【上海AFP=時事】米ハリウッドで、一年で最も華やかな夜となるアカデミー賞授賞式は、世界中で数百万人が視聴する。しかし、中国では、主要部門の候補となっている中国出身の監督の発言が問題視されている他、香港の民主化運動を描いたドキュメンタリー作品がノミネートされていることもあり、今年は全く盛り上がらない可能性がある。(写真は第92回アカデミー賞で、「ガバナーズ・ボール」に置かれたオスカー像。米カリフォルニア州ハリウッドにて)
 北京生まれのクロエ・ジャオ氏が監督した、米国を舞台にしたロードムービー『ノマドランド』は、監督賞や作品賞など6部門にノミネートされ、受賞の呼び声が高い。だが、中国では、ジャオ氏の祖国への忠誠心を疑問視する声が上がり、批判を受けている。
 米娯楽誌バラエティによると、世界で最も急成長している映画市場を持つ中国は長年、「ハリウッドの称賛を切望」している。中国中央テレビ(CCTV)は2003年以降、授賞式を生放送するかディレイ(遅延)放送してきた。過去には、オンラインでストリーミング配信もされた。
 だが、米ブルームバーグの先月の報道によると、中国共産党中央宣伝部は国営メディアに対し、4月25日の第93回アカデミー賞授賞式の生放送を見合わせ、内容を大きく取り上げないよう指示した。
 さらに、中国政府が締め付けを強めている香港では、約50年ぶりに授賞式を放送しないことが決まった。テレビ局TVBは「純粋に商業的な判断」だと説明している。
 中国の国営メディアはここ数週間、アカデミー賞に攻撃の矛先を向けている。中でも批判しているのが、香港の民主化デモをテーマにした作品『Do Not Split(原題)』だ。
 同作がドキュメンタリー短編賞にノミネートされた数日後、共産党機関紙・人民日報系の環球時報は、「芸術性に欠け、偏った政治姿勢に満ちている」と酷評した。
 「このような映画が受賞すれば、中国人の観客の感情を損ねることになる」として、「中国人の映画ファンの間でアカデミー賞自体の評価が下がることにもなる」と主張した。
 『Do Not Split』を監督したノルウェー人のアンデシュ・ハンメル氏はAFPに対し、こうした反応は、むしろ喜ばしいと話す。
 「ドキュメンタリー映画を作る一番の目的は、オスカーを受賞することではなく、香港の危機的な状況に注目を集めることだ」とハンメル監督は述べ、「中国政府に私たちは大いに助けられている」と指摘した。「非常に注目を集めている」

■中国批判の過去は許されない
 一方、今年のアカデミー賞を席巻すると目されているジャオ監督は、中国で苦境に立たされている。
 『ノマドランド』はすでに、ゴールデン・グローブ賞映画部門の作品賞と監督賞をはじめ、数々の賞を受賞している。作品賞の受賞は女性監督として初の快挙だったこともあり、国営メディアはジャオ氏を「中国の誇り」と褒めたたえた。
 しかし、ジャオ氏が中国批判をしたと受け止められるような昔のインタビューをソーシャルメディアのユーザーが掘り起こしたことで、称賛の声はたちまち愛国主義者の反感の声に変わった。
 中国の映画当局は、今月23日から『ノマドランド』の国内上映を許可していたが、それも危ういとみられている。
 環球時報は、「クロエ・ジャオは『ノマドランド』でオスカーにノミネートされても、中国では許してもらえないだろう」と報じている。さらに「専門家」の意見として、中国の映画ファンは、同作品をボイコットするかもしれないと伝えている。【翻訳編集AFPBBNews】

〔AFP=時事〕(2021/04/21-13:36)

情報提供元:時事ドットコム ワールドアイ
記事名:「中国、アカデミー賞に過敏に 香港や愛国心など政治問題に反応