野菜に含まれる苦味は、私たちの身体を菌から守り、抵抗力を強める力を持っています。今回は、春の苦味として先人たちから受け継いできた春野菜を美味しくたべる方法について考えていきたいと思います。
みなさんは献立を考える時、肉や魚をメインに野菜をつけ合わせに、と考えがちではありませんか? それだけではもったいないです! せっかく春野菜がたくさん店頭に並んでいる時季ですから、それぞれの野菜の良さを知って調理してみましょう。野菜の美味しさを生かせば肉や魚のうま味もバランスよく引き立つのではないでしょうか。

筍の刺身

筍の刺身


春野菜の苦味やえぐみを美味しく感じるのはなぜ?

春野菜独特の苦味やえぐみが好き、という人もいればちょっと苦手だなぁ、と人によって意見は分かれます。子供は苦味やえぐみを嫌がりますが、大きくなるまでに繰り返し食べていくことによって慣れ親しみ、美味しく感じられるようになるのです。
塩味や甘み、酸っぱさと違って苦味は複雑です。現在わかっているだけで苦味には25種類あるというのです。慣れ親しむといっても、どのような種類の苦味に、どのくらいの頻度で接してきたかによって美味しく感じるかどうかは、違ってくるようです。苦手という方もせっかくですから春野菜の苦味にすこしずつ親しんでいきませんか?
今出まわっている菜の花、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、セロリ、ウド、筍など新鮮な野菜を買って来たら、水洗いしたあと一口生で食べてみるというのはいかがでしょう。野菜が持つ匂いと食感、味わいの中にそれぞれの苦味やえぐみを感じることができます。そうしたら春なんだなぁと季節も実感できますよ。

菜の花のおひたし

菜の花のおひたし


ポイントは野菜の歯ごたえと色味を損なわないこと!

野菜の持っているうま味は野菜がもつ水分そのものです。抵抗力を高めるといわれる苦味やえぐみも大切にしたいですね。必要以上に抜いてしまうことなく調理するには、野菜自身が持っている色と歯ごたえを残すこと、と頭においておくと良いようです。いくつかポイントをあげておきましょう。
<野菜の力を引き出す調理法>
◎まず水に浸して十分に水分を吸わせて元気にしてから調理しましょう。野菜に水の道ができれば熱の伝わりも早くなり調理時間が短くできるそうです。
◎さっと湯通しをします。まわりについている雑味を取り除き、素材本来のきれいな味がでます。
◎火を通しすぎない。野菜は歯ごたえも美味しさです。やり過ぎては美味しさも半減してしまいます。
◎余分な味付けを控えましょう。野菜の味が生きる程度で、主役は野菜、これを忘れないようにしましょう。
◎調理したらすぐに食べる。これが一番大切かもしれません。茹でたて、蒸したての野菜はそのままでも本当に美味しいものです。
レストランで食事をしたとき、メインの肉料理に添えてある野菜が本当に美味しいと思うことが時々あります。そんなときには、動物性タンパク質と脂肪を中和しながら、うま味を引き立てる野菜の実力を感じます。
参考:
野崎洋光著『野崎洋光の野菜料理帳』家の光協会

筍ごはん

筍ごはん


春の苦味を美味しくたべれば、春を満喫です!

身のまわりを見てみると思いの外、ほろ苦いものを知らないうちに美味しい、と口にしていることにお気づきですか? 疲労回復にいいというチョコレート、近頃はカカオ含有量が高いものが人気とか。チョコと相性がいいといわれるワインに含まれる苦味成分はタンニン、ワインの酸化を防ぐ働きがあるそうです。1杯のコーヒーが疲れた頭をスッキリさせたり、仕事終わりの冷えたビールの苦さにホッとひと息、と私たちの毎日はどうやら苦味に癒されているようです。
春の苦味がわかるようになれば大人になった証拠、と昔いわれた気がします。春の苦味を食して成長してきましたから、人生の苦味もたっぷりと胸に沁みています。苦味のわかる大人とは、人を癒やせる力を持っていることなんだ、と思えば人生なかなか豊かではありませんか。

独活(ウド)のてんぷら

独活(ウド)のてんぷら