【パリAFP=時事】ナチス・ドイツによって併合されたオーストリアで1938年、ユダヤ人の所有者が格安で手放さざるを得なかったグスタフ・クリムトの作品について、現在の所有者であるフランス政府が、元の持ち主の親族に返還すると発表した。(写真はフランス・パリのオルセー美術館で、グスタフ・クリムト作「樹下のバラ」の返還を発表するロズリーヌ・バシュロ文化相)
 「樹下のバラ」と題されたこの絵画は、オーストリア人のクリムトが1904~05年ごろ制作。ロズリーヌ・バシュロ文化相は15日、この作品をホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の犠牲者ノラ・シュティアスニーさんの親族に返還する方針を明らかにした。
 作品は、シュティアスニーさんのおじで、美術品収集家だったビクトル・ツッカーカンドルさんが1911年に購入。1938年、ナチス・ドイツがオーストリアを併合すると、ユダヤ人は経済から締め出され、シュティアスニーさんは同作をごく安い値段で売却せざるを得なくなった。
 シュティアスニーさんは1942年、夫と息子と共に死亡。ポーランドのイズビツァのゲットー(強制隔離居住区)か、ベウジェツ強制収容所のどちらで亡くなったかは分かっていない。
 作品の来歴を知らないフランスは1980年、当時首都パリに開館間近だったオルセー美術館の収蔵作品として、スイスの画商からこれを購入した。
 バシュロ文化相は、「今回の決定は言うまでもなく難しいものだった。同作はフランスが唯一所有するクリムト絵画であり、この傑作を国のコレクションから失うのだから」と認めた一方で、「略奪品の返還は喫緊の義務だ。国の名誉になる」と述べた。【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕(2021/03/18-10:39)

情報提供元:時事ドットコム ワールドアイ
記事名:「フランス、クリムト作品をユダヤ人所有者の親族に返還へ