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ケアネット Research Memo(7):eプロモーション市場は将来的に3,000~4,000億円に拡大する見通し


■中期経営ビジョン

2. 成長戦略
(1) 医薬DX事業
医薬DX事業を取り巻く市場環境については、今後も製薬企業がプロモーション施策をMRによる人海戦術からeプロモーションを組み合わせたハイブリッド型にシフトしていく流れが続く見通しであり、市場の構造転換によってeプロモーション市場は高成長が続くものと予想される。国内MR数は2013年をピークに7年連続で減少しており、製薬企業各社を取り巻く事業環境が根本的に変わろうとしている。ケアネット<2150>はeプロモーションの市場規模について、現在の約500億円規模(製薬業界全体では1兆3,000~5,000億円)から、将来的には3,000~4,000億円と全体の3~4割を占めるまでに成長すると見ている。なかでも今後新薬の開発が相次ぐスペシャリティ医薬品領域を中心にデジタルエンゲージメントを推進するサービスの提供を通じて、医薬DX市場の拡大をけん引するメインプレーヤーに成長していくことを目指している。

スペシャリティ医薬品に関しては、プライマリー医薬品(生活習慣病治療薬)とは異なり、より精度の高い医療機関・医師のターゲティングが求められ、効果・安全面の理解のために専門医の研究・処方例に基づく知見と経験の共有が重視される傾向にある。このため、データサイエンスを強化するとともに質の高いオンラインカンファレンスや「MRPlus」、Web講演会などを行うためのプラットフォームを新たに構築していく計画となっている。また、カンファレンスやWeb講演会などではスムーズな運営を行うための専門知識を有するコーディネーターも必要になると考えており、これらを遠隔で行うコールセンター機能の開発も進めていく。子会社のアスクレピアでこうしたプラットフォームを開発しており、一部テスト運用も開始している。同社では、基本的にこれらのプラットフォームは自前で開発していく方針だが、条件に見合う企業が見つかればM&Aで取得することも選択肢の1つとなっている。

なお医薬DX事業の競争環境としては、前述のとおり、今後もエムスリーやメドピアなどが競合となることが予測されるが、従来の寡占的な競争環境は医療系広告事業としてのものである。急激なMRの減少により、製薬業界が求めるものは広告から営業ソリューションにシフトしている。営業ソリューションは広告と異なり住み分けが必然となるため、スピーディーで効率的なソリューションの提供により十分なシェアの獲得が期待できる。競合に対する同社の優位性としては、登録医師会員数で19万人を超える業界屈指の基盤を確立していることや、創業来、医学教育コンテンツサービスを展開してきた成果として医師等から高い信頼を得ておりブランド力を確立していること、また同社が有する医師との信頼関係を軸にインターネットと人が融合するハイブリッド型のDX支援サービスを展開できることなどが挙げられる。

(2) メディカルプラットフォーム事業
コロナ禍の影響により診療所の経営支援ニーズが一層高まるなかで、同社は医師・医療機関に対してこれまで蓄積してきたノウハウを活用して、教育コンテンツサービスやキャリア支援サービスに加えて診療・経営の効率化につながるサービスを開発し、展開していく予定だ。医療機関、特に診療所のDXは遅れており、DXサービスの潜在需要は大きいと見られる。

今後の開発の方向性を診療所のケースで見ると、診療のオンライン予約やオンライン診断のほか、専門医によるオンライン相談、患者のモニタリングサービス、経営に関わる業務効率化支援サービスなどスマートクリニックの実現に向けたサービスラインナップを拡充していく予定となっている。なお、新たに子会社化したアドメディカが運営する総合ヘルスケア専門メディア「Doctors Me」も同カテゴリーに入る。同メディアでは有料で専門医等に病気や症状についてオンラインで相談できるサービスを提供している。

同社の優位性としては、5万人を超える診療所開業医の医師会員を有していることに加えて、診療所開業を目指す40代を中心とした病院勤務医の多くが同社の医療教育コンテンツを見て育ったため認知度とブランド力が高く、新規サービスを立ち上げる場合には効率的にプロモーションなども行える点が挙げられる。

(3) ヘルスデータサイエンス事業
ヘルスデータサイエンス事業では、産業医科大学ヘルスマネジメントシステムや東京海上ホールディングスとの戦略的提携を通じて職域を軸に健康管理のプログラムを開発し、同社のメディカルプラットフォーム事業と連携することで競争力のある健康プラットフォームサービスを展開していく計画となっている。

企業の定年延長に伴い企業及び健康保険組合の支出がさらに増加することが予想されるなかで、健康経営に取り組む企業はここ数年増加傾向にあり、健康経営に関する市場規模※も2016年の約25兆円から2025年には約33兆円に拡大していくことが予想されている。こうしたなか、健康保険組合向けの医療費適正化支援サービスを行う企業はシステム、コンサルティングの両分野で増えているが、医療やヘルスケアの介入サービスと健康保険組合及び企業との連携はいまだ不十分と同社では考えている。そこで、同社は戦略的提携を通じて健康データや診療データのビッグデータ分析・アルゴリズム開発を行い、同社が開発するメディカルプラットフォームと各社のサービスプログラムを連携することで、より効果的な健康管理のプラットフォームを開発・提供していくことを目指している。

※経済産業省「健康経営の推進について」(令和3年10月)より、健康経営を支えるサービス市場及び健康状態を測定する市場の合計値。



新株予約権の発行により成長のための投資資金を調達
3. 資金調達について
同社は中期経営ビジョンの目標を達成するために必要となる投資資金について、第三者割当による新株予約権の発行とその行使によって調達していく方針を明らかにした。2021年9月に1万個(2021年10月1日付で1株につき4株の割合で行った株式分割後の株式数で400万株相当、希薄化率9.6%)の新株予約権をみずほ証券(株)に対して割り当てた。当初行使価額をベースに資金調達総額は約63億円を想定していたが、全体の3分の2に相当する6,700個(株式数で2,680千株相当)の新株予約権が行使された時点で、残存する新株予約権を取得・消却することにより以降の調達を中止し、総額35.5億円の資金を調達した。

調達資金の使途としては、主力事業である医薬DX事業の開発投資、人材投資に充当する予定で、これら投資に関連するM&A資産も含まれる。具体的には、今後の需要拡大が見込まれるスペシャリティ医薬品向けDXモデルの開発に約48.3億円、同事業に関連したデータサイエンス強化のための資金として約15億円を計画していた(スペシャリティ医薬品をターゲットとした専門医のオンライン上でのエンゲージメントを実現するためのプラットフォームを開発していく)が、医薬DX事業の開発投資、人材投資は段階的に取り組む計画であり、調達した35.5億円で当面の投資について計画どおり着手できると同社は判断している。以降の投資分についても手元資金や銀行借入等の手段により、当初計画に変更は生じないとしている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 欠田耀介)


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