アイエスビー Research Memo(4):3つの重点戦略が順調に進捗、中期業績目標は当初計画を上回るぺースに
2. 中期経営計画の進捗状況
2021年12月期からスタートした「ISBグループ中期経営計画2023」では、重点戦略として「顧客開拓、有望分野の拡大」、「ソリューション事業の創出」、「グループ経営強化」に取り組み、最終年度となる2023年12月期の業績目標として、売上高300億円、営業利益24億円、営業利益率8.0%を掲げた。ちょうど折り返しを迎えた時点で、重点戦略の取り組み・業績ともに進捗状況は順調であり、最終年度の業績は当初目標を上回る可能性が高まっている。
(1) 顧客開拓、有望分野の拡大
同社は新規顧客の開拓と有望分野での受注拡大を重点戦略とし、新規顧客からの売上高を最終年度の2023年12月期に75億円(2021年12月期13億円、2022年12月期見込み43億円)とし、有望分野(5G関連、車載、モビリティサービス、医療、業務サービス)の売上比率を30%(同20%、20%)にすることを目標に掲げている。
目標達成に向けた施策として、2021年12月期に顧客の課題を解決するソリューションを提案するソリューション営業部門を新設したほか、FAEの増員による提案営業の強化、ビジネス・マッチングサービスの活用やWebサイトの充実、インバウンドセールスなどによる受注機会の拡大に取り組んでいる。ソリューション営業部門では、2022年12月期に入ってさらに体制強化に注力、開発部門からキーパーソンとなるFAEの人材をシフトするなど人員増強(ビジネスパートナー増員を含む)を図っており、こうした取り組みが新規顧客や有望分野での受注獲得につながっていると見られる。
(2) ソリューション事業の創出
ソリューション事業の創出に向けては、他社製品または他社サービスとの連携及び、共同開発による機能追加・改善を図るなどして高付加価値ソリューションを提供し、プライム案件の受注拡大に取り組んでいく。2023年12月期のソリューション売上比率を2021年12月期の20%から30%に引き上げていく計画となっている。
2022年12月期はソリューションパートナーの有するパッケージを採り入れた最適なソリューションを様々な視点から提案し、新規顧客開拓につなげるなど成果も出始めている。プライム案件は開発スケジュールの遅延や仕様変更等により不採算案件となるリスクがあるが、同社は、2022年1月に新設したプロセス改善推進室で、課題を抽出し、プロセスマネジメント体制を整えプライム受注の拡大を見込んでいる。なお、2022年12月期に入ってから不採算案件は発生していない。
そのほかプロダクトソリューション分野では、リカーリング製品の伸長に加えて、2022年4月に発売開始した新たな入退室管理システム「X-LINE」も注目される。同システムは顔認証や指紋認証、車両ナンバー認証のほか、Suica等の交通系ICカードなど複数の認証機能に対応したシステムで、高度なセキュリティ管理と多様な利用シーンに柔軟に対応できることが特長となっている。ビジネスモデルはフロー型に近く(システム導入時の売上と導入後の保守サービス料)、3年間で5千セットの販売を目標としている。引き合いは好調だが、半導体不足の影響により売上貢献するのは2023年以降となる見通しで(設計から納品までの期間は6~12ヵ月)、2023年12月期の業績に貢献するものと予想される。
(3) グループ経営強化
グループ経営の強化として、グループ連携によりニアショア・オフショア開発を推進し、グループ全体の稼働率やコスト競争力の向上、人材交流による技術・ノウハウの共有、得意分野での連携拡大、地域(札幌、仙台、福岡)の優秀な人材の確保等に取り組んでいる。
国内子会社のニアショア開発比率については、2021年12月期17%から2023年12月期は20%を目標としている。(株)アイエスビー東北や(株)スリーエスについては20%前後となっているが、福岡を拠点とするコンピュータハウス(株)は比率を高めていく計画で、首都圏の開発案件をコンピュータハウスに振り向け40%程度まで引き上げていく考えだ。また、ベトナム子会社のオフショア開発比率は2021月12月期の94%に対して、2023年12月期は80%の水準を設定している。これは子会社による単独受注を計画しているが、コロナ禍が続くなかで90%以上の水準が続く可能性が高いと弊社では見ている。
また、人材投資については技術革新への対応として、車載、5G、クラウド、ツール開発、プロジェクトマネジメント等、社員向けに技術研修を実施し、スキルアップに取り組んでいるほか、未経験者をITエンジニアとして育成する(株)テイクスの 「テイクスラーニングシステム」 をグループで共有し活用することで、各グループ会社におけるエンジニアの育成、増員もスムーズに進んでおり、今後もこの取り組みを継続し、グループ全体の人材基盤を強化していく方針だ。連結ベースのエンジニア数は、2020年12月末の約1,710名から2021年12月末は約1,840名、2022年6月末は約1,900名と順調に増加している。
そのほか、M&Aによる成長戦略も推進していく方針となっている。対象先としては、同社に無い技術力を有する企業で、システム開発分野以外にも、アートのようにプロダクト事業を展開する企業もグループシナジーが見込めるようであれば候補となる。
3. サステナビリティ経営の取り組み
同社は「グループの卓越した技術と知恵で、誰もが幸せになれる社会づくりへ貢献する」ことを目標に、サステナビリティ経営を推進している。ESGの観点から主な取り組みを見ると、E(環境)については、電力やOA用紙などの使用量削減並びにデータセンターのエネルギー効率化により、温室効果ガスの削減に貢献している。また、S(社会)については、社会課題を解決する新たな技術、製品・サービスの開発など事業活動を通じて社会貢献に取り組んでいるほか、多様な人材の採用と活動支援、人材育成、働き方改革等の推進によって従業員エンゲージメントの向上と多様性の推進を図っている。G(ガバナンス)に関しては、情報セキュリティの強化やコンプライアンスの遵守、リスク管理やBCP(事業継続計画)対策のほか、コーポレート・ガバナンス体制の強化による企業統治・透明性の向上に取り組んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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