TOKAI Research Memo(3):法人向け情報通信・CATV事業が堅調、エネルギー・アクア事業は顧客獲得進む
2. 事業セグメント別動向
(1) エネルギー事業
エネルギー事業の売上高は前年同期比9.9%増の58,717百万円、営業利益(間接費用等配賦前営業利益となり、決算短信とは算出方法が異なる。以下、同様)は同14.2%減の4,317百万円となった。会計方針の変更による売上高の影響額は14億円強の減少要因となっており、実質ベースでは12%強の増収であった。営業利益の増減要因を見ると、顧客件数の増加で7.4億円、仕入コストの改善(販売価格転嫁分含む)で6.5億円の増益要因となった一方、顧客獲得コストの増加で7.9億円、気温変動・他(世帯当たり消費量減少)で4.6億円、人件費・その他コストの増加で8.6億円の減益要因となった。
LPガス事業の売上高は前年同期比10.7%増の49,969百万円となり、顧客件数は前年同期末比で29千件増加の705千件となった。増収要因は販売量の増加と販売価格上昇による。販売量については家庭用が巣ごもり消費の反動減により前年同期比1%の増加にとどまったものの、業務用・工業用の回復により全体では同8%増となった。また、販売価格についても仕入価格に連動する業務用・工業用の上昇により同8%の上昇となった。
都市ガス事業の売上高は前年同期比5.4%増の8,747百万円となり、顧客件数は前年同期末比7千件増加の68千件となった。原料費調整制度による販売単価の上昇等が増収要因となった。なお、顧客件数の増加分の大半は、持分法適用関連会社であるT&Tエナジー(株)における東海エリアでの契約件数増加※によるものとなっている(販売手数料のみ売上計上)。
※T&Tエナジーは東京電力エナジーパートナー(株)との合弁(出資比率50%)で2019年10月に設立され、愛知県、岐阜県、三重県の東海3県で都市ガスの小売事業等を行っている。
(2) 情報通信事業
情報通信事業の売上高は前年同期比1.0%増の38,206百万円、営業利益は同13.3%増の3,492百万円と2期ぶりの増収増益に転じている。会計方針変更による売上高の影響額は0.4億円の増収要因となった。また、営業利益は法人向けの好調等により社内計画を4億円程度上回ったと見られる。
コンシューマー事業の売上高は前年同期比7.6%減の18,303百万円と減収基調が続いたが、営業利益は顧客獲得コストの減少やLIBMO(格安スマートフォン)の収益改善等によりその他コストの増加(ワークスタイル改革の環境整備費用1.9億円)を吸収して、同1.5億円の増益となった。顧客件数は前年同期末比17千件増加の779千件と増加に転じている。内訳を見ると、従来型ISP等で同7千件増加の382千件※、光コラボで同7千件増加の342千件、LIBMOで同3千件増加の55千件となった。光コラボについては大手携帯キャリアとの提携によるメニュー拡充を図ったことが増加につながっている。ただ、携帯キャリアとの連携案件が増えたこと等によるARPU(顧客当たり平均売上高)の低下が減収要因となった。また、LIBMOについては料金プランの見直しを実施したことが収益改善につながっている。
※2021年3月期第4四半期より従来型ISP等にISP付加サービスの契約件数も加えたため増加しており、同要因を除けば2万件程度減少していると見られる。
法人向け事業の売上高は前年同期比10.4%増の19,903百万円、営業利益は同3.2億円の増益となった。Amazon Web Services(アマゾンウェブサービス。以下、AWS)の構築案件やクラウドサービスが順調に推移したほか、システム受託開発案件も増加した。なお2021年4月末に、システム開発会社の(株)クエリの全株式を(株)TOKAIコミュニケーションズが取得し子会社化している。クエリの持つ技術力を融合することで、顧客へのさらなる付加価値の提供や取引先の拡大を見込んでいる(クエリの2020年12月期業績は売上高355百万円、営業利益39百万円)。
(3) CATV事業
CATV事業の売上高は前年同期比2.9%減の24,265百万円、営業利益は同10.7%増の4,539百万円となった。売上高は会計方針変更(セット販売している大手携帯キャリアの通信サービス料金分を売上高から除外等)による影響で14億円強の減収要因となったが、実質ベースでは約3%の増収だった。顧客件数の増加が増益要因となっており、社内計画比でも営業利益は3億円程度上回ったと見られる。
顧客件数は放送サービスで前年同期末比14千件増加の885千件、通信サービスで同22千件増加の339千件となった。地域密着型の番組制作に注力するとともに、大手動画配信事業者と提携するなど放送コンテンツの充実に取り組んだことや、高速光通信サービスの提供エリア拡大が顧客件数の増加、並びにARPUの上昇につながっていると見られる。
(4) 建築設備不動産事業
建築設備不動産事業の売上高は前年同期比28.4%増の19,025百万円、営業利益は同2.9%増の1,126百万円となった。増収の内訳を見ると、M&A効果※で26億円、リフォーム工事など既存事業の回復で7億円、会計方針変更による影響で8.8億円となっている。また、営業利益についてはのれん償却費用が1.2億円増加したものの、M&A子会社の利益でほぼ相殺され、リフォーム事業の回復で0.3億円の増益となった。
※中央電機工事(株)は愛知県内で電設工事業を従業員30名弱で展開している(2020年8月子会社化)。(株)イノウエテクニカは静岡県東部でビルメンテナンス事業を展開し、年間売上高は約5億円(同年11月子会社化)。(株)マルコオ・ポーロ化工は愛知県でマンションや公共施設の大規模修繕工事等を展開し、2020年4月期の売上規模は約22億円(2021年4月子会社化)。
(5) アクア事業
アクア事業の売上高は前年同期比0.6%増の5,811百万円、営業利益は同50.3%減の287百万円となった。顧客件数は前年同期末比4千件増加の166千件となったが、巣ごもり需要の反動による顧客当たり消費量の減少で売上高は微増にとどまった。利益面では、顧客獲得費用が2.6億円増加したこと等により減益となった。
(6) その他・調整額
その他の売上高は前年同期比15.7%増の3,395百万円となった。内訳を見ると、介護事業は利用者数の増加により同1.1%増の1,006百万円、造船事業は船舶修繕の隻数が増加したことや会計方針変更の影響(工事進行基準の採用により3.7億円の増収要因)により同22.2%増の1,212百万円、婚礼催事事業は、婚礼及び会議の利用について若干の回復が見られ同60.0%増の515百万円といずれも増収となった。また、内部調整額も含めた営業損失は4,514百万円と前年同期比で526百万円増加した。ワークスタイル改革の環境整備費用(オフィスリノベーション、IT機器導入費用等)を230百万円計上したことが主な増加要因となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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