テンポイノベ Research Memo(1):飲食店・居抜き店舗の転貸借事業を展開、安定的かつ成長性の高いビジネス
テンポイノベーション<3484>は企業理念に「貢献創造(転貸借の商慣習を変え、店舗物件のスタンダードを創造する)」を掲げ、主に飲食店向けに居抜き店舗を転貸借する店舗転貸借事業及び不動産売買事業を展開している。
1. 「東京・飲食店・居抜き」に特化した店舗転貸借事業
店舗転貸借事業は、不動産オーナーから賃借した店舗物件を店舗出店者に転貸借する事業である。出店費用を抑えることができる飲食店の居抜き店舗の転貸借に特化した事業展開をしている。ターゲットエリアは飲食店舗が集中して需要が見込める東京23区を中心とし、主要顧客は低コストで飲食業の出店・起業を希望する小規模事業者である。店舗転貸借事業は、ALL Winのビジネスモデルである。不動産オーナーにとっては賃貸料収入の安定や店舗出店者管理からの解放、不動産業者にとっては店舗物件紹介や出店希望者仲介による収益獲得機会の増加、店舗出店者にとっては居抜き店舗を利用することによる出店費用の負担軽減や物件開発活動工数の削減、店舗撤退者にとっては原状回復工事等の閉店費用・業務上の負担軽減というメリットがある。
2. サブスク(ストック)型ビジネス
不動産オーナー・不動産業者に対して賃料・仲介料等を支払い、店舗出店者から賃料・手数料等を得る。この差額(転貸差益額)が同社の収益となる。また、賃料・更新料がランニング収入として転貸借物件数の増加に伴い積み上がっていくサブスク(ストック)型ビジネスモデル(転貸借物件数×転貸差益額)となっている。積極的な店舗開拓を推進して転貸借物件数が増加基調であり、サブスク(ストック)収益の積み上げによって売上高も増加基調である。2020年3月期末の転貸借物件数は2010年3月期末比11倍強の1,684件となった。
3. 安定的かつ成長性の高い新たな不動産ビジネス
同社では店舗転貸借事業を、一般的な仲介業やサブリース業ではない、不動産業における新たなビジネスと位置付けている。一般的な不動産市況の変化や景気に左右されにくく、サブスク(ストック)型収益が積み上がる安定的なビジネスであり、かつ市場開拓余地が大きく成長性の高いビジネスでもある。
4. 特徴・強み
同社の店舗転貸借事業の特徴・強みとしては、住宅は取り扱わずにドメインを店舗(特に飲食店舗)物件に専門特化していること、仲介業務を行わずにサブスク(ストック)型の賃料収益の積み上げに注力していること、所有リスクと資金調達を回避できる転貸ビジネスによって効率的な経営を実践していること、市場性の高い東京23区の中心部で集中的に物件を確保していること、低投資出店・起業と廃棄物抑制(エコロジー)を同時に実現する居抜き物件に特化していることなどがある。そのため、新規参入・展開は限定的であり、競合リスクも小さい。さらに店舗の総合プロフェッショナル集団であることが競合優位性となっている。
5. 2021年3月期第3四半期累計はコロナ禍の影響で小幅営業減益だが回復傾向
2021年3月期第3四半期累計の業績(非連結)は、売上高が前年同期比6.8%増の7,936百万円、営業利益が同9.1%減の604百万円、経常利益が同0.6%増の693百万円、四半期純利益が同1.6%減の473百万円となり、累計ベースでは増収・営業減益となった。店舗転貸借事業は、2021年3月期第1四半期に新型コロナウイルス感染症拡大の影響(以下、コロナ禍)を受けた。ただし店舗転貸借事業の成約件数が同第2四半期から回復傾向となり、不動産売買事業の大型物件売却や販管費の抑制なども寄与して、全体として営業減益幅を小幅にとどめた。四半期別に見ると、緊急事態宣言の影響を受けた第1四半期をボトムとして、第2四半期、第3四半期は前年同期比営業増益に転じて回復傾向である。
6. 2021年3月期通期は減益予想据え置きも上振れの可能性
2021年3月期通期の業績(非連結)予想は、売上高が前期比1.0%増の10,084百万円、営業利益が同23.5%減の600百万円、経常利益が同17.3%減の671百万円、当期純利益が同19.9%減の451百万円としている。2021年3月期第3四半期累計の進捗率は売上高78.7%、営業利益100.7%、経常利益103.2%、当期純利益104.8%で、各利益は通期予想を超過達成しているが、コロナ禍に伴う緊急事態宣言再発出の影響が不透明として、通期予想を据え置いた。同社は、緊急事態宣言再発出による時短営業要請で飲食店が影響を受けるが、小規模事業者にとっては都や県からの協力金給付もあり、解約が増加する動きは見られないとしているため、会社予想は保守的と言えるだろう。そのため、通期予想は上振れの可能性が高いと弊社は見ている。
7. 成長再加速を期待
成長戦略に変化はなく、「東京・飲食店・居抜き」の領域にこだわり、成長のベースとなる優良な転貸借物件数の増加を推進する方針だ。外食産業の規模は大きく、店舗数では同社がターゲットとする小規模事業者が大半を占めている。また開業・廃業による入れ替えが激しいため、同社の店舗転貸借事業にとって市場機会は豊富で更なる市場開拓余地は大きい。2021年3月期はコロナ禍の影響で成長が踊り場となった形だが、2022年3月期以降はコロナ禍の影響が一巡し、成長を再加速して新たな成長ステージに入ることを期待したい。
■Key Points
・「東京・飲食店・居抜き」に特化した店舗転貸借事業
・安定的かつ成長性の高い新たな不動産ビジネス
・2021年3月期はコロナ禍の影響を受けるも上振れの可能性、2022年3月期は成長再加速を期待
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
<EY>
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