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カルナバイオ Research Memo(2):キナーゼの働きに着目した創薬事業と創薬支援事業を手掛ける


■会社概要

1. 会社沿革
カルナバイオサイエンス<4572>は、2003年4月にオランダの大手製薬企業であったOrganon N.V.の日本法人である日本オルガノン(株)の医薬研究所からスピンオフし、キナーゼに特化した創薬支援事業及び創薬事業の展開を目的として、兵庫県神戸市に設立された。

2003年10月に神戸国際ビジネスセンター(KIBC)内に本社事務所及びラボを開設、2004年には神戸バイオメディカル創造センターに動物実験用のラボを開設し、動物実験を開始した。2008年3月には株式をJASDAQ NEO市場(現 JASDAQグロース)に上場し、翌月には米国に初の海外拠点となる販売子会社CarnaBio USA, Inc.を設立している。2010年より本格的に創薬研究に注力し、2015年6月に同社として初となる医薬品候補化合物のライセンス契約を、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の医療用医薬品部門の1つであるJanssen Biotech, Inc.(以下、ヤンセン)と締結したが、2016年8月にヤンセンの経営戦略上の理由により契約を終了している。また、2016年5月には同社が開発したCDC7キナーゼ阻害薬について、全世界での独占的ライセンス契約を米シエラと締結している。

海外での事業展開としては、2016年2月に米国サウスサンフランシスコにあるJ&Jイノベーションのインキュベーションラボ内に、研究拠点「カルナバイオC-Lab」を開設し、最先端の技術や情報などを取り入れながら新しい創薬技術の開発を目指して基礎研究を実施してきた。一定の成果※を得たことから、同拠点に関しては2019年1月末で閉鎖したが、同年2月に臨床開発を進めることを目的としたオフィスをサウスサンフランシスコ市内に開設している。

※副作用の少ないBRAF阻害剤を見出すことができるスクリーニングシステムの開発に成功し、研究成果が国際的な学術雑誌「Scientific Reports」(2019年1月24日付)に掲載された。



キナーゼ阻害薬は経口剤で副作用の少ない治療薬を開発することが可能
2. キナーゼ阻害薬の特徴
従来の抗がん剤は治療効果がある反面、重篤な副作用を引き起こすなど、患者にとって肉体的・精神的負担が大きいというマイナス面があった。これに対してキナーゼ阻害薬に代表される分子標的治療薬※は、体内において異常を来している特定の分子の働きを選択的に阻害することから、従来の治療薬と比較して治療効果が高く、副作用が少ないといった長所を持っている。キナーゼ阻害薬が初めて製造販売承認されたのは、慢性骨髄性白血病を適応疾患としたイマチニブ(商品名:グリベック、製造販売元:ノバルティス)で、2001年に米FDAに承認された。その後も、30種類以上のキナーゼ阻害薬が各種がん治療薬として承認されているが、2012年には関節リウマチ治療薬としてトファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ、製造販売元:ファイザー)が承認されるなど、適応疾患も広がりを見せており、現在は代表的な分子標的治療薬の1つとして、世界の大手製薬企業や研究機関などで研究開発が活発に進められている。

※分子標的治療薬とは、病気の原因となる特定の分子に対して、その分子の機能を抑制することで治療効果を得る薬剤を指す。


なかでも、BTK阻害薬として2013年に初めて承認されたイブルチニブ(商品名:イムブルビカ、製造販売元:ヤンセンファーマ(株))は血液がんでの治療効果が高く、売上規模がピーク時で8,000億円が見込まれるなど大きな成功を収めていることから、BTK阻害薬はライセンス市場においても非常に魅力的なターゲットとなっている。同社はこのBTK阻害薬で、現在、2品目の前臨床試験を進めている。

分子標的治療薬としては、キナーゼ阻害薬(低分子化合物)のほかに抗体医薬品(高分子化合物)も研究開発が盛んに行われている。抗体医薬品との違いについて見ると、抗体医薬品はバイオ医薬品であり、その作製には大掛かりな細胞培養設備が必要となるため薬価が極めて高く、また注射剤であることから通院による治療が必要で、患者の負担が比較的大きい。これに対して、キナーゼ阻害薬は低分子化合物であるため、化学合成による大量生産が可能で薬価を低く抑えることができるほか、経口剤であることから在宅で服用することが可能であり、患者の肉体的負担も軽いといった特長がある。


スクリーニング・プロファイリングのノウハウと高品質なキナーゼ作製技術が強み
3. 創薬研究プロセス
キナーゼ阻害薬の創薬研究では、まず創薬研究を行う対象疾患の標的となるキナーゼの特定から始まる。そして、この特定のキナーゼの働きを阻害する働きを持つヒット化合物を多数の化合物の中からスクリーニングして選び出す。このヒット化合物の中からさらに薬の候補となりそうな化合物を数種類選び出し、それらをもとにしてさらに類似化合物を合成し、選択性の向上や副作用の低減が進むよう分子構造の「最適化」を行っていく。例えば、標的Aというキナーゼが異常を来している場合であれば、Aのみを阻害する化合物であることが副作用の少ない薬となる。違う種類のキナーゼを阻害してしまうと、他の正常な機能が働かなくなり、副作用となって身体の変化として現れるためだ。このように、開発する化合物がどのキナーゼの働きを抑制しているのか/しないのかを判定する試験を「プロファイリング」と呼んでいる。こうした研究プロセスを経て最適化された化合物の中から、前臨床試験へ進む医薬品候補化合物を見つけ出していく。

こうした一連のキナーゼ阻害薬の研究プロセスの中で重要となるのは、スクリーニング及びプロファイリングで用いられる化合物の評価システム(アッセイ系)にある。このアッセイ系において用いるキナーゼタンパク質の品質や測定システムの精度、また、結果の再現性が高くなければ、医薬品候補化合物を選び出すことが困難となり、研究開発効率も低下してしまうためだ。同社ではこうしたスクリーニングやプロファイリングのノウハウ及び高品質なキナーゼの作製技術を持っていることが強みとなっている。

同社が保有するキナーゼの種類は、2018年12月末時点で369種類450製品となり、キナーゼの品ぞろえでは世界トップクラスとなっている。ちなみに、ヒトの細胞内には518種類のキナーゼが存在すると言われているので約7割をカバーしていることになるが、残り3割は体内での役割が明らかとなっていないものがほとんどで、薬の標的と成り得るキナーゼの品ぞろえとしてはほぼ網羅していると言える。キナーゼの作製やスクリーニングサービスなどを行う競合企業としては、米サーモフィッシャー・サイエンティフィックや米リアクション・バイオロジーなどがある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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