1stコーポ Research Memo(11):プライム市場への再上場に向けて流通株式比率の上昇を目指す
ファーストコーポレーション<1430>は東証の市場区分見直しに伴い、プライム市場の上場維持基準適合に向けて各種施策に取り組んできたが、2023年4月施行の東証の規則改正に伴い、スタンダード市場への上場の再選択の機会が得られたことから、改めて今後の適合に向けた計画について検討した結果、2023年10月20日を移行日としてスタンダード市場への移行を決定した。スタンダード市場へ移行したが、将来的にプライム市場への上場を目指すため、今後も持続的な成長と中長期的な企業価値向上に資する取り組みに注力する。2023年8月の時点で同社は、スタンダード市場で設けられているすべての上場維持基準に適合している。プライム市場への上場に向けては、流通株式時価総額のみ上場維持基準に届いておらず、流通株式時価総額の向上に向けて時価総額と株式の流動性を向上させていく。具体的には、新中期経営計画「Innovation2023」の達成、株主還元の拡充、コーポレート・ガバナンスの充実による時価総額の拡大、各種資本政策の実施による流通株式比率の上昇を実現する方針だ。
(1) 中期経営計画の達成
時価総額の向上は、しっかりとした業績によってこそ実現されるという考えの下、まずは「Innovation2023」を完遂していく。具体的には前述のとおり、造注方式の推進と建築事業の強化を柱とする「中核事業強化の継続」「再開発事業への注力」、収益基盤の多様化と研究開発を柱とする「事業領域拡大による新たな価値創出」「人材の確保・育成、働き方改革の推進」の4つの施策を推進している。これらの施策により、最終年度である2026年5月期に売上高37,200百万円、営業利益2,635百万円、経常利益2,560百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,750百万円、受注額20,000百万円を目指す。
(2) 株主還元の拡充
利益還元の基本方針として同社は、株主への利益還元を経営上の重要施策の1つと捉え、現在及び将来の事業展開や設備投資及び内部留保金の確保等を総合的に勘案し、継続的かつ安定的に配当を実施するとしている。そのうえで今後は、必要な内部留保を確保しつつ、中期経営計画の進捗と収益性の向上に合わせて連結配当性向30%以上を目指す。また、株主優待の継続と機動的な自己株式の取得による株主還元も実施する方針であり、2022年5月には自己株式の取得を実施した。
(3) コーポレート・ガバナンスの充実
2021年6月に改訂された「コーポレートガバナンス・コード」のうち、プライム市場上場会社のみに適用または加重される補充原則を中心に引き続き対応を図る。具体的には補充原則1−2(4)「機関投資家向け議決権電子行使プラットフォームの導入」、3−1(2)「開示書類のうち必要とされる情報の英訳開示・提供」、3−1(3)「気候変動に係るTCFDと同等の質と量の開示」、4−10(1)「指名・報酬委員会構成の独立性に関する考え方・権限・役割等の開示」を対象としている。1−2(4)については2022年8月開催の第11回定時株主総会で既に導入済みである。3−1(2)については決算短信・招集通知・IRサイトの英訳が実施済みであるほか、2022年8月からは有価証券報告書の英訳開示を開始している。3−1(3)については2022年3月にサステナビリティ委員会の下部組織として立ち上げた気候変動対策部会を中心にCO2排出量削減目標を設定している。具体的には、IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による気候変動シナリオ(2℃未満シナリオ及び4℃シナリオ)を参照し、2050年までの長期的な同社への影響を考察したうえで、2030年度のCO2排出量削減目標を2021年度比で35%と設定している。4−10(1)については既に過半数を独立社外取締役としている状況である。今後は、同委員会の独立性・権限・役割などに関して、開示すべき情報を検討する。
また、SDGsをはじめとした社会・環境問題に対して事業を通じて取り組み、持続可能な社会の実現に貢献していく姿勢も示している。例えば、環境については新たな建築技術の開発と推進による建築資材の削減を通じた「環境負荷低減」、社会に関しては第三者機関による躯体検査の導入による施工品質確保を通じた「安心・安全な住環境の提供」へ貢献していく。さらに、ガバナンスにおいては内部統制システムの整備によって「内部統制」の強化を図る考えだ。
(4) 各種資本政策の実施
株式の流動性を向上させるため、経営陣による株式の売出し、M&Aなどへの自己株式の活用を検討するほか、M&Aなどへ支障をきたさない範囲での自己株式の消却を検討している。
新中期経営計画「Innovation2023」に関しては、造注案件の積み上げや原価低減などにより、計画値の上振れを目指す。不動産成約に関しては将来を正確に予測するのが難しいが、造注案件の積み上げにより利益率が上昇するというメインシナリオの確度は高い。2026年5月期の親会社株主に帰属する当期純利益1,750百万円も達成可能な水準であり、流通株式時価総額の上昇も期待できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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