【パリAFP=時事】早くも2021年を表すキーワードになりつつある「NFT」。ブロックチェーン技術を用い、デジタル作品を唯一無二の所有可能な資産としてオンライン販売する新手法であるNFTをいち早く活用する動きが音楽界に生まれている。(写真は資料写真)
 多くの人にとってはいまだ理解されていない概念ではあるが、NFT(「非代替性トークン」を意味するnon-fungible tokenの略で、発音は「ニフティー」)とは基本的に、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)の仕組みを支えるオンラインデータベースのブロックチェーンに所有権を記録し、それによってデジタルアート作品の「所有」を証明するものだ。
 NFTはアート界をたちまち席巻。今月11日には、競売にかけられていた米国人アーティストのビープルによるデジタルコラージュのNFT作品が6930万ドル(約75億円)で落札された。存命するアーティストの作品の落札額としては、史上3番目の高値だと報じられている。
 あらゆる種類のデジタルアートを収益化できるチャンスだと捉える人は多く、たとえその作品の複製が無限に可能だとしても、NFTの所有者は最終的な所有権は自分にあると主張できる。投資家にとっては、デジタルアートのNFTが新たな取引商品となっている。
 音楽業界ではこの20年、作品のデジタル化によって売り上げが大幅に低下していたが、NFTは貴重な収入源として期待されている。
 米誌ローリング・ストーンによると、米ロックバンド「キングス・オブ・レオン」は今月初め、ニューアルバム「When you see yourself」のNFT版をオンラインマーケットにオークション形式で出品。200万ドル(約2億1700万円)以上の売り上げを達成し、その4分の1をライブイベントに携わるスタッフを支援する基金に寄付した。
 キングス・オブ・レオンが発行したNFTは、レアアイテムを所有できるという抽象的な概念だけではなく、メンバーが撮影した写真や限定版のレコード、生涯ずっと彼らのライブを最前列で楽しめる「ゴールデン・チケット」など、具体的な特典付きだった。

■NFTで「新しい音楽の時代が到来」
 キングス・オブ・レオンが利用したNFTのオークションプラットフォーム「イエローハート」のジョシュ・カッツ最高経営責任者(CEO)は、NFTによって「新しい音楽の時代が到来」したと主張する。
 「NFTとブロックチェーン技術を利用することで、音楽業界はより非集中化し、それによってファンとアーティストの共生関係が育まれるだろう」とカッツ氏はAFPに語った。
 「アーティストは自分のコンテンツを再び収益化できるようになり、ファンはコンテンツやコンサートチケットを購入する際に透明性を確保できるようになるはずだ」
 NFTによる新たな機会を活用しているアーティストには他に、米人気ハードロックバンド「リンキン・パーク」のマイク・シノダやカナダ人シンガーのグライムスらがいる。グライムスの場合は、オーディオビジュアルの作品コレクションをNFTで販売し、約600万ドル(約6億5000万円)を売り上げた。

■著作権侵害のリスクは?
 だが、誰もがNFTは良いことずくめだと思っているわけではない。
 「この技術がアーティストの利益になるなら素晴らしいが、よほど注意しないと、アーティスト自身の著作権を奪われかねない」と指摘するのは、デジタル時代の音楽に関する著作を持つエミリー・ゴノー氏だ。
 「誰でも、インターネットで入手したどんなものでもサンプリングして、NFTの作成者は自分だと言い張ることができる(中略)そうなると、何でもありになって荒稼ぎしようとする動きが生まれてしまう」
 オンラインマガジンのデクリプトによると実際、デジタルアーティストが、NFTプラットフォーム上で自分の作品が勝手に販売されているのを見つけた例もすでにいくつかある。
 ブロックチェーンは匿名性が高く、分散型のシステムであるため、こうした著作権侵害を防ぐのは難しい。
 一方で、ブロックチェーン投資コンサルタントのエロイーサ・マルケソーニ氏は、NFTを利用すれば、アーティスト本人が発行したものだという確認は非常に容易になると主張する。それぞれのアート作品やコンサートのチケット、コレクターズアイテムについて、偽造不可能なデジタル署名がブロックチェーン上に記録されるからだ。
 「時間とお金に余裕のある人がレアなものを独占しようとする点では、従来のアート市場と変わらない」とマルケソーニ氏。「でも今は民主化が進んでいて、NFTなら、誰でも簡単にオンラインで購入できる」と続けた。【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕(2021/03/25-11:17)

情報提供元:時事ドットコム ワールドアイ
記事名:「音楽業界も熱い視線 デジタル資産「NFT」とは?