ALBERT Research Memo(5):自動運転に応用可能な新技術などにより成長期待は高まる
2. 2017年12月期の事業トピックス
2017年12月期の主なトピックスとしては、今後のプロダクト製品で成長期待の大きいAI・高性能チャットボット「Proactive AI」の正式版を4月にリリースした。また、7月にエレクトロニクス技術商社である(株)マクニカとAI、IoTを駆使したスマートファクトリー事業で業務提携したほか、8月には技術系人材派遣サービス企業のテクノプロと、データサイエンティスト育成事業で協業を開始すると発表した。更に、12月には自動運転等への応用が可能とみられる深度推定(距離推定)エンジンを発表し注目を浴びた。
(1) AI・高性能チャットボット「Proactive AI」
ALBERT<3906>は機械学習や自然言語処理技術を活用した高性能チャットボットを開発し、2017年4月より正式版の提供を開始した。7月には渋谷区が区民に対して提供するLINE公式アカウントOne to Oneの子育て支援サービスに早速導入され、性能の高さが評価されている。チャットボットを導入したことにより、区民の利便性が向上し、新規登録者数も順調に増加していると言う。今後も精度の向上を一段と進め、子育て分野以外の区民サービスにも導入を進めていく予定となっている。
また、9月にはキリンの「ワインすき!」サイトにも導入された。同サイトではワインを気軽に楽しんでもらうことをコンセプトに、チャットボットのキャラクターを通じて、ワインのHow toを質問形式で学べるほか、ユーザーの好みのワインをレコメンドすることも可能となっている。導入後に約1週間で1千人強の新規会員の獲得があったという。
「Proactive AI」の特徴は、独自の「言語処理エンジン」により、高い認識率でユーザーの意図を瞬時に判断し、適切な回答を返すことができることに加え、高精度な機械学習技術によって回答結果を積み重ねていくことで精度向上が図れること、初期導入・運用が容易なこと、LINEおよび有人チャットサービスとの連携が可能なこと、等が挙げられる。特に、同製品では言語の認識率の高さや、質問に対する適切な回答ができるかどうかが、鍵を握ると見られるが、導入先からはいずれも高い評価を得られているようだ。
このため、足元も引き合いは旺盛なようで、大手企業からの受注も決まっている。利用シーンとしてはBtoCやBtoBだけでなく、BtoE(社内業務向け)での引き合いもあるようだ。人手不足が様々な業界で深刻化するなかで、チャットボットはこうした課題を解消するだけでなく、オペレーションコストの削減や顧客(エンドユーザー)満足度の向上につながるツールとして今後も高い成長が期待され、同社も注力分野の1つとして位置付けている。
(2) テクノプロとのデータサインエンティスト育成事業
2017年8月にテクノプロと協業を開始したデータサイエンティスト育成事業については、企業におけるAIやディープラーニングに関連した研究開発活動が活発化するなかで、データサイエンティストの数が圧倒的に不足していることを背景に、その人材育成に共同で取り組んでいくことになる。テクノプロが抱える約16,000名の技術者に対して、同社独自のスクリーニング方法で対象者を絞り込み、蓄積してきた分析ノウハウを応用した教育プログラム・分析ツール(2018年上期中に開発)を活用することで、短期間にデータサイエンティストスキルを育成対象人材に習得させることが目的となっている。
2018年には約200名の対象者を予定しており、2019年に350名、2020年には500名と3年間で1,000名強のデータサイエンティストの育成を目標としている。育成したデータサイエンティストを同社のプロジェクトチームで活用し、旺盛な需要に対応していく戦略となっている。
現在、国内市場において、データサイエンティストの枯渇が顕在化していることを背景に、かかる採用コストが高騰しており、収益機会ロス(需要過多)にもつながっている。同社では今回の育成スキーム構築・運用に加え、独自の分析ツールを活用することによって、適正コストで一定レベルのスキルを有するデータサイエンティストを創造することができると見込んでいる。足元では、同社のデータサイエンティストは100名程度なので、想定どおりに進めば売上高の成長ポテンシャルも一気に高まることが予想される。
(3) 深度推定(距離測定)エンジン
2017年12月に同社は、自動運転等に応用が可能な深度推定(距離推定)エンジンを開発したと発表した。深度推定とは、2次元の映像や画像を解析し、カメラから物体までの距離を推定する技術となる。人間の脳は目から見える景色を把握して、物体までのおよその距離を判断しているが、この判断をディープラーニング技術を用いて高精度に実現した。
事前にステレオカメラ(2つのレンズを搭載するカメラ)で道路を走った際の風景映像を撮影して、物体までの距離を数値化し、これを教師データとすることで、単眼カメラで撮影した映像でもディープラーニングを用いて距離が推定できるようになると言う。自動車では衝突防止システム等で前方の物体との距離を高価なレーダー等を用いて測定しているが、これが安価な単眼カメラ1台と自動運転用のコンピュータ(米NVIDIA製で動作を確認)で実現できることになる。同社では深度推定エンジンに物体認識技術を組み合わせることで、さらに高精度化を目指し、実用化に結び付けていく考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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