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大麻由来の植物性、半合成、合成カンナビノイドの用語と欧州の合成カンナビノイド・レビュー(2021年9月)


合成カンナビノイドついてお問い合わせがあったので、日本臨床カンナビノイド学会(事務局:東京都品川区)では、欧州薬物・薬物依存監視センター(EMCDDA)が発行する合成カンナビノイドの最新資料を仮訳し、本年1月11日に公開しました。米国のヘンプ由来CBDの合法化に伴い、CBD誘導体となる半合成カンナビノイドが注目されています。

用語の整理を含めて御参照下さい。

◆植物性カンナビノド Phyto-cannabinoids
大麻草(Cannabis sativa L.)に特異的に含まれる生理活性物質の総称。Δ9-THC, CBD, THCA, CBDA, CBG, CBN, Δ8-THC, CBGA, CBC, THCV, CBDVなど100種類以上ある。
化学的には、メロテルペノイド(アルキル側鎖を持つ炭素数 21 および 22 のテルペノフェノール化合物)である。大麻草からの抽出・単離、半合成、全合成、微生物工学(大腸菌、藻類、酵母など)の様々な方法でつくられる。

◆半合成カンナビノイド Semi-synthetic cannabinoids
THCやCBDの化学構造を維持し、薬理学的特性を改善するために小さな化学修飾によって生成されたもの。HHC、THC-Oアセテート、CBDD、2-HEC等の様々な誘導体が開発されている。カンナビメティック効果を目的としており、薬剤スクリーニングのカンナビノイド・テトラド試験などによる安全性及び有効性の評価が求められている。

◆合成カンナビノイド Synthetic cannabinoids
カンナビノイド受容体(CB1またはCB2)を選択的に活性化できる化合物。Δ9?THCよりCB1受容体の結合親和性が高いものを求めて開発されてきた。医薬品のセサメット(合成THC誘導体)、HUシリーズ、CPシリーズ、JWH化合物、AM化合物など。試薬として開発されたものが、喫煙用のミックス品(K2,スパイス等)として市販され、健康被害報告があったため、その一部が指定薬物(危険ドラッグ)となった。

半合成カンナビノイドの例
HHC, https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Hexahydrocannabinol
THC-O, https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Tetrahydrocannabinol-acetate
CBDD, https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/3081957
2-HEC, https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31824305/

●カンナビメティック効果 Cannabimimetic effect
大麻模倣効果と呼ばれ、狭義にはΔ9?THC模倣効果であり、広義にはカンナビノイド、テルペノイド、フラボノイド等の天然の大麻草に含まれる化合物の薬理学的及び毒性学的な効果を示す。

●カンナビノイド・テトラド試験 Cannabinoid tetrad test
薬剤スクリーニングに用いられる試験の一種で、齧歯動物にカンナビノイド受容体を介した運動低下、カタレプシー、低体温、痛覚抑制の四組(テトラド)の効果を評価する。

欧州の合成カンナビノイド・レビュー(2021年9月)

目次
2 方法と情報源
  エグゼクティブサマリー
5 背景
  合成カンナビノイドの開発の歴史
  合成カンナビノイドの合法的な使用法
6 国際的な統制手段
  欧州における合成カンナビノイド
  新規精神活性物質としての登場
  市場の有無と規模
9 合成カンナビノイドへの対応
10 代替
  物理的、化学的、薬理学的説明
  物理的および化学的説明
12 物理的および剤形
14 薬理学
21 健康および社会的リスク
  急性毒性
29 慢性毒性
31 心理的・行動的な影響
  依存性および乱用の可能性
32 機械の運転・操作能力への影響
  社会的リスク
32 使用範囲とパターン、入手可能性と普及の可能性
  使用率
33 使用のパターン
34 入手可能性、供給、組織的犯罪の関与
36 結論
37 参考文献
51 付録1. 選択された合成カンナビノイドのプロファイル
61 付録 2. EMCDDAが新規精神活性物質に関するEU早期警告システムを通じて監視し ている合成カンナビノド (2021年4月16日現在)

仮訳の資料はこちら
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=121685




【画像 https://www.dreamnews.jp/?action_Image=1&p=0000251707&id=bodyimage1

図 天然、半合成、合成の化合物分類

本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。

<用語集>

Δ9-THC:
デルタ9-テトラヒドロカンナビノール。THCとも表記される。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、最も向精神作用のある成分。いわゆるマリファナの主成分として知られている。痛みの緩和、吐き気の抑制、けいれん抑制、食欲増進、アルツハイマー病への薬効があることが知られている。

CBD:
カンナビジオール。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、向精神作用のない成分で、てんかんの他に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、神経性疼痛、統合失調症、社会不安、抑うつ、抗がん、吐き気抑制、炎症性疾患、関節リウマチ、感染症、クローン病、心血管疾患、糖尿病合併症などの治療効果を有する可能性があると報告されている。2018年6月に行われたWHO/ECDD(依存性薬物専門家委員会)の批判的審査では、純粋なCBDは国際薬物規制の対象外であると勧告された。

日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会;International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2021年4月段階で、正会員(医療従事者、研究者)101名、賛助法人会員14名、 賛助個人会員27名、合計142名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/

日本の大麻取締法
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2018年の時点で、全国作付面積11.2ha、大麻栽培者35名、大麻研究者401名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。



配信元企業:一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会
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