【ロンドンAFP=時事】英王室を離脱したヘンリー王子と妻メーガン妃が米テレビ番組のインタビューで、王室内の人種差別を告発した。英王室の目下の存続は揺るがないというのが専門家らの見解だが、この騒ぎによって露呈した文化的亀裂は、前途に待ち受ける困難を予感させる。(写真はエリザベス英女王)
 今回の暴露は「英国にとって、ソフトパワー災害だ」と言うのは、英紙タイムズで外交問題を担当するキャサリン・フィルプ記者だ。英王室は「エリザベス女王の君臨なくして存続可能なのか、あるいは存続させるべきなのか」という問いが、これによって浮上したと同氏は紙面で指摘した。
 米司会者オプラ・ウィンフリー氏とのインタビューにおけるヘンリー王子夫妻の爆弾発言は今のところ、1000年の歴史を持つ英王室の人気にほとんど影響していない。
 英国で8日にインタビューが放送された後、調査会社ユーガブが同国で行ったアンケートでは、回答者の約3分の1が王室一家に共感すると答えた。一方、ヘンリー王子とメーガン妃への支持は22%にとどまった。
 英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジの政府・憲法学の教授、ロバート・ヘーゼル氏はAFPに「英王室の危機であることは確かだが、一家のメロドラマ的な危機であって、君主制の危機ではない」と語った。世論調査で王室への支持が著しく低下しない限り、制度自体の危機ではないとの主張だ。
 1952年に即位したエリザベス女王は、94歳となった今も絶大な人気を保っている。支持率は79%と、政治家だったら夢のような数字だ。
 英調査会社イプソス・モリが3月第2週に実施した世論調査でも、君主制の廃止で英国はもっと良くなると答えた人はわずか17%だった。

■人気のないチャールズ皇太子
 だが昨年はヘンリー王子とメーガン妃が王室を離脱し、女王の次男であるアンドルー王子には未成年少女との性行為疑惑が浮上。1年たった今もスキャンダルの痛手からは回復していない。
 アンドルー王子はテレビのインタビューで、性犯罪歴のある米国人実業家、故ジェフリー・エプスタイン被告と自らの交友関係を正当化した上、同被告の人身売買を通じて17歳の少女と性行為をしたとの疑惑を否定して人々の怒りを招いた。
 また世論調査を詳しく見ると、女王の長男のチャールズ皇太子(72)の大いなる不人気ぶりと、世代間で反応の違いが際立っていることがうかがえる。
 「この世代間の分裂は、外国に対する英国のイメージにとって暗雲だ。40歳未満の世代はヘンリー王子とメーガン妃の言い分に対して、年長の世代よりもはるかに共感している」とタイムズ紙のフィルプ氏は記している。
 名前が伏せられている王室メンバーによる人種差別があったという告発は、ますます多様化が進む中で育った若者世代の間でとりわけ反響を呼んでいる。
 イプソス・モリの調査では、英国が君主制を廃止したら悪くなると回答したのは、18~34歳では29%だけで、変わらないという回答が45%、さらに19%は国が良くなるだろうと答えた。

■打倒君主制?
 「女王が亡くなったとき、チャールズ皇太子は非常に高齢で国王となる。1952年のときの若き女王とは似ても似つかないだろう」とヘーゼル教授は言う。
 「タブロイド紙が世論調査を行うのは目に見えている。国王にはチャールズ皇太子がふさわしいか、それとも若くて魅力的なウィリアム王子(39)がふさわしいか、と」。それもまた「王室にとって問題だ」とヘーゼル氏は指摘する。
 だがヘーゼル氏によると、昔から若い世代は共和制を支持する傾向があり、年を取るにつれて君主制支持に傾くという。
 長きにわたったエリザベス女王の統治の終わりが近づくにつれ、共和制支持派はチャンスの到来を感じている。だが何世紀にも及ぶスキャンダルや計略、陰謀を切り抜け、英国文化と不可分な存在となっている君主制の打倒を目指すとき、そこに立ちはだかる障壁は手ごわい。
 まずは「憲法を変えなければならない」とヘーゼル氏は言う。「これは明記されていることではないが…そうした大きな変更には国民投票が必要だというのは、全ての専門家の意見が一致するところだ」
 英国は2016年の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決定して以来、国内分裂と憲法論争に明け暮れる苦難の5年間を過ごしてきた。再び大きな国民投票を行うことには、二大政党のどちらも熱意を示していない。
 そしてたとえチャールズ皇太子が即位後にやはり不人気だったとしても、「それはチャールズ国王に対する脅威であって、君主制に対する脅威ではない」とヘーゼル氏は言う。その後ろには若く、人気の高いウィリアム王子が控えている。【翻訳編集AFPBBNews】

〔AFP=時事〕(2021/03/17-14:06)

情報提供元:時事ドットコム ワールドアイ
記事名:「英王室の危機、前途に待ち受ける暗雲