【サヌアAFP=時事】イエメンで10人の女性が、周囲から冷ややかな目で見られながら、ひるむことなく地元の村に電気をもたらすという先駆的な取り組みを実現した。イマン・ハディさん(36)と仲間の女性たちは今、戦禍で荒廃した国内各地に太陽光発電を利用したマイクログリッド(小規模発電網)を拡大する夢を抱いている。(写真はイエメン首都サヌア北西のアブスにある太陽光発電所で太陽光パネルを清掃する女性)
 イエメンは、壊滅的な内戦によって大半のインフラが破壊され、国民は飢えと貧困に苦しんでいる。
 ハディさんは2019年から、首都サヌア北西に位置し、反政府武装勢力が掌握するアブスで「フレンズ・オブ・エンバイロメント発電所」を女性のみで運営している。太陽光パネル6基を備えたこの発電所は、村の数十世帯にとっては唯一の電力供給源だ。
 事業のアイデアは、アラビア半島の最貧国イエメンで、戦争の影響を少しでも和らげるために自分たちで何かできないかと模索した時に生まれたとハディさんは言う。

■地元への融資で市民を援助
 イエメンでは、2014年以降、紛争による死者は数万人に上る。同国では、イランから支援を受けた反政府武装勢力フーシ派と、国際社会が支持し、サウジアラビア主導の連合軍が援助する政府が内戦を続けている。
 紛争前に公共電力供給網を利用していたのは、国民の約3分の2だけだったが、内戦によって発電所をはじめ、病院や事業所も破壊されるか休業に追い込まれた。深刻な燃料不足もあり、多くの市民がろうそくの火を頼りに働くことを余儀なくされている。
 絶望の底にあるイエメンで希望の光となっているのは、都市部や農村の住宅の屋上に設置され始めた太陽光パネルだ。
 ハディさんの発電所は、国連(UN)や欧州連合(EU)に資金と研修を受けて運営されているが、こうした事業は市民が収入を得る一助にもなっている。ハディさんは毎月約2000ドル(約22万円)の純利益から小口融資を行い、地元の人々が食料品店やパン店などの小規模事業を始める援助をしている。

■以前はばかにされ、今は尊敬されるように
 とはいえ、起業家としてのハディさんの道のりは険しいものだった。
 コンクリートの壁に囲まれた小さな発電所が位置するのは、反政府勢力と政府軍との戦闘がたびたび発生する前線地域だ。しかも、農村社会では女性が家庭の外で働くことが受け入れられていない。
 「試練はたくさんありました。この種の仕事は男性がやるものと思い込んでいる家族や地元の社会からは笑われ、反対されました」とハディさんは言う。「でも私たちはこうした困難に粘り強く対処してきました。ばかにされていましたが、今では女性たちは感謝され、尊敬されるようになりました」
 ハディさんの事業は、気候変動と闘う人々をたたえる「アシュデン賞」(人道支援のためのエネルギー部門)を獲得している。国連開発計画(UNDP)は、同事業を現3か所から全国100か所に拡大する取り組みを行っている。ハディさんは、英BBCによる2020年の「世界で最も影響力のある女性100人」の一人にも選ばれている。
 ハディさんの長期計画は、地元地域の3060全世帯に太陽光発電の供給を広げることだ。「この国の全ての女性に対する私のメッセージは、立ち上がり外に出て、自分の夢を実現しようということです」とハディさんは語った。【翻訳編集AFPBBNews】

〔AFP=時事〕(2021/04/27-14:41)

情報提供元:時事ドットコム ワールドアイ
記事名:「女性だけの太陽光発電所 イエメン内戦に苦しむ家々に光