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ケアネット Research Memo(8):「開発実証期間」を経て、2026年に売上高CAGR10%~20%を目指す


*20:58JST ケアネット Research Memo(8):「開発実証期間」を経て、2026年に売上高CAGR10%~20%を目指す ■新中期経営ビジョン

製薬業界は、2023年より本格的なプロセス改革フェーズへ突入し、ケアネット<2150>の事業環境にも劇的な変化をもたらしており、新たな方向性として、新中期経営ビジョン「ビジョン2026」を公表した。2024年から2026年までの3年間を「開発実証期間」と位置付け、環境変化に合わせた事業開発を進めるとともに、グループ営業の強化、短期でのサービス改良、M&A等を推進し、売上高においてCAGR10%~20%の成長を目指す。これにより、開発投資費用の拡大、M&Aによるのれん等が影響し、営業利益率は20%程度に低下する見通しだ。

1. 事業環境の劇的な変化と解決すべき重要課題
コロナ禍前後の急激な環境変化が、eプロモーション市場に対しても大きな影響を及ぼしている。コロナ混乱期においては、ディテール(医師や薬剤師への情報提供活動)を確保すべく、外注を積極活用しつつDXの推進によるリモート体制の構築が進んでいたが、コロナ総括期にかけては、eプロモーションを含むさまざまなプロモーション施策のROMIテストが行われ、投下コストに対して売上インパクトのないリソース・チャネルの見直しが進んだ。今後の到来が予測されるポストコロナ試行期では、少数MR体制下において生産性向上と投下コストに対する効果がより重要視される。ROMIテストにより、チャネルを問わず売上インパクトが重視される状況下では、医師とのエンゲージメント推進が課題となるが、既存のeプロモーションやDXモデルでは解決できないため、開発・営業プロセス改革のための新たなeプロモーション活用モデルが必要とされる。

また、2017年から拡大しているドラッグロス問題が深刻化している。日本国内では、薬価引下げや治験の高コスト体質が要因となり、欧米新薬の60%以上がロスしている状況である。新薬は医薬品市場の成長源であるが、日本においてはドラッグロス問題が足かせとなり、先進国で唯一2030年までゼロ成長が予測されている。ドラッグロス問題の解決に向けては、欧米EBPの新薬を、いかにして日本での開発・承認・販売につなげていくかが鍵となる。ドラッグロスの要因である治験高コスト問題については、非効率で高コストな日本の臨床試験制度や、患者組み入れ、データ収集が課題となるため、治験の効率化実現とともに、有望新薬の海外からの調達、日本での効率的な販売といった流通の仕組みの整備が重要である。

2. ビジョン2026
既存のeプロモーションサービスにおける安定した収益基盤を維持しつつ、今後の成長を加速させるために、KOLや専門医とのエンゲージメントを促進する新しいサービスモデルを開発し、治験や医薬品営業分野で活用する。加えて、市場の創出と社会課題の解決に向けて、治験営業支援サービスを通じて新薬導入を促進し、日本の医薬品市場の成長を促進する。さらに、医薬DX事業やメディカルプラットフォーム事業の安定化のほか、新サービス開発を通じて事業の多角化を図ることで事業ポートフォリオを拡充し、より堅固な成長を実現する。ビジョン2026の達成と成長加速のための準備としては、CEOの交代をはじめとする組織体制の一部変更により、新たなリーダーシップとガバナンス体制を強化する。これらの重点施策を通じて、医薬品営業プロセスの革新と医薬DX事業の発展に注力する。

(1) 治験/医薬営業のプロセス改革支援
同社が培ってきたケイパビリティを総動員し、製薬企業に対し、医師とのエンゲージメントを仲介・代行するサービスを開発・提供することにより、医薬DX事業は今後も成長の軸であり続ける。

(2) 市場創出・社会課題の解決
中長期目標としてドラッグロス対策に寄与するビジネスモデルの開発を掲げている。日本の医療用医薬品市場のマイナス成長は、薬価引き下げと治験の高コスト構造が要因であり、現在世界の新薬の約70%を開発する欧米EBPの日本進出を阻んでいる。2024年2月には、EBPを対象とした新薬調達から効率的な治験、営業までを一貫して提供する新たな製薬事業モデルを開発すべく、LinDoへの資本参加とグループアライアンスの構築を発表した。LinDoは、シードインキュベーターの役割を担い、難病・希少疾患にフォーカスした製薬会社として、欧米で開発した新薬の日本への導入を推進する。その実現のため、有力バイオベンチャーへの投資実績と強いパイプを有するメディカルインキュベータジャパンが、海外から有望シーズを探索・導入する。同社はCRO・SMO・CSOを有する同社グループのネットワークを最大限に活用し、効率的でローコストな治験・営業代行サービスを提供する。日本の医薬品市場において、1%のプラス成長は1,000億円市場の創出効果と同義である。難病・希少疾患新薬の導入により、社会課題の解決に貢献しつつ、業界の成長にも寄与する方針だ。

(3) ポートフォリオ拡充
医薬DX事業における既存事業の安定化、メディカルプラットフォーム事業における新サービス開発等により、事業ポートフォリオの一層の充実を図り、成長を重層的に支える。

医薬DX事業に関して、既存事業である「MRPlus」等のeプロモーションサービスでは、医師会員の獲得と視聴率の向上に引き続き注力する。医薬広告としてのeプロモーションは、既存薬を中心とした医薬品マーケティングの主要手段として今後も需要が見込まれ、同社の推計では、業界の医薬品マーケティング予算規模は2,000億円~2,500億円程度(2030年)を予想しており、いかにシェアを拡大するかが課題となる。また、成長の著しい中国・東南アジアの医薬品市場への進出も開始する。製薬業界におけるアジア市場については、医療制度や薬価制度が各国で異なるため、日本の手法をそのまま適用できない。中国においては新薬開発スピードが速く、自由診療を選択できる富裕層も多いことから、日本にも引けを取らない規模の市場がある。一方、東南アジアでは安価な薬を広く普及させる方針を取っており、新薬の市場は限定的で薬価制度も異なるため、スペシャリティ医薬品やeプロモーションの普及には時間がかかる。しかし、KOLが新薬の開発から採用、使用法に強い影響を与えるという点は各国で共有しており、KOLとのネットワーク構築は将来の市場形成に不可欠と言える。特に中国国籍を持つ華僑の多いシンガポールやマレーシアについては、中国でKOLのネットワークを構築することが市場進出の重要な鍵となる。臨床試験や新薬普及において重要な役割を果たすKOLとのネットワークを日本国外にも拡大し、同社のノウハウを提供することにより、拠点構築の準備を進める方針だ。KOLとのネットワークを生かしながら、コンテンツを制作し医師の囲い込みを行うという同社のプロセスは、アジアはもとより世界でも通用する手法であり、医薬DX事業の中長期的な成長が大いに期待できると弊社では見ている。

メディカルプラットフォーム事業に関して、既存事業である教育コンテンツでは、「CareNeTV」のコンテンツ多様化(スクール形式の導入ほか)によりブランディングを強化しつつ、看護師向けコンテンツも導入していく。キャリア事業は順調であり、組織の拡充により成長を継続する。2023年11月には、病院経営コンサルティング事業を展開するメディカルクリエイトとDALIの2社を傘下に収めるバリューネクストの株式を過半取得し、医療機関経営支援事業に参入を果たしており、同社グループとの連携により成長シナジーを創出していく。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)

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