【香港AFP=時事】26年前、中国の反体制派アーティスト、艾未未(アイ・ウェイウェイ)氏は、北京の天安門広場に向けて中指を立てた写真をひそかに撮影しながら、それが挑発的なことを自覚していた。(写真は中国の反体制派アーティスト、艾未未<アイ・ウェイウェイ>氏)
 だが、今になってこの写真が、香港で高まりつつある検閲への不安という問題の中心になるとは思ってもいなかった。
 英国の旧植民地である香港は、中国共産党の干渉や検閲から自由な、中国への文化的玄関として名高かった。だが、中央政府が民主化運動を抑え込もうとしたこの1年で、その評判は傷ついた。
 このような中、今年にオープン予定の美術館「M+ Museum」が香港アート界で注目を集めている。M+は、スイス人の美術品収集家ウリ・シグ氏の大規模な寄贈を中心とする、世界で最も充実した中国現代美術コレクションになると期待されている。
 美術館のオンラインカタログによると、艾氏の作品だけでも249点を所蔵。フォトジャーナリストの劉香成氏が撮影した、1989年の天安門事件の写真も含まれている。
 だが、香港の法的・政治的雰囲気が不安定になった中で、挑発的な作品を展示できるのか疑問符が付いている。
 中央政府寄りの香港政治家は既に、昨年施行された香港国家安全維持法(国安法)にM+が違反し「中国に対する憎悪を広めている」と非難している。特に標的となっているのが、艾氏による天安門での写真だ。
 政府関係者は3月末、開館時に艾氏の写真が展示されないことを確認したと発表。M+のコレクションが国安法に違反していないか、治安当局による調査を歓迎すると述べた。
 艾氏は今、オープニングで展示予定の二つの巨大インスタレーションを含め、自らの作品が果たして展示されるのか疑問に思っていると述べ、「香港のより自由で、民主的な社会が消えつつある」と嘆いた。

■「中指を立てられるだろうか?」
 艾氏はかつて、中国当局からもてはやされた。2008年の北京五輪で、メイン会場となったスタジアム「鳥の巣」の設計にも携わった。
 だが、8万7000人以上の死者を出した08年の四川大地震で当局の対応を批判したことで、中国政府の怒りを買った。11年には81日間拘束され、4年後にドイツに渡った。
 艾氏は、26年前の1995年に天安門広場で撮影した写真が再び中国当局を刺激しているという事実を歓迎している。「誇りに思う気持ちは否定できない」
 この写真は「Study of Perspective(遠近法の研究)」シリーズの発端となったもので、艾氏は米ホワイトハウスなど100か所以上で中指を立てた写真を撮っている。
 天安門広場で中指を立てたジェスチャーに中国当局が今も激怒していることこそ重要だと艾氏は言う。「個人のちょっとしたしぐさが国家の問題となり、権威主義の根幹を揺るがすことができる」
 また、艾氏は、フランスのポンピドーセンターや英国のテート・モダンなど欧米の美術館が、中国本土で取引していることを批判した。
 「多くの文化機関が中国に殺到しているが、芸術において最も重要で意味のある表現の自由を気にかけているのだろうか?」と疑問を投げかける。
 さらに艾氏は、「自分たちが喜ばせようとしている政府から、M+のようなプロフェッショナルな美術館が考えられないほどの圧力を受けているのを、黙って見ているのか」と続けた。
 「彼らは、中指を立ててみせることができるだろうか」【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕(2021/04/12-12:44)

情報提供元:時事ドットコム ワールドアイ
記事名:「天安門に中指立てた写真は「誇り」 失われる香港の自由嘆く 艾未未氏