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『オンライン授業で大学が変わる』出版記念シンポジウムを開催しました


3月25日、株式会社大空出版(代表:加藤玄一)は制作にあたり取材にご協力いただいた徳永達己氏(拓殖大学教授)、武田晋一氏(拓殖大学准教授)、杉山歩氏(山梨県立大学准教授)の3名を招き、『オンライン授業で大学が変わる』の出版を記念したシンポジウムを開催しました。シンポジウムには大学・専門学校に通う現役学生、および大空出版インドネシア駐在員事務所でインターンシップを受けるインドネシア現地学生を中心に20名ほどが参加し、オンライン授業にまつわる4つのテーマをめぐって活発な議論が行われました。

本シンポジウムの主なテーマは以下のとおりです。

Q1.現在のオンライン授業に満足しているか。質の良いオンライン授業とは
Q2.オンライン授業でカメラをONにする意義とは
Q3.本当に学生は「課題地獄」と呼ばれる状況に陥っているのか
Q4.オンライン授業に適した授業形式とは

いずれも事前に学生95名にアンケートを取り、まとめたデータをもとに議論が進められた。それぞれのテーマで参加者から出た意見は次のようなものでした。

Q1.現在のオンライン授業に満足しているか。質の良いオンライン授業とは
A1.授業によってギャップがある。教員の準備の差がそのまま出ている部分も。オンデマンド授業は時間と場所を限定されず授業に参加でき、授業の形態によっては利点となりうる。

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【学生】
実際に受けた授業でも、教師によって質はバラバラだった。オンライン会議ツールを使いこなして「ブレークアウトルーム」を活用してディスカッションをさせてくれる先生もいれば、メールで送られてくる資料を読んで期末レポートだけでSをつける先生もいる。私が大学授業に求めていたものが得られていないなと感じている。その一方で、場所を問わず出たい授業に出られるのは利点だと思う。(Sさん・拓殖大学)

オンデマンド授業は効率が良いと思う。一度で理解しきれなかった内容があっても繰り返し視聴できるため、自分のペースで授業を進めることができる。通学の必要がなくなったため、朝早い授業があっても余裕をもてるようになったのはいいところだと思う。(Eさん・実践女子大学)

【教員】
授業のスタイルによっても「オンライン授業」という形態がなじむかどうかは変わる。たとえば語学の授業を担当する先生方は苦労しているようだった。教員本人のICTに対する理解度ももちろんあるが、授業内容による適性もある。
山梨県立大学の場合は、学内でデモンストレーションを行い、実際に教授陣が学生の立場でオンライン授業を受けてみる研修を行ったことで、かなり教員間の理解度のギャップは埋まった。ただ「スライドだけ見ていてください」という形態の授業は、本学では無かった。(杉山准教授)

拓殖大学は学期の開始をズラしゴールデンウィーク中に教員の研修を行った。オンライン授業用のツールに習熟することもそうだが、むしろ「オンライン授業では従来のシラバスのどこまでできて、どこからができないか」を明らかにすることが目的だった。元はICTに疎い人でも、興味をもって準備をした人はしっかりできるようになっていたので、教員の対応力の差はハッキリ出てしまっていると思う。(武田准教授)

Q2.オンライン授業でカメラをONにする意義はあるのか
A2.ONにする方が講義の効果は上がると考えられる。ただ大勢の視線を意識してしまうことで、授業に集中できなくなる学生も一定数いる。

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【学生】
教員から「なるべくカメラをONにするように」と通達があったが、出席者の半数以上はOFFのまま授業を受けていた。ONにするのを嫌がる人は少なくないが、自分は気にしない。顔を映した方が先生に失礼が無いように思うし、互いに顔を合わせるほうが授業の上で必要なコミュニケーションを取りやすいと思う。(Nさん・武蔵野美術大学)

自分はカメラをOFFにしたい派。従来のような大教室での授業だったら、自分が見るのは先生の顔のみ。オンライン授業では先生の顔だけでなく、他の学生の顔や自分の顔まで見続けなければならない。同じように自分も常に誰かの目にさらされているので、気を抜ける瞬間がなくて授業に集中できない。(Nさん・拓殖大学)

【教員】
自分はシラバスに「カメラON必須」と書いた。そうすると学生も映りたくない一心で工夫し始める。次第にカメラの角度を変えて、頭のてっぺんだけを映す生徒が現れた。「恥ずかしい」という理由よりも、「手元でスマホをいじっているのが視線でバレないように」という理由が大きいようだ。
自分がまだオンライン授業に十分慣れていないのかもしれないが、カメラOFFでは講義の効果が目減りしてしまうと感じる。(杉山准教授)

Q3.本当に学生は「課題地獄」と呼ばれる状況に陥っているのか
A3.オンライン授業開始以前に比べて増えたことは確か。課題のタイミングが重なると学生が大変になるのも間違いない。その一方で、元々日本の学生は勉強に割く時間が少ないという事実もある。学修時間が増えたことで「ようやくノーマルなラインに到達した」と見ることもできるだろう。

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【学生】
後期は実習授業が多かったが、オンライン授業だからといって課題に追われるようなことはなかった。(Mさん・京都芸術大学)

課題が増えたのは間違いない。特にオンデマンド授業は学生の出欠確認ができないので、出席数での評価ができない。学習の進み具合を確認するためにレポートの提出が求められることが増えた。「地獄」というほどではないが、オンライン授業が始まる以前より多くなったことは確実。(Sさん・拓殖大学)

大学ではレポート課題が多い。基本的には毎週提出する必要があるもの。時間を作ってまとめてこなしている。日に2~3時間ほど時間を費やしている。(インドネシア学生)

【教員】
自分は元々課題が多めだったが、むしろ課題を減らした。周りの今まで課題を出していなかった先生方が課題を出すようになったので、バランスをとって。教員の立場としては、1週間に20~10時間くらいは勉強してほしい。(杉山准教授)

教員も大学に集まらないため、お互いにどんな授業をしているか分からない。誰がどのくらい課題を出しているか共有されないから、タイミングが被って量が膨大になってしまうのだろう。元々起こりえた問題が、オンラインになり教師も生徒もコミュニケーションが取れなくなったことで顕在化してしまった。(武田准教授)

自分は課題が多い方だと思う。ただ、そもそも日本の大学生は勉強時間が不足している。「1週間で10時間も!」と言うが、日に1~2時間程度に過ぎない。これは諸外国の学生と比べても顕著に低い。あくまで大学生の本分は勉強なのだから、もっと勉強に時間を割くべきだと教員としては思う。
たとえば文科省が定めている大学の単位取得要件は「1単位につき45時間の学修(授業時間と予習・復習を合わせた時間)」となっているが、満たしているのか。(徳永教授)

Q4.オンライン授業に適した授業形式とは
A4.一般教養、基礎知識などの座学はオンライン授業・オンデマンド配信に合っている。実習やディスカッションなど、教員と学生のコミュニケーションが重視される授業はオフラインが良い。オンライン授業に使うツールやソフトウェアの発達によって解消されていく部分もあるだろう。

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【学生】
専門学校だとオンライン授業が週に2日、残りの3日は登校している。デザインソフトを使って実習を行うが、使い方を後からYouTubeのアーカイブで見られるのはオンライン授業の利点だと思う。でも基本的には登校した方が学べることは多いと感じる。(Kさん・東京ビジュアルアーツ)

オンライン授業も受けたが、良いところがあまりないと感じる。特に実技の授業は対面で教えてもらうのが一番良い。理論系の授業ならまだ良いかもしれないが……。東京デザイナー学院は実技の授業が9割なので、直接先生に見てもらって指摘を受ける形式がベスト。(Cさん・東京デザイナー学院)

ブレークアウトルームでのディスカッションは苦手。先生が「2人一組で話し合って」と部屋を分けても、振り分けられた相手がカメラとマイクどちらもOFFだったりする。打ち解けにくい。何を話し合えばいいのか……という気持ちになる。(Eさん・実践女子大学)

オンデマンド配信は座学には向いているが、実習にはどうしても合わないと思う。大学に行くことで、友人と作品を見せあい感想を言い合う機会が生まれる。他人の作品からインスピレーションを受けることもある。そういった機会が、オンライン授業では一切ない。(Eさん・武蔵野美術大学)

大教室での「教師から学生に知識を渡す」ような授業はオンラインで全く問題ないと思う。まだ答えが出ていない問題について、議論を交わすことが目的の授業はダイレクトな方がいい。対面でのディスカッション授業なら、メインの議論を聞く間にも隣の学生同士で「ああ言ってるけどこうじゃない?」「こういうこと?」のような会話ができる。そこから生まれる発想もある。そういった散発的な議論が生まれないのは、オンライン授業の限界なんじゃないか。(Nさん・拓殖大学)

【教員】
オンライン化できる授業はどんどんしていけばいい。オンラインの限界はあるので、そこをオフラインで行うべき。同じ授業をオンライン・オフライン双方で行うのではなく、役割を棲み分けることが大事。たとえばYouTubeで映像を見れば事足りるような部分は予習として先に見ておいて、オフライン授業ではそれを受けたディスカッションなど、その先のことに取り組むといったこと。(杉山准教授)

「対面授業はつながりが保てない」というが、同じ対面授業でも、大教室でやる授業ではそもそも生徒とのコミュニケーションは重視されていなかった。後ろの方の席から、教員が見せる手元の資料を見ても実感なんてわかない。たとえば大教室の講義をオンライン化すれば、それだけコストが浮く。その浮いたリソースを、よりコストが必要なものに充てることができるようになると感じている。(武田准教授)

代替可能な授業ならどんどんオンライン授業で代替していけばいい。ただ、ディスカッション形式の授業などは、現在のオンライン授業ツールだとやりにくいと思う。グループワークも同様。対応する機能もあるにはあるが、オフライン授業とのギャップに学生のフラストレーションは高まっている。(須永教授)

【記者からの質問】
・オンライン授業の試験はどのように実施していたか。授業はオンラインでも、試験は登校して行う学校もあるなど矛盾を感じる面もある。(日経HR)

大学によって対応は異なるとは思う。従来の試験と違い、オンラインでの試験は公平性が担保されないため、本当の意味で本人の実力なのか評価する基準にはなりえない。だから課題が増える。試験に加えて課題など周辺の要素を合わせて評価していくことになる。(武田准教授)

・ミネルバ大学は全授業がオンライン化しているが、討論が中心。学生の意見とは食い違うが、むしろオンライン授業はディスカッション形式にこそ向いているのでは?どこにいても誰とでも通話できるのは強みだと思うがどうか。(毎日新聞)

オンラインでのディスカッションは、会話をしているようで実は会話になっていない。同時にしゃべれるのは一人だけで、他の参加者は聞いているだけ。つながっているようでつながっておらず、つぎはぎだらけという感じ。マイクのミュートを解除して、他と被らないように「挙手機能」を使って…とやってようやくリアクションできるので、議論のテンポも遅くなってしまう。(徳永教授)

オンライン授業の限界は、PCの画面に表示できるもの以外が使えないことだと思う。対面であれば手元の資料だけでなくホワイトボードなども大きく使って話ができる。もちろんPCでも同じ機能はあるが、画面の切替などがあり、やはり即応性に欠ける。ミネルバ大学はかなり設備を整えて、討論に耐えうる授業環境を構築している。それがウリ。現状、日本の一般的な大学でミネルバ大学と同じ環境を全学生に整えることは不可能だろう。(武田准教授)



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