昼の時間が最も短くなる日、それが「冬至」ですがこの日を境に日脚はしだいに延びて春に近づきます。とはいえ寒さは厳しさを増していくのがこの頃です。年が押し迫っての季節の行事は、慌ただしさの中にホッとひと息つける癒しがありますね。残り少ない日々ですが抱えていることは山盛りではありませんか? そんな時ですが「冬至」について、先人たちが何を思いどんな意味を込めたのか、ちょっと知りたくありませんか。


起源は古代中国「一陽来復」がなぜ「冬至」なの?

「冬至」を迎えるとよくいわれるのが「一陽来復」です。すべてを陰と陽の2つの消長で考える陰陽説では、冬至の直前で陰が極まり、冬至から陽が戻って来ると考えられたのです。
そもそもこの考え方は古代中国の周王朝(前11世紀~前3世紀)の時代に国の大事を決定するために使われた占いが元となっています。そこから長い時間をかけて研究され宇宙を一貫する道を明らかにする哲学「易」となりました。
「易」には陰陽を組み合わせた64の掛(カ・ケ)があり「一陽来復」もそのひとつ、5つの陰と1つの陽で表され太陰暦では11月に当てられています。前月の10月は6つの陰だけで表されるため「陰が極まる月」となります。しかし「易」ではたとえ陰ばかりで陽は見えずとも隠れたところに陽はあると考え、見えなかった陽がひと月後に現れ「一陽来復」の11月となるのです。
日々は変化し続け1日として同じ日はありませんが、天体の運行は変わらず行われ季節はめぐりめぐってきます。「易」の字には「変わること」と「変わらないこと」相反する2つの意味をもたせていることに驚きます。人間の目で見る世界は激しく変化していきますが、宇宙の大きな世界は規則正しく働きこの世を司っていることに古代の人々は気づき、このような考えを確立していたのでしょう。
極まれば必ず変化の時は来る、という考えは私たちが生きていくうえで大きな希望となり嬉しいものですね。
参考:
『易』本田済著 朝日新聞社「新訂 中国古典選」


仏教では大宇宙の「星」を供養する「星まつり」が行われます

古代インドで生まれた仏教は大陸を越えて日本に伝えられました。ともに伝えられた占星術は密教に取り入れられ今に至っています。人の運命は生まれた星によって定められていると考える占星術はヨーロッパで発達したものが広く知られていますが、密教でも同じように天体の動きと人の運命は結びついていると考えられているのです。
生まれ年の干支で決まるのが「本命星(ほんみょうじょう)」。北斗七星のいずれかの星になります。そして年ごとにめぐってくる運命の星が「当年星(とうねんじょう)」。私たちの1年の吉凶がここに表れます。この1年をふり返り新しくやってくる年を良き年にするために「当年星」「本命星」ともに供養し浄めるのが仏教の「星まつり」です。
運命を好転させるために「悪星退散(あくせいたいさん)」と悪い運気を追い払い、「善星皆来(ぜんせいかいらい)」と善き運気を呼び寄せます。新しい年を迎えるにあたり今年1年無事に過ごせたことへの感謝をし、足りなかったことや後悔などの反省をして、心を新たに祈念をこめていきます。陰から陽へ、長い夜から日脚が伸びる境目の「冬至」に行われるのもなるほどと感じます。
多くの仏教寺院で行われる行事ですが、「冬至」だけでなく「正月」や「節分」「立春」というさまざまな節目を選んでそれぞれに行われているようです。


昼は短し! あっという間に暮れてしまう庶民の「冬至」とは?

「冬至、冬中(ふゆなか)、冬はじめ」ということわざをごぞんじですか?
昼が一番短く夜が長い「冬至」を過ぎれば、昼がすこしずつ長くなり春に近づく、といわれますが暦の上では「仲冬」冬の真ん中。そして本格的な寒さはこれからなんですよ、という意味です。
このあと二十四節気は「小寒」「大寒」と寒さ本番の暦が続きます。ですからその前にしっかりと身体を作っておきましょう、とカボチャを食べて栄養をつけ、柚子湯にはいって身体を温めたりするのが庶民の「冬至」の過ごし方のようです。
柚子は漢方では発汗、解熱、疲労回復に用いられただけでなく、湯に浮かべれば精油のピネン、シトラール、リモネンが香りとなって大脳に働きかけ気分を癒し、さらに血液の循環を促し冷え性、筋肉痛も和らげてくれるとか。
「ひと年のつかれとおもふ柚子湯かな」 成瀬櫻桃子
カボチャを食べる習慣は中国から伝わったようです。冬は野菜が不足しがちですが貯蔵が可能なカボチャはビタミンも豊富で大切な栄養源だったことがわかりますね。
「ひときれの冬至南瓜に恙あらじ」 上村占魚
最近は炭水化物を控える傾向がありますが、なんといってもエネルギーの元はでんぷんです。ほどほどにして冬を乗り切るエネルギーが不足しないようにいたしましょう。カボチャの美味しさについつい箸がのびてしまう、そのくらいでいいのかもしれませんよ。そして短い日中ですが天気のいい日には、大いに太陽の光を浴びて身体を温めこれからの寒さにそなえてくださいね。

参考:
『身近な「くすり」歳時記』鈴木昶著 東京書籍