顔プロジェクト<制作レポート①> モデルにオードリー・ヘプバーンを選定
2020年11月20日
花王株式会社
2019年5月、花王は、“個性が輝く顔”をアートとサイエンスの両面から探求するため、2倍サイズの顔の彫像作品を制作する現代美術家Kazu Hiro氏と共同研究を開始したことを発表しました。このレポートではKazu Hiro氏による彫像の制作過程に焦点を当て、作品がどのようにでき上がっていくのかを紹介していきます。第1回目は、彫像のモデル選定と、Kazu Hiro氏による魅力の発掘について。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202011187309-O1-2v4YsF0t】
【よみがえる伝説】
Kazu Hiro氏は、今回の共同研究のモデルとして、往年のハリウッドの名女優、ファッションアイコンで、ユニセフの親善大使もつとめたオードリー・ヘプバーン(1929-1993)を選びました。「ローマの休日」や「ティファニーで朝食を」など、多くの映画で個性的な女性を美しく演じたヘプバーンは、“個性が輝く美しい顔”を追求するこの研究の題材にぴったりだと考えたのです。
というのも、長年ハリウッドの第一線で多くの俳優の顔と向き合ってきたKazu Hiro氏は、その人らしい美しさを保ち続けている人は少ないと感じているとのこと。そのような中にあってヘプバーンは、映画界に翻弄されることなく、最後まで公と私のバランスを上手く保ち、自分らしさを持ち続けた女性で、おごりや高ぶりもないその内面が、顔の表面にも表れていると言います。
ヘプバーンが2倍サイズのシリコーン像でリアルによみがえる今回の作品では、その顔ににじみ出る内面の美しさも表現したいと考えています。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202011187309-O2-Rw3I4iok】
【制作過程】
制作に先立ち、Kazu Hiro氏は、まずモデルとなるオードリー・ヘプバーンに関して、ありとあらゆる情報・資料を集めました。写真や映画などから外見的な顔の形を知るのはもちろんのこと、書籍や伝記を詳しく読み、ドキュメンタリーフィルムをつぶさに見ることで、素顔のヘプバーンの内面や人生を理解することを試みました。制作するのは、映画の中で役を演じているヘプバーンではなく、素顔の「人間オードリー・ヘプバーン」その人なので、ドキュメンタリーやインタビュー映像でふとした瞬間に見せる顔や表情も大変貴重な資料となりました。
十分な資料に目を通し、作品の構想が固まったら、粘土彫刻に入ります。まずは実物大の大きさの顔を粘土で作ります。この時点で大事なのは、本人の顔の形を正確に再現して似させること。目、鼻、口などそれぞれのパーツを正確に彫刻するだけでなく、それぞれのパーツの距離やプロポーションも正確に再現することを心掛けます。この段階で少しでもズレや歪みが生じると、2倍の像になった時にその誤差はさらに大きくなり修正が大変になるからです。
この段階の作業をKazu Hiro氏は「地図を作る過程に似ている」と形容します。顔のパーツを構成する数値データを集めて、それを元に顔を彫刻していくのです。
そ の過程を通じ、Kazu Hiro氏は、ヘプバーンの顔を構成するそれぞれのパーツが非常に綺麗にまとまっていることに気付きました。目の角度や鼻のライン、口の形などが左右対称でバランスよく並んでいて、そのプロポーションは子供の顔に近い。Kazu Hiro氏は、「このようなプロポーションも、オードリーに”純粋な美しさ“という印象を与えている一因かもしれない」と話します。
顔の形が整ったら、次の段階には、そこに自分が描きたいヘプバーンの内面、表情などを彫り込んでいきます。これから徐々に、頭の中に浮かべているイメージと実際に彫刻しているものが交わっていくと言います。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202011187309-O3-di7pX4Es】
【2体同時制作】
これまでリンカーン大統領、アンディ・ウォーホルなど9つのポートレートを作ってきたKazu Hiro氏ですが、10作目となる今回、これまでにない新しい取り組みにチャレンジしています。それは、若い頃のヘプバーンと晩年のヘプバーンの二つの像を同時並行で作る、ということです。「魅力的に歳を重ねていった女性」を題材にしたい、という本共同研究のもうひとつのねらいがそこにあります。
若い像は20代半ばのヘプバーンです。バレエダンサーから突然映画の主役に抜擢され、最初の作品でアカデミー賞を獲り、一躍有名になった頃の顔です。若いなりの無垢さ、人生経験の少なさから来る不安感、自信はないながらも社会の中で自分の存在を確立し始めた様子を表現したいと考えています。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202011187309-O4-2l9Ol0P7】
晩年の像は、出産してきっぱりと映画界を去り、育児に専念したあと、ユネセフの慈善事業に従事した人生の終盤の顔を描きたいと考えています。幼少期の戦争体験により人の痛みを知り、晩年には自分よりも周りの人々を大切に思い、包容力のある母親的な存在になっていった面も表現しようとしています。家族や知り合いにしか見せなかった面も盛り込みたいと考えています。
「生き様が表情に刻まれる。人間は一日一日の積み重ねで歳をとっていき、その中で顔が作り上げられていく」とKazu Hiro氏は語ります。
※ 本彫像は、オードリー・ヘプバーンを忠実に再現したものではなく、アーティストの解釈によって作られています。
AUDREY HEPBURN™ – TRADEMARK ©RIGHT – PROPERTY OF SEAN HEPBURN FERRER AND LUCA DOTTI - ALL RIGHTS RESERVED
【関連情報】
2020年5月25日 https://www.kao.com/jp/corporate/news/rd/2020/20200525-001/
Kazu Hiro氏によるオードリー・へプバーンの彫像作品が完成 ~“個性が輝く魅力的な顔”を探索する共同研究~
2019年5月14日 https://www.kao.com/jp/corporate/news/rd/2019/20190514-001/
現代美術家 Kazu Hiro(辻 一弘)さんとの共同研究を開始
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