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ムサシ Research Memo(4):中核の2つの事業に加え、次代の成長事業として複数の新規事業への取り組みを本格化


■中長期の成長戦略:新規事業への取組状況

1. 新規事業への取り組み
これまでムサシ<7521>の中長期の成長戦略について弊社では、中核事業である選挙システム機材事業と、成長ポテンシャルが大きいメディアコンバート事業の2つを軸として考えてきた。これら2つの事業が依然として成長戦略の主軸であることに変化はないが、それに加えて同社は将来の成長のため、新規事業にも取り組んできている。それらの中で、今回同社が明らかにしたのはミクロフィルター事業と『ひびみっけ』事業の2つだ。いずれも2019年3月期から本格的に展開した事業であるため、短期的な収益貢献は限定的だ。しかしながらともに対象とする市場規模が大きいため、将来的に成長事業の一角を占める可能性は十分あると弊社では注目している。


富士フイルム製ろ過フィルターの国内総代理店として営業を本格的に開始。高性能と長寿命を武器に国内4,800億円市場に切り込む
2. ミクロフィルター事業
ミクロフィルター事業は、富士フイルム(富士フイルムホールディングス<4901>)が開発し製造するろ過フィルターの販売代理店事業だ。同社は5年前よりミクロフィルターの販売を手掛けていたが、2018年1月に国内総代理店の地位を取得し、ミクロフィルター事業の本格展開に乗り出した。

各種製品の製造においては、クリーンな水や作業環境が求められることが多い。典型的な例としては、食品・飲料の原料となる水や、半導体や液晶パネルの製造に際して使用される洗浄水などが挙げられる。そうしたクリーンな水を製造するために『ろ過機』が使用されているが、その中核のパーツがろ過フィルターだ。ろ過フィルターは消耗品で、いくつかの規格のカートリッジケースに収められている。ユーザーは使用するろ過機に合ったサイズのカートリッジを定期的に交換しながらクリーンな水を作り出し、各種製品の製造を行うことになる。

ミクロフィルター事業の収益モデルは、消耗品の交換需要というストック型ビジネスであり、軌道に乗れば安定した収益を期待できる。また、フィルターの国内市場規模は4,800億円と、同社からみて十分な大きさがある。この2つが同社がミクロフィルター事業に進出した背景だ。

同社が扱うフィルターは、非対称膜構造を有することが大きな特長となっている。これは1次側(入口)から2次側(出口)に向かって徐々にろ過膜の孔径が小さくなる構造を言う。この結果、効率性(単位時間当たりのろ過量)と微粒子や微生物の確実な捕捉を両立させることに成功しているほか、ロングライフ(カートリッジの長寿命化)を実現している。特にロングライフはユーザーの生産性や生産コストに直結する性質であり、訴求力が高いポイントと考えられる。

国内フィルター市場では海外製品のシェアが高く、同社はそこに、富士フイルムの手に成る“メイド・イン・ジャパン”の高性能と高い信頼性を武器に切り込む作戦だ。実質初年度と言える2019年3月期について同社は6億円の売上高を見込んでいる。2020年3月期以降についても、市場規模の大きさとミクロフィルターの持つ競争力の高さから、高成長が続くと想定しており、早期に数十億円規模の事業へと育成する方針だ。


富士フイルムの画像診断サービスの販売を通じて、社会インフラ点検市場に参入
3. 『ひびみっけ』事業
富士フイルムはまた、医療用画像診断システムの画像解析技術を生かし、橋梁やトンネル等の社会インフラの点検のための画像診断サービス事業を展開している。『ひびみっけ』はそのサービスブランドだ。同社はこの『ひびみっけ』についても富士フイルムの販売代理店として営業活動を行っている。

日本において老朽化したインフラの補修は大きな社会的課題となっているのはよく知られたとおりだ。政府はインフラ補修のために2018年度から2020年度の3年間で3兆円を投じる方針を固めており、これが公共事業費押し上げの要因ともなっている(2018年12月5日付日経新聞記事)。長期的にも、今後30年で195兆円のインフラ補修費が必要との見方もあり、老朽インフラの補修費が現在の公共事業費(約6兆円)に匹敵するという計算になる。

老朽インフラの補修・整備は、現状の把握、すなわちインフラごとの点検と診断が最初のステップとなる。その上で補修が必要と認められれば補修事前踏査へと進み、実際の補修プロセスへと移行していく。『ひびみっけ』が対象とするのは一連のプロセスの中の点検と診断分野で、橋などのコンクリート構造物が対象となる。

点検・診断に際しては、チョーキング(ひび割れをチョークを用いて明確化)⇒写真撮影⇒写真合成⇒CAD図作成…という流れで作業が進行する。『ひびみっけ』は、点検事業者が写真を複数枚撮影したものをクラウド上にアップロードするだけでチョークやひびの長さ・幅を自動で検出・積算し、CAD図まで作成するというサービスだ。手作業などと比較して省人化、時間短縮、正確性向上といった直接的メリットに加え、クラウドサービスであるため初期費用が掛からないという点もアピールポイントとなっている。『ひびみっけ』が対象とするのは“社会インフラ点検市場”だが、富士フイルム自身はこれまで写真フィルムや化粧品分野で培ったナノ技術やフィルム・シート加工技術を活かし、補修・予防のための材料や補修工法の提案にも乗り出している。今後の状況によっては、同社が『ひびみっけ』サービスに加えて補修・予防材料の取り扱いに事業を拡大する可能性は十分考えられる。

前述のように、同社の『ひびみっけ』事業は、富士フイルムの販売代理店として営業活動を行うというものだ。同社は選挙システム機材事業を通じて全国の全1,741自治体にアプローチできる営業ネットワークを有している。同サービスの直接の顧客は点検事業者(建設コンサルタント会社や検査会社など)となるが、それらへの発注者が全国の自治体となるため、そこに強みを持つ同社には高い期待が寄せられているようだ。同社の収益モデルはユーザーのクラウドサービス利用料の一定割合を富士フイルムから受け取るというものだ。『ひびみっけ』の利用料金には従量制が採用されているため、顧客数の拡大と顧客単価の上昇の両面で同社の収入が伸びることになる。

富士フイルムは『ひびみっけ』を2018年4月にスタートしたが、これまでに大手のコンサルタント会社を始めとして数百のユーザーを獲得している。今後は富士フイルムと同社の2社で営業活動を行うことになるが、長さ2メートル以上の橋梁は全国に64万橋あると言われており、成長余地は非常に大きいと期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)



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