【カトマンズAFP=時事】米国の登山家アカシュ・ネギーさん(29)は、世界最高峰のエベレスト登頂に向けて訓練を重ねた──ここ数週間、米ニュージャージー州にある自宅リビングにセットしたテントで寝泊まりをしたということだ。(写真は低酸素テントを利用するアカシュ・ネギーさん。米ニュージャージー州の自宅で)
 ネギーさんが使ったのは低酸素テントだ。新型コロナウイルスの流行が続くネパールでの滞在期間を短縮させ、ウイルスとの接触リスクを減らす目的で、遠征前にこれを利用する登山者が増えている。
 4月に春の登山シーズンが始まって以来、今年はすでに30人以上が健康上の理由からベースキャンプを去っている。そのうちの3人は新型コロナウイルスへの感染が確認された。
 通常、登山者らはカトマンズから標高5364メートル地点のベースキャンプまで8日間かけて移動する。この間、高地への環境に少しずつ体を慣らすのだ。
 今回、遠征のために十分な休みを確保できなかったというネギーさんだが、低酸素テントの利用でベースキャンプまで時間をかけて移動する必要がなくなり、ほっとしたと話す。
 遠征前、ネギーさんはドーム形のテントで1日最長10時間眠った。テントは酸素を窒素と置き換えて低酸素状態をつくる装置につながっている。高地トレーニング用のマスクを着用しながらフィットネスバイクも利用した。
 こうした自宅での高地順応トレーニングを通じて、エベレスト遠征の期間を8週間から4週間に短縮できる可能性がある。
 自宅での低酸素トレーニングを経た短縮期間の遠征には、最大で8万5000ドル(約940万円)かかる。これは通常のエベレスト登頂に要する費用の約2倍にあたるという。
 しかし、このような高額な費用にもかかわらず、肺機能の強化を求めるアスリートらからの人気はプロアマ問わず高まっている。

■ワクチン接種を受けていても…
 人口約2800万人のネパールでは、1日当たりの新規感染者が数千人に上っている。また今季、登山許可証の発行件数が過去最多となる408件を記録。登山者の大半が地元ガイドのサポートを受けるため、800人以上が登頂を目指すことが見込まれている。
 こうした状況の中、低酸素トレーニングを取り入れているスペインの登山家フランシスコ・マルティンさん(34)にとっても、遠征期間の短縮は大きな意味を持つ。
 「新型コロナウイルスのワクチン接種を受けていても、自らが(ウイルスを)持ち込む恐れはある」とマルティンさん。「ワクチン未接種の人との接触を最小限にしたい。一番避けたいのは、誰かを病気にさせること」だと語る。マルティンさんは標高世界第4位のローツェ登頂を目指している。【翻訳編集AFPBBNews】

〔AFP=時事〕(2021/06/08-13:57)

情報提供元:時事ドットコム ワールドアイ
記事名:「自宅でできる高所順応 コロナ禍のヒマラヤ遠征で注目