインの変更によって、熱交換器と冷却風取入れ口のオフセット量が拡大。高負荷走行の多い商用車にとって、冷却性能の悪化は商品性に関わる大問題だ。

バンパーサイドへの導風形状

「流体は面に沿って流れようとする」という性質を利用し、バンパー左右の開口部形状を決定。内側の曲率が大き過ぎれば、風は外に飛ばされてしまい、小さ過ぎれば境界層が剥離して気流が乱れてしまう。

1BOX車ならではの工夫

左右のカメラはサイドミラーに装着されており、ミニバンや乗用車に比べて後方が遠くなり、カメラの取り付け角のバラツキの影響を受けやすい。これに対応するために、ラインオフ時のキャリブレーションには専用の治具を使用している。

作業現場で便利なAVM



建設現場では、工事の進捗度合いで資材の置きかたが変わり、作業中も人が頻繁に歩き回る。アラウンドビューモニターと移動体検知機能は、安全性向上に威力を発揮するはずだ。

前後移動体検知

クルマを発進させようとしている際、カメラの撮像範囲内に移動する物体を捉えると、警報音とディスプレイ表示で注意を促す。ディーラーオプションのナビを装着すると、画像はナビ画面に表示させることができる。

インテリジェントエマージェンシーブレーキ

自車速度が約5㎞/h以上で作動を開始するミリ波レーダー方式の緊急自動ブレーキを、バン全車に標準装備。緊急自動ブレーキで衝突前停止が可能なのは、相対速度約30㎞/hまでだが、たいていは最初の警報音でドライバーが回避行動を取れるはずだ。

高張力鋼板の使用部位

高強度鋼板は、衝突強度が必要な部位に集中的に採用。ワンボックス車は室内容積の確保が優先されるため、形状で剛性を確保するのが難しく、高強度鋼板を使用しても薄板化できず、軽量化にはつながらないからだ。

ボディの高剛性化



骨格の結合部には、補剛のためのガセットを配置。室内容積や開口部面積に影響を与えず、ボディ剛性を向上させる手法だ。

不等ピッチビード



フロントバンパービームとサイドメンバーの間には、クラッシュボックスを設定。底面にノッチを設けることで、衝突時には段階的に座屈させ、Gの立ち上がりを抑えて乗員保護性能を高める設計が行われている。

ダブルウイッシュボーン式フロントサスペンション

フロントサスにダブルウイッシュボーンを採用するのは、操安性より支持剛性の高さから。スプリングにトーションバーを使用するのは、積車時の高応力に耐えるだけのコイルスプリングではレイアウトが難しいからだ。

リジッド式リヤサスペンション

リヤは商用車の定番であるリーフ式。ダンパーが左右で逆向きに付いているのは、トルク反力やブレーキ力でリーフが波打つワインドアップを抑えるのが目的だが、こうすれば左右のスプリングシートが共用できる。

YD25DDTi 2.5ℓ ディーゼルターボエンジン

ディーゼルエンジンには、欧州で実績を積んだYD25DDTiエンジンを用意。初出は98年という伝統あるエンジンだが、シリンダーヘッドや燃料噴射系の刷新が行なわれており、現在のモデルは“ジェネレーション3”と呼ばれている。

排気量(㏄):2488


種類・気筒数:直列4気筒


弁機構:DOHC 16バルブ直噴ターボ


ボア×ストローク(㎜):89.0×100.0


圧縮比:15.0


最高出力(kW[㎰]/rpm):95[129]/3200


最大トルク(N・m[㎏m]/rpm):356[36.3]/1400-2000


使用燃料:軽油


燃料タンク容量(ℓ):65

2000barコモンレール式燃料噴射システム

燃料噴射系には、デンソーのコモンレールシステムを採用する。高圧ポンプで加圧した燃料を蓄圧パイプ(コモンレール)に溜めておくため、低回転でも高圧の燃料噴射が可能。噴射圧が高まれば、燃料の微粒化が促進されるだけでなく、噴霧速度が高まって空気とよく混ざるようになり、燃えやすくなって黒煙やPMの生成を抑えることができる。

小噴口径インジェクター

1本あたり8つの噴孔から、最大噴射圧2000barで燃料を噴射する。噴射制御はノズルに内蔵されたソレノイドで行なわれ、1サイクルあたり最大9回の噴射能力を備える。多段噴射は排ガス低減だけでなく、燃焼騒音の抑制にも効果が高い。

パラレルポートシリンダーヘッド

2本ある吸気ポートは、巻貝状の溝を掘ったヘリカルポートと、ストレートに入れるタンジェンシャルポートに役割分担。ヘリカルポートでスワール(旋回流)を発生させ、タンジェンシャルポートでタンブル流(たて渦)を発生。燃焼室内の流れを加速し、燃料のミキシングを促進して黒煙やPMを減少させる。

QR20DE 2.0ℓ/QR25DE 2.5ℓ ガソリンエンジン

ガソリンエンジンは、長らく日産のミドルクラスを支えて来たQR系を搭載。2.0ℓはショートストローク型だが、実用域のトルクには定評があり、横置き仕様がT30型エクストレイルやC24型セレナにも搭載されていた。

■QR20DE


排気量(㏄):1998


種類・気筒数:直列4気筒


弁機構:DOHC16バルブ


ボア×ストローク(㎜):89.0×80.3


圧縮比:9.7


最高出力(kW[㎰]/rpm):96[130]/5600


最大トルク(N・m[㎏m]/rpm):178[18.1]/4400


使用燃料:レギュラー


燃料タンク容量(ℓ):65


■QR25DE


排気量(㏄):2488


種類・気筒数:直列4気筒


弁機構:DOHC16バルブ


ボア×ストローク(㎜):89.0×100.0


圧縮比:9.5


最高出力(kW[㎰]/rpm):108[147]/5600


最大トルク(N・m[㎏m]/rpm):213[21.7]/4400


使用燃料:レギュラー


燃料タンク容量(ℓ):65

ディーゼルの2段掛けカムチェーン

カムドライブチェーンは2段掛け。シリンダーの右側(向かって左)にシャフトを設け、ここで減速してからカムスプロケットを駆動する。バルブ挟み角が0度に近くなるディーゼルエンジンでは、中間減速を入れないと、カムスプロケットが干渉してしまうからだ。

電子制御可変容量ターボチャージャー

タービンスクロールに可変翼を並べたバリアブル・ジオメトリーターボを採用。低負荷時には可変翼を閉じて流速を高め、排気を効率良くタービンブレードに当てることで、ターボラグの縮小を図る。

LNT触媒とDPF

排ガスの後処理装置には、リーンNOxトラップ触媒(LNT)とディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)をタンデムで装備。上流にLNTを、下流にDPFを配置して、ポスト新長期規制に対応。

EGRクーラー

ディーゼルエンジンには、大容量の水冷式EGRクーラーを採用。再循環させる排ガスの温度が下がるため、圧縮開始温度が低くなるだけでなく、密度が高まって吸熱量が増加し、燃焼温度が低くなる二重の効果でNOxの低減を図る。

トランスミッション

ディーゼルエンジン車のATには、ジヤトコ製JR509E 型5速ATを搭載。長らく日産のFR系モデルを支え続けて来た信頼性の高いユニットだ。

オイル交換告知機能

現代のディーゼルエンジンは、DPFやLNTを再生するためにポスト噴射(膨脹行程後期の噴射)を行なうため、シリンダー壁に付着した燃料によってオイルの希釈が進んでしまう。そこで、ポスト噴射の履歴を記憶しておき、希釈が進んでいると判断されると警告表示を点灯させるOil Change Supervisorを装備する。

ロックアップ領域の拡大

12年にフルモデルチェンジを行なった際に、ATは多段化すると同時にロックアップ領域を拡大。負荷率が小さければ3速30㎞/h弱からロックアップできるようにし、実用燃費を大幅に向上させた。

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