SBSHD Research Memo(9):3PL、EC物流、国際物流に注力、高成長を目指す(1)
2. 重点施策と進捗状況
(1) グループ総合力の強化(グループプラットフォーム戦略と各社の独自戦略)
a) 3PL事業
3PLの国内市場規模は2022年度で約4.1兆円、うちSBSホールディングス<2384>の市場シェアは5.5%と業界大手の一角を占めている。業界全体の年平均成長率は2010~2022年度まで8.4%と物流業界に占める比率も年々上昇傾向にあり、今後も高騰する人件費や燃料費に加え、2024年問題にかかる労働時間規制などに対応するため、年率10%程度の成長が続くものと予想される。荷主企業が3PLを活用するメリットとして、省コスト化だけでなく今後は物流専業企業としての高い専門性や高度なシステムを活用するメリットが増大すると考えられるためだ。こうしたなか、3PLの豊富な実績と、「LT×IT」の専門部隊(約270名)を持つ同社グループにとって、今後数年間は既存顧客との取引深耕だけでなく、新規顧客を獲得する好機になると弊社では見ている。
同社の3PL売上高は2023年12月期が半導体や家電製品、通販商品などの低調が響いて前期比2.1%減の2,234億円と足踏みしたものの、グループ各社の営業体制強化、並びに新規拠点(野田瀬戸A棟、横浜福浦等)の稼働開始によって、新規及び既存顧客との取引を拡大し、2024年12月期に同2%増の2,274億円、2025年12月期に同12%増の2,555億円を目指す。グループ各社の組織体制強化の取り組みとして、事業ごとの縦割り営業体制の一元化、中途採用や再配置による営業人財の増強、既存荷主のフォローアップ強化、グループ内の営業情報の共有化を促進していく。
b) EC物流
国内BtoCのEC物販市場は2022年の13.9兆円※から2030年には20兆円(年率4.6%成長)になると予想されており、同市場を積極的に取り込むことで、2030年12月期にグループのEC物流関連売上高を2022年12月期から1,000億円上乗せする目標(「EC1000」プロジェクト)を掲げている。2023年12月期の売上高は物価上昇による消費マインド低下の影響もあって前期比3%増の672億円と足踏みしたが、2024年12月期は同7%増の721億円と成長加速を見込んでおり、物流事業に占める比率も前期の16.4%から17.0%に上昇する見込みとなっている。
※出所:経済産業省「令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」
顧客開拓にあたっては、スタートアップ企業からBtoB領域を含む大規模EC企業までを「テクノロジー」「インフラ」「マーケティング」の3つの視点からアプローチする。「テクノロジー」では、ITを活用し「業種×規模別」に分類定義した開発/連携方針に沿って、次世代ロボットを活用したハイレベルな設計による低コストで堅牢な物流サービスを提供する。「インフラ」では、EC分野を集約した戦略物流拠点の開設と、自社グループや協力企業を含めたラストワンマイルのネットワークの構築を目指す。「マーケティング」では、業界別に最適化されたプラットフォームと流通加工メニューを提供することにより、幅広い顧客ニーズに対応する。
EC物流の顧客ターゲットに関しては当面、中小EC事業者をターゲットに顧客を獲得し、運営ノウハウと競争力を強化して、大規模EC事業者を取り込んでいく戦略となっている。中小事業者の獲得に向けたプラットフォームとして、2023年1月にECビジネスのフルフィルメントサービスを提供する「EC物流お任せくん」を立ち上げた。顧客獲得については中小事業者だけでなく中規模クラスの事業者も含め数十社程度と順調に獲得が進んでいる。EC物流の拡大に向けて、各社の次世代リーダー数名を抜擢したうえで、公募で中堅~若手の運営スタッフを募りグループ横断型の戦略部門(約30名)を立ち上げた。グループ各社のノウハウを共有しながらEC物流案件を受託していく体制を整備した効果も出てきているようだ。
また、2024年2月にオープンしたグループ最大規模の物流拠点となる「野田瀬戸物流センターA棟」の1フロア(1万坪)を、「EC物流お任せくん」の専用拠点として立ち上げた。同年秋からは棚搬送ロボットや高層型ロボットなどの本格運用も開始する予定で、IT×LT技術力及びグループの運用ノウハウを結集して、高い生産性とフレキシビリティに富むサービスメニューを提供できる競争力の高い物流拠点とし、同拠点をモデルとしてEC専用物流の全国展開を進めていく考えだ。「野田瀬戸物流センターA棟」では1万坪のうち当初5千坪から稼働を開始し、年内にフル稼働を目指す。
c) 国際物流
国際物流の取り組みに関しては、2023年春よりSBS東芝ロジスティクスとSBSリコーロジスティクス、SBS古河物流の3社でフォワーディング業務におけるコンテナなどの共同購買を開始し、スケールメリットを生かしたコスト削減に取り組んだ。また、2023年内を目途にSBS古河物流の海外拠点をSBSリコーロジスティクスの拠点に統合し、海外事業についてはSBS東芝ロジスティクスとSBSリコーロジスティクスの2系統に集約化する計画であったが、進捗がやや遅れており拠点統合については2024年内となりそうだ。そのほか、国内企業を中心に海外物流案件の受託活動を推進し、拠点単位の協働営業によるクロスセルにも取り組んだ。
2024年12月期以降の取り組みとしては、ILS(International Logistics Strategy)プロジェクトを発足し、海外現地法人を持つ前述3社のリソースの相互活用により、協働営業による新規顧客の獲得を推進するほか、ローカル物流の強化とグローバルSCMの再構築を進める計画となっている。具体的には、M&Aや物流施設開発、3PL運営の内製化など、国内における成長戦略の海外移転を企図し、検討を進めている。日系顧客企業では海外物流におけるコスト高が課題となっており、特に欧米での3PLは割高な状況にあるようだ。このため、同社にとっても海外で3PLを展開していく余地があると見ている。
国際物流の売上高は、2023年12月期が前期比35%減の562億円と大幅減となり、2024年12月期も海上運賃下落や物量減を想定しているため、同3%減の540億円と微減の計画となっているが、物量については期の後半にも回復するものと予想され、回復スピードによっては増収に転じる可能性も十分にあると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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