【パリAFP=時事】英国と南アフリカで確認された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の二つの変異株は、いずれも従来の株より感染力がはるかに強いとみられることから懸念が広がっている。二つの変異株について分かっていること、まだ分からないことを以下にまとめた。(写真は資料写真)

■どんな変異?
 あらゆるウイルスは自己複製する際、環境に適応するために変異する。
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の病原体であるSARS-CoV-2が2019年後半に中国で確認されて以来、研究者らは多数の変異を追跡してきたが、大半ではウイルスの毒性および感染のしやすさに大きな変化はなかった。
 だが、英インペリアル・カレッジ・ロンドンによると、昨年9月に英イングランド南東部で出現したとみられる変異株の一つ「B117」は、これまでに米国、フランス、インドなど世界中の国々で確認されている。昨年10月に南アフリカで検出されたもう一つの変異株「501.V2」は、以来、英国やフランスなど複数の国に広がっている。
 いずれの株も複数の変異がみられるが、特に著しい変異が起きていたのはウイルスのスパイクタンパク質の部分だ。スパイクタンパク質はヒトの細胞に結合し、感染を促す働きをする。
 具体的には、ヒト細胞側の受容体に結合するスパイクタンパク質上の部位(受容体結合ドメイン)「N501Y」で変異がみられる。N501Yの変異株は、ヒト細胞受容体ACE2との結合親和性を高め、他の株より感染しやすくなっていると考えられる。
 欧州連合(EU)の保健機関である欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、ACE2との結合作用の強化と感染力の強化の間に「明確な関連性はない」としながら、「あってもおかしくはない」と指摘している。

■変異株は感染しやすい?
 最近発表された複数の研究論文(査読前の段階)は、英国で確認されたSARS-CoV-2の変異株は他の株よりはるかに伝播しやすいと結論付けている。
 英政府の疾病対策諮問機関「新型呼吸器系ウイルス脅威諮問グループ(NERVTAG)」は、変異株は従来の株より50~70%感染しやすいという見解を示している。
 インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者らは先週、昨年10~12月に英国で確認された数千症例のSARS-CoV-2遺伝子配列の解析結果を発表。新たな変異株は、変異していない株と比較して増殖率が0.4~0.7倍高く、「かなりの感染の優位性」を持っていることを明らかにした。南アフリカの変異株についての予備的研究でも、従来のSARS-CoV-2より感染しやすいと結論付けられている。
 一方で、専門家らは注意を喚起している。
 フランス公衆衛生局感染症部門トップのブルーノ・コワニャール氏はAFPに、英国の変異株が広がった要因はいくつかあるとして、「ウイルスの特徴だけではなく、(各国で)実施されている予防・抑制策も関係している」と指摘した。

■より危険なのか?
 現時点で変異株が従来の株よりも強力だということを示唆する証拠はないが、新型コロナウイルス感染症で入院治療を必要とする患者が、割合は少なくても常に一定数いることを踏まえると、感染しやすくなれば、それだけで極めて大きな問題を引き起こす。
 「感染性が高まれば、その分、罹患(りかん)率が大きく上昇し、たとえ致死率が変わらなくても、医療体制が著しく逼迫(ひっぱく)する」とコワニャール氏は述べた。
 英ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院(LSHTM)の疫学者、アダム・クチャルスキー氏は、感染力が50%高いウイルスは、致死率が50%高いウイルスよりも「はるかに大きな問題をもたらす」と指摘する。
 同氏はツイッターで、新型コロナウイルス感染症のような病気で実効再生産数(R)が1.1(1人の患者から平均1.1人に感染)と仮定した場合、致死率0.8%では死者数は1か月で129人となり、致死率が50%高まると193人になると説明。だが、致死率0.8%でも、感染力が50%増したウイルス株では、死者は978人に達すると計算している。
 初期段階の研究では、英国の変異株は若者に非常に感染しやすく、そのため学校を閉鎖すべきかどうかという問題が持ち上がっている。
 LSHTMの研究は、昨年11月に英国全土で導入されたレベルのロックダウン(都市封鎖)では、「小中学校から大学まで閉鎖しない限り」変異株の拡散を抑制するには不十分だろうと結論付けている。

■ワクチンは変異株にも効く?
 米製薬大手のファイザーや同モデルナが開発したメッセンジャーRNA(mRNA)を用いたワクチンは、まさに新しい変異株の中で変異を起こしている部分であるスパイクタンパク質を人間の体内で作らせる仕組みになっている。
 ECDCは、ウイルスの変異がワクチンの有効性に影響するかどうかを判断するのは時期尚早だとの見方を示している。
 一方、独製薬ビオンテックは、必要に応じて、変異株に効果がある新しいワクチンを6週間以内に開発することは可能だとしている。

■私たちにできることは?
 コワニャール氏は、変異株を根絶するのは不可能だが、各国政府が目標とすべきこととして、変異株の拡散を「最大限遅らせる」ことを挙げる。
 新たな変異株がまだ確認されていない国々で拡散を遅らせる取り組みとしてECDCが推奨しているのは、新型ウイルス自体の流行初期と同じく、入国者の検査と隔離、濃厚接触者の追跡、移動制限などだ。
 運が良ければ、既存の一部のPCR検査で英国の変異株を検出できる場合もある。
 そのため、仏政府顧問の疫学者アルノー・フォンタネ氏は、検査対象を拡大し、(感染症の)発生動向の調査を「極めて積極的に行うべき」だと主張している。
 米疾病対策センター(CDC)のヘンリー・バルケ医師は、「新型コロナウイルスの感染拡大を遅らせるため、私たちはさらに気を引き締めて予防策を取っていく必要がある」と述べ、その方法として、マスクの着用、同居人以外とは6フィート(約183センチ)以上の対人距離を確保すること、人混みを避け、室内を換気し、手洗いをすることを挙げている。【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕(2021/01/07-15:24)

情報提供元:時事ドットコム ワールドアイ
記事名:「【解説】コロナ変異株 分かっていること・いないこと