アクシージア Research Memo(2):総合的なビューティーソリューション企業を目指す
1. 会社概要と沿革
アクシージア<4936>は、Made In Japanの高・中価格帯の化粧品・サプリメントの企画・製造を行い、主に中国市場でのECで販売する成長性の高い化粧品会社である。社名のAXXZIA(アクシージア)とは、『女性の染色体「XX」』を美の象徴とし、『アジア(ASIA⇒AZIA)の美』を日本から世界へ発信するとの想いを社名に込めている。美を創造し、顧客の思いや実情に合わせ、提案を可能にする総合的なビューティーソリューション企業を目指している。
創業から同社を率いるのは、段卓(だたく)代表取締役社長である。中国の名門厦門大学卒業、琉球大学大学院修了後、上場企業でのシステムエンジニアを経て2003年に起業した。その後、エステサロン経営、美容機器輸出入などを経て2011年に美容施設(以下、サロン)向け化粧品開発・製造を展開するオリエンティナ化粧品(株)を設立し、2012年に社名を(株)アクシージアに改めた。転機となったのは2016年である。BtoC向け美容サプリメント「AGドリンク」及び目元ケア商品「エッセンスシート」を発売したところ、中国EC市場の成長もあり、ヒーロープロダクツ化に成功した。その後、ヒット商品を中核に巧みなブランドマネジメントを展開し、4ブランド・80以上のアイテムを揃える企業に成長した。また2020年には、中国最大のECプラットフォーム「Tmall」で「2020年度新鋭企業賞」を受賞している。なお、創業10年目にあたる2021年2月に東証マザーズ市場に上場した。グループ全体の社員数115名、そのうち女性が73名(63.5%)、管理職の女性比率が48.8%、外国籍社員比率が46.1%と、ダイバーシティを実践する活力ある会社である。
2. 主要ブランドと商品
「AXXZIA」は目元製品を中心としたリテール向け主力ブランドで、エッセンスシートのヒーロープロダクツ化に成功した。「目元」に必要な美容成分をマルチに配合した美容液で湿布することで、集中した目元ケアができる。中国市場でヒット商品となり、2021年7月期のエッセンスシート売上高は2,343百万円(全社売上高の40%)であった。「AGtheory」は、AGドリンクをコアに化粧品と融合させた第2のリテール向け主力ブランドとなる。ヒーロープロダクツ化に成功したAGドリンク愛用者へ、同一コンセプトでの化粧品と融合させブランド化した。“抗糖化”を訴求してヒット商品となったAGドリンクは安定的に月1万本を出荷し、ARPU(1顧客当たりの平均売上金額)が高いことが特長である。「AXXZIA」と「AGtheory(AGドリンク含む)」の2ブランド合計の2021年7月期売上構成は83%に達する。一方、美容サプリメント「ホワイトアミノズ」と化粧品「サンスクリーン」を育成分野と位置付け、第3の主力ブランド化を目指している。以上のブランドは中国市場及び日本市場で中・高価格帯(平均売価5,000円以上)でBtoCブランドとして販売される。これに対し、サロン専売ブランド(プロフェッショナル分野)として「Le Ciel de L’aube (ル シエル ド ローブ)」のほか、「アイテール」シリーズや「The B(ザ ビー)」などがある。サロン専売ブランドは創業以来の同社の強みかつ特長分野であり、高価格帯(平均単価10,000円以上)で販売される。
中国市場において同社商品は、Made In Japanブランドとして日本の化粧品企業と認知されている。中国化粧品市場の約4分の1を占めるこのカテゴリーは、資生堂<4911>やコーセー<4922>、ファンケル<4921>などが長年基盤を構築しており、特にスキンケア分野などで機能性が評価されている。同社は4位以下のグループで、ポーラ・オルビスホールディングス<4927>などが競合となる。中国市場においては、日系及び欧米系企業ブランドは中・高価格帯、韓国系企業ブランドは中価格帯、中国系企業ブランドは低価格帯と、ポジショニングに違いがある。中・高価格帯カテゴリーは百貨店を中心としたリテールに依存する企業が多いなか、同社はECを中心に展開しており、差別化できている。
3. 地域別・チャネル別の売上構成
同社の成長の原動力は中国市場での成功、特に中国ECの成長である。2021年7月期の地域別・チャネル別売上構成は、中国ECが70.8%(4,095百万円)であった。中国ECの内訳としては、BtoCサイト「Tmall Global」(アリババグループ)旗艦店での販売と、CtoCサイト「淘宝網(Taobao)」(アリババグループ)や口コミサイト「小紅書(RED)」(以下、RED)などによるインフルエンサーマーケティング販売があり、どちらも成長性が高い。次に売上構成が高いのが中国サロン向け18.1%(1,046百万円)となる。顧客であるエステサロンは600店舗以上あり、コロナ禍の影響はあるものの販売は安定しており堅調に成長している。一方日本市場は、コロナ禍の影響を受け特にリテール販売が落ち込んだことにより、売上構成は6.6%(384百万円)であった。なお、その他としてカナダ、ロシア、ドイツ、オーストラリアなどでの販売実績があるが、コロナ禍による渡航制限などから積極的な展開は控えている。
4. ビジネスモデル
同社のビジネスプロセスは、(1) 製品開発、(2) 製造、(3) 販売、(4) アフターサポートの4段階に分かれており、それぞれのプロセスで特長がある。(1) 製品開発については、「Tmall」との戦略的連携や「Taobao」等でのテストマーケティング(KOL:key opinion leaderや現地サロン経由)などにより、消費者のニーズをタイムリーに入手できる。同社では、これらのニーズの中から年間200に及ぶコンセプトを立案し、試作や品質チェックを繰り返しながら20前後のアイテムを量産化する。ECチャネルでは市場での評価を早期に確認でき、商品改廃のタイミングも早い。このようなハイペースのリリースサイクルは、同社がヒット商品を継続して生み出し、育てることができる要因と言えよう。一例を挙げると、主力商品の1つであるAGドリンクは2016年の発売以来5回リニューアルをしており、顧客の声を反映するサイクルの速さがわかる。また、処方開発や容器開発、許認可確認や薬事など、化粧品開発に必要な機能をすべて内製している点も同社の強みとなっている。(2) 製造については、中国で高く支持されているMade in Japanブランドを重視し、日本企業に製造を委託し、自社工場生産レベルの高い品質管理基準を徹底している。(3) 販売については、オンラインとオフライン(サロン向け高額品が主体)を並行して進め、ブランドの維持に寄与している。販売チャネルや販売促進においては、「Tmall」を中心としたトップダウン型と「Taobao」や「RED」などを活用したボトムアップ型の両面でのプロモーションにノウハウが蓄積されている。(4) アフターサポートにおいては、充実したカスタマーサービスが各チャネルで評価されている。中国市場では模造品、横流し、不当廉価販売の対策が求められるが、同社ではブランド維持の取り組みとして、全製品にQRコードのセキュリティラベルの貼り付け及びナンバリングを行うことで購入者が正規品を確認でき、流通時の問題に即時に対応できる体制を整備している。
5. 強み
同社の強みは、中国市場を主なターゲットとし、中国人の嗜好性を取り入れた製品開発を行い、中・高価格帯商品もECで販売できるという中国の特性を踏まえて、各チャネルを複合的に活用して販促支援及び販売を行っている点にある。同社は中国に特化することによって、日系企業に対して優位性を築いてきたと言える。このほか、中国独自の承認制度に対しても強みを発揮している。中国市場はNMPA(National Medical Products Administration。中国国家食品薬品監督管理局。米国FDAによるPMA認証に相当)の認証など独自の承認制度があり、これが参入障壁になっていると言われる。これに対して、同社ではNMPA認可成分・処方を重視した商品設計をしている。この結果、中国向け展開製品におけるNMPA登録比率は86%(2021年11月末現在)、直近2年間の承認比率100%(一般には20~30%)、平均申請期間3ヶ月(一般的には6ヶ月)と、スムーズに承認を取得している。なお、NMPA承認がない商品を中国市場で販売することは可能ではあるが、広告宣伝に制約があることから、EC店舗では取り扱いにくい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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