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ミャンマーの「静かな革命」 ストによる経済まひで国軍に圧力

  • 2021年04月22日 12:40:00

【バンコクAFP=時事】ミャンマーでは、何万人もの労働者が2か月以上にわたってストライキを続けている。ストの狙いは経済まひを起こし、それによって、文民指導者のアウン・サン・スー・チー氏を2月1日に追放した金満な軍上層部に抗議の声に耳を傾けさせることだ。(写真は資料写真)
 この市民的不服従運動には、銀行員、医者、技師、税関職員、港湾労働者、鉄道職員、衣料品工場の従業員らが仕事の手を止めて加わっている。
 反クーデターデモに対する国軍の弾圧で死亡した700人を超える人の中には、スト中の労働者も含まれている。逮捕されたか行方不明になっている労働者も大勢いる。街頭デモに参加できなくても、思い切った行動を取らざるを得なかったと言う人もいる。
 「もうお金もなくなったし、すごく怖い。でも他に手がない。独裁制は倒さなければ」と銀行員のエイさん(26)はミャンマーの最大都市ヤンゴンでAFPに語った。「路上ではデモはしない。軍のリストに載せられて逮捕されるのは怖すぎる」とエイさん。「私たちは静かな革命を行っているんです」
 国軍は国営メディアを通じて人々に仕事に戻るよう呼び掛け、脅しをかけているが、スト参加者は自分たちの力が強まっていると話す。
 「私たちの運動は広がっている」と民間航空で働くタウンさんはAFPに語った。部署の従業員400人の半数以上は職場に復帰していないという。
 こうした混乱で、アジアの最貧国の一つで、新型コロナウイルスの大流行で打撃を受けているミャンマーはさらに弱体化している。国民の4分の1は、1日1ドル(約110円)以下で暮らしている。
 世界銀行は現時点で、ミャンマーの2021年の国内総生産(GDP)成長率はマイナス10%になると予想している。スー・チー氏の文民政府が主導した民主化移行中にミャンマーは大幅な経済成長を実現したが、そこから大きく後退することになる。

■中国製品をボイコットするミャンマー国民
 「軍事政権にとって、こうした抵抗は想定外だった」と指摘するのは、仏国際関係研究所(IFRI)アジア地域ディレクターのフランソワーズ・ニコラ氏だ。ストライキを「リスクの高い賭け」と呼んだ。
 銀行がまひしているため、給料を受け取れない労働者も多く、ATM (現金自動預け払い機)も空っぽだ。衣料品業界は、クーデター前には非常に好調で約50万人が従事していたが、同じく崩壊しつつある。
 スウェーデンの服飾大手「H&M(へネス・アンド・マウリッツ)」や伊アパレル大手「ベネトン」などの外国企業は、ミャンマー企業への注文を控えていることを公表。欧米ブランドの仕事を請け負っている複数の中国系縫製工場が放火される事例も相次いだ。その結果、数千人の女性労働者は賃金を支払われないまま、故郷の村に帰る羽目になった。
 ミャンマー通貨チャットの価値が下落し、種子や肥料のコストが上がり、農家は収入減に苦しんでいる。
 さらに、ヤシ油、米、燃料油を含めた物価も上がり続けている。建設資材、医療機器、消費財は、通常は中国から輸入されているが、品切れが始まっている。
 「中国の企業家は輸出に難色を示すようになった。ミャンマーの国民が、軍事政権を支持する中国政府を非難して、同国の製品をボイコットしているからだ」と、豪カーティン大学のトウェ・トウェ・テイン教授(国際ビジネス)は指摘する。

■莫大な資産から恩恵を受けている軍事政権
 経済的混乱が起きているにもかかわらず、軍事政権は国民からの抗議の声に耳を貸そうとしない。
 軍事政権は今でも、輸送・観光・銀行業など多分野の有力複合企業を支配下に置き、十分な収入に支えられていると国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが指摘する。これら企業は1990年以来、国軍に数十億ドル(数千億円)を供与しているという。
 米国と英国はこうした企業に制裁を科したが、これらの企業と商取引をしている多くの国から追随する動きは出ていない。
 トウェ・トウェ・テイン教授によれば、国軍は「ヒスイや木材など天然資源を違法に蓄積し、それに支えられた莫大(ばくだい)な非公式な資産」からも恩恵を受けている。さらに、石油や天然ガスも大きな収入源となっている。
 仏エネルギー大手トタルの決算書によると、同社はミャンマー当局に対し2019年に約2億3000万ドル(約250億円)、2020年に1億7600万ドル(約190億円)を支払っている。これは税金や「生産権」という名目だ。
 今月4日、トタルの最高経営責任者(CEO)は、国軍による「抑圧はもちろん許し難い」として、同国の人権団体への資金援助を約束する一方で、ミャンマーでの天然ガス採掘を継続する意向を示した。
 国際関係研究所のニコラ氏は、こうした資金源を軍事政権に利用させないようにしなければ、デモ参加者や主要国が求める変化は訪れないと指摘した。【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕(2021/04/22-12:40)
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