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日経平均は4日続落、世界経済が抱える複合的懸念から相場低迷は長期化


 日経平均は4日続落。136.58円安の26260.25円(出来高概算5億1170万株)で前場の取引を終えている。

 12日の米株式市場でダウ平均は28.34ドル安(−0.09%)と小反落。9月卸売物価指数
(PPI)が予想を上回ったことで売りが先行も、債券相場が値ごろ感から反発して長期金利が低下に転じると安心感から買い戻しが強まり前日比プラス圏で推移する時間帯も見られた。ただ、9月開催分の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨がタカ派な内容だったことや、9月消費者物価指数(CPI)の発表を控えた警戒感もあり、引けにかけて主要株価指数は再び下落した。ナスダック総合指数は−0.08%と6日続落。

 方向感に欠ける動きだった米株式市場の動きを受けて日経平均は1.46円高と前日終値とほぼ同水準からスタート。その後、米CPIを前にした様子見ムードから積極的な売買が手控えられるなか、早々にマイナス圏に転じると、ダウ平均先物が上げ幅を縮めるのに伴い、前引けにかけて下げ幅を広げる展開となった。

 個別では、JAL<9201>、ANA<9202>、JR東海<9022>、JR西<9021>、OLC<4661>、エイチ・アイ・エス<9603>、高島屋<8233>などのリオープン・インバウンド関連が軒並み下落。ソニーG<6758>、HOYA<7741>、ダイキン<6367>、SMC<6273>の値がさ株、三菱重
<7011>、IHI<7013>、ダイフク<6383>の機械株、東京電力HD<9501>、東北電力<9506>などの電気・ガス関連なども総じて軟調。決算発表銘柄ではパルグループHD<2726>、ヒトコムHD<4433>、チヨダ<8185>が急落し、ビックカメラ<3048>も大幅安。

 一方、東エレク<8035>、アドバンテ<6857>、ディスコ<6146>などの半導体関連が反発。三菱自<7211>、スズキ<7269>の自動車関連、7&I−HD<3382>、資生堂<4911>などディフェンシブ系の一角も堅調。決算が好感されたトレジャー・ファクトリー<3093>、ウイングアーク1st<4432>、コシダカHD<2157>、久光製薬<4530>は急伸となった。

 セクターでは空運、サービス、電気・ガスが下落率上位となった一方、鉱業、水産・農林、ゴム製品が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体77%、対して値上がり銘柄は21%となっている。

 前日に発表された米9月PPIは前年比+8.5%と予想(+8.4%)を上回った一方、食品・エネルギーを除いたコア指数は同+7.2%と予想(+7.3%)を下回った。コア指数の下振れを評価する声もあるが、前月比ではコア指数は+0.3%と予想(+0.2%)
を上回っている。また、全体の伸びでは前月比は+0.4%と予想(+0.1%)を大幅に超過した。総じてあまり評価できる結果とはいえないだろう。

 今晩発表予定の米9月CPIに対する警戒感はかねてから強かったが、上述のPPIの結果は一段とその懸念を強めるものといえる。S&P500指数の前日終値はオプション建玉が積み上がる3500−3600ptの間にあり、米国では最近、個別株のオプション売買も記録的なレベルで活発化しているという。CPIの結果を受けた相場の変動率の上昇には注意が必要だろう。

 前日に公表された9月開催分のFOMC議事録では、多くの参加者がインフレ抑制を行い過ぎた場合のリスクに触れつつも、金融引き締めが過小だった場合のリスクの方が大きいとの見解でまとまっていることが判明し、タカ派な内容であったといえる。一方、個人的には総じてタカ派とはいえ、予想よりもハト派寄りの印象を抱いた。

 9月に公表された政策金利見通し(ドット・チャート)はFF(フェデラルファンド)
金利の中央値が今年末までにあと1.25pt引き上げられることを示唆していたが、この予測をしたのは政策メンバーのうち10人だった。9人は1.00pt以下の予測をしており、内実は拮抗していることが示唆された。これまで、米連邦準備制度理事会(FRB)の多くの高官から、市場の利下げ転換期待を諫めるような非常にタカ派な発言が相次いでいたことを踏まえると、やや想定外の印象を受けた。

 しかし、今晩に米CPIの結果公表を控えていることもあるだろうが、前日の米株式市場も本日の東京市場もポジティブな反応はほとんど見せていない。FRBの積極的な利上げが行き過ぎて景気が必要以上に大きく後退してしまう等、政策ミスへの警戒感が足元強まっていた経緯を踏まえると、そうした懸念が緩和される内容だったという点で、相場が少しはポジティブに捉えてもおかしくはないはずと考えたが、実際にはそうなっていない。

 つまるところ、市場は金融引き締めだけでない、世界経済が抱える複合的なリスクに警戒感を抱いているのだと考えられる。具体的には、ウクライナ情勢を巡ってのロシアによる核兵器の使用リスクや、一段の経済制裁などを通じたエネルギーインフレの再来、企業業績の想定以上の落ち込み、英国債市場を中心とした金融市場の混乱の連鎖などが挙げられるだろう。こうした、いったん生じると大きな波乱に繋がりかねないような不透明要因が今は同時的・複合的に生じている。これが、上述したように、金融引き締め懸念の後退を素直に好感しきれない一つの背景ともいえそうだ。

 となると、今晩、米CPIが仮に予想を下振れて多少ポジティブな結果だったとしても、その先の株式市場の反発基調は依然として短命なものに終わらざるを得ないと考えられる。セリングクライマックス的な総悲観の動きも未だ出ていないことを踏まえれば、積極的な押し目買いに転じる時期はまだ到来していないといえよう。
(仲村幸浩)
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