ワンダーCo. Research Memo(5):速かったチャネルシフト
1. ヒストリカルな収益動向
ワンダーコーポレーション<3344>は2004年の株式上場後、M&Aなどにより機能を付け加え規模を拡大、利益を増やしてきた。しかし、スマートフォンの急速な普及を背景にインターネットの利用が一般化、同社の商材が電子化されやすい書籍やCD・DVDだったため、2008年をピークに販売もレンタルも急速に業況が悪化した。同社はさらに規模を大きくして残存者利益を狙いに行ったが、それ以上のスピードでチャネルシフトが起こり、また川上から川下までエンタテイメント業界全体が疲弊していたこともあって規模のメリットが得られず、特に2014年の新星堂の連結後は急速に収益が悪化した。そうしたタイミングの2018年に、財務体質を改善するとともにシナジーによって積極策に打って出るため、RIZAPグループと資本業務提携をすることになった。足元は同社の積極策とRIZAPとの提携が早くも顕在化しつつあり、業況は改善傾向にある。
RIZAP提携効果はまだ端緒
2. 2019年3月期第2四半期の業績動向
2019年3月期第2四半期の業績は、売上高32,911百万円(前年同期比8.2%減)、営業利益59百万円(同72.1%減)、経常利益41百万円(同79.3%減)、親会社株主に帰属する四半期純損失74百万円(前年同期は51百万円の利益)となった。3月30日にRIZAPグループの連結子会社となり、グループの様々な商材やサービスを生かした「高収益ハイブリット型店舗への転換」を進めたほか、グループの購買機能を活用して取引コストの低減にも努めた。しかし提携効果は端緒であり、厳しい環境は継続している。このため、高採算のWonderREXの売上高構成比上昇、任天堂<7974>の新型ハードSwitchの需要一巡、好採算の新規事業の売上高増加などにより売上総利益率は前年同期比1.4ポイント改善した。しかし、売上高は苦戦し、販管費率が同1.8ポイント上昇したことから、営業利益は減益、低進捗となった。なお、出店はなく、閉店は新星堂で7店舗、WonderGOOで3店舗だった。
WonderGOO事業は売上高14,661百万円(前年同期比13.6%減)、本部費調整前営業利益557百万円(同27.0%減)となった。エンタテイメント市場全体で厳しい状況が続いており、特に新作のゲームソフトや書籍販売が低調だった。同社はRIZAPグループのリソースを活用することを進めており、低効率で縮小・撤退した売場をRIZAPに転貸、8月にRIZAP GOLF(WonderGOO越谷店)とRIZAP(WonderGOO千葉ニュータウン店)をオープンした。低採算売場が家賃収入に代わることで収益改善が期待される。
WonderREX事業は売上高3,854百万円(同0.6%増)、本部費調整前営業利益228百万円(同21.9%増)となった。普段の生活の中でリユースを利用するライフスタイルが一般的になってきているため、WonderREXも服飾・生活雑貨の品ぞろえを拡充し店舗数を年々拡大させている。猛暑など天候不順はあったが、利益率の高い服飾・生活雑貨の売上伸長により利益を確保した。WonderREX店舗の出店には店を埋める良質な商材の確保が必要だが、RIZAPグループ子会社との連携によって商材を確保することができた。
TSUTAYA事業は売上高7,102百万円(同4.6%減)、本部費調整前営業利益64百万円(同34.1%減)となった。独自展開の有料会員サービスの拡充やサブスクリプション型サービスのTSUTAYAプレミアム会員の獲得促進など、安定収益の確保に向けた取り組みを進めた。しかし、コンテンツ配信サービスの影響により、引き続き主力のCD・DVDのレンタル部門が低調となった。
新星堂事業は売上高5,104百万円(同3.0%減)、本部費調整前営業利益244百万円(同100%増)となった。業界苦戦のなか「namie amuro Final Tour 2018~Finally~」などライブCD・DVDの販売が好調、新作やベスト盤の発売も寄与した。また、店舗や商業施設などを利用したイベント事業の拡大も収益貢献した。
新たに構造改革の特別損失を見込んだ
3. 2019年3月期(13ヶ月の変則決算)の業績見通し
2019年3月期(13ヶ月の変則決算)の業績見通しについて、同社は売上高76,530百万円(前期比4.9%増)、営業利益790百万円(同166.8%増)、経常利益740百万円(同55.6%増)、親会社に帰属する当期純損失3,230百万円(前期は448百万円の損失)を見込んでいる。下期に創業30周年記念のイベント「ワングーフェス」を開催、加えて5月にスタートしたコスト削減策もフルに効いてくることから、ややハードルは高く見えるが、通期の売上利益を達成する意気込みである、なお、下期は新星堂とWonderGOOで閉店が進む見込みである。
RIZAPグループは、2019年3月期第2四半期の決算発表において、従来のM&A戦略を一旦中止し、子会社ポートフォリオの整理を優先することになった。これに伴い、子会社各社は財務体質の改善や収益性の向上といった策を一層強化することになった。これを受け、同社は2019年3月期決算において特別損失(構造改革関連費用)を計上する見込みとなり、親会社株主に帰属する当期純利益のみ370百万円から-3,230百万円へと下方修正することとなった。
同社は、2018年3月よりRIZAPグループの連結子会社となり、グループの様々な商材やサービスを生かした「高収益ハイブリッド型店舗」への転換を進め、これまでの事業構造からの転換を果たすべく、既存店舗の改装を中心に様々な取り組みをしている。しかしながら、エンタテイメント市場においてリアル店舗の売上げが数年来縮小を継続していること、新たにグループ全体の構造改革の方針が策定されたことを受け、2019年3月期において約3,900百万円の「構造改革関連費用」を追加的に特別損失として計上することとなった。
「構造改革関連費用」の内訳は、商品評価損と不採算事業・不採算店からの撤退に関連する費用などである。商品評価損等については、消費者の嗜好の多様化やスマートフォンを中心としたコンテンツ配信サービスの普及を背景に、音楽や映像に関する商品のライフサイクルの短期化が顕著になってきていること、エンタテイメント市場においてCD・DVD販売の低迷が数年来継続しているため、メーカーとの取引が将来縮小することで返品可能な額も小さくなることが予測されることから、保有する在庫の陳腐化リスクが高まりつつあると判断した。このため、構造改革の一環として棚卸資産の評価に関する見積方法を見直し、特別損失として計上することになった。また、不採算事業・店舗からの撤退に関連する費用については、グループ全体の構造改革の方針に基づき、同社の事業・店舗など関連資産の将来の投資回収可能性を勘案し、一定の費用処理を行うことを見込んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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