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血液から病原性DNAを効率的に検出する流体装置を開発 ヒト血漿中の短く少量の無細胞DNAを検出しバイオマーカーとして利用



図. ヒト血漿中の無細胞DNAの抽出手順(芝浦工業大学 二井教授提供)

芝浦工業大学(東京都港区/学長:山田 純)工学部機械工学科・二井 信行教授ら研究チームは、ヒト血漿から無細胞DNA(cfDNA)を効率的に抽出・精製する開放型マイクロ流体装置を開発しました。
がんなどの治療を行う際に、事前検査として病変組織を採取し、生体組織診断を行います。この外科的な生検に代わり、血液などの体液を検査するリキッドバイオプシーが注目されていますが、cfDNAは短鎖かつ少量であることから、これまで検出が困難でした。今回開発した開放型マイクロ流体装置では、cfDNA断片に対する感度を高め、少量の血液サンプルでも効率的に病気や感染症を正確に診断ができるようになりました。
※この研究成果は、「Analytica Chimica Acta」誌オンライン版に掲載されています。


<ポイント>
・リキッドバイオプシーによる病原性DNAなどの効率的な検出を実現
・短鎖で微量のcfDNA断片を流体装置で高い回収率・正確な分離を可能にした

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/297126/LL_img_297126_1.jpg
図. ヒト血漿中の無細胞DNAの抽出手順(芝浦工業大学 二井教授提供)

ヒト血漿サンプルから結核菌などの病原性DNAの短い断片を分離・抽出するために、開放型マイクロ流体装置を設計した


■研究の背景
がんなどの治療には、病状の正確な診断が重要です。より良い治療計画のためには、病変部位の組織を採取し観察する生体組織診断を行います。この外科的な生検に代わり、血液などの体液から異常を検出できるリキッドバイオプシーが、患者への負担軽減や検査の迅速さ、繰り返し検査可能な点から注目されています。
リキッドバイオプシーでは主にcfDNAをバイオマーカーとし、試料中の病原性DNAの有無を知ることができます。しかし、cfDNAはその存在量が少なく短いため、分析には抽出・精製が必要であり、非常に困難な作業です。cfDNAの精製方法としては、DNAが固相に親和性を持つことを利用した「固相抽出法」が一般的ですが、この方法では、DNAの基本単位である200塩基対(bp)以下のDNA断片を得ることができません。一般に、循環腫瘍DNA(ctDNA)や病原性DNAは、cfDNAよりも小さいと言われています。そのため、200bpより小さいDNA断片に感度の高い検出方法が必要とされています。


■研究概要
研究チームは、短鎖のDNAでも収率を低下させずに分離・濃縮できる技術である等速電気泳動(ITP)に注目しました。しかし、ITPはcfDNAを迅速かつ自動的に抽出・検出する優れた方法であるにもかかわらず、血漿から短いcfDNA断片だけを選択的に精製することは、これまで実現しませんでした。

本研究では、アガロースゲルとITPと通常の電気泳動を連続して行える過渡等速電気泳動(tITP)を利用して、ヒト血漿サンプルから病原性DNAを検出する開放型流体システムを開発しました。この流体装置の中で、可動式のゲルゲートをその場で構築することができ、いままで困難であった、複数の種類のゲルからなる領域を作り出すことができます。これにより、これまでのマイクロ流体ITPシステムでは難しかった血漿からのtITPを容易に成立させ、分離したcfDNA断片を正確に抽出することができます。tITPを経て分離・精製されたDNAはPCR(DNAの複製・増幅)可能なゲルの細片として簡単に抽出することができます。

実証実験でこの装置を使い、ヒト血漿から結核菌ゲノムDNA断片を精製・濃縮しました。この流体システムは、高い回収率、正確な分離、100~200bpの短いcfDNA断片に対する感度を示しました。さらにqPCR解析のために結核菌DNAを精製することも可能でした。このような高い回収率が得られた要因をさらに調べたところ、血漿をタンパク質分解酵素(プロテイナーゼK)で適切に処理することで血漿ペプチドが生成され、この血漿ペプチドは内因性のスペーサー分子として作用し、本システムのtITPの能力ともあいまって、cfDNAの分離能力を向上させることがわかりました。


■今後の展望
少量の血液サンプルから病気や感染症を患者への負担なく迅速に、治療段階ごとに繰り返し検査し、正確に診断することができるようになります。現在は、実用化に向けて、デバイスの準備から泳動・サンプル抽出までの過程を、ロボットにより自動化する試みを行っています。
また、血液以外の尿などの体液から、cfDNAの抽出する試みをスタンフォード大学と引き続き共同ですすめています。


■研究助成
本研究はJSPS科研費(16K01374)の助成を受けたものです。


■論文情報
著者 :芝浦工業大学工学部機械工学科教授 二井 信行
芝浦工業大学工学部機械工学科 深澤 悠仁
芝浦工業大学工学部機械工学科 柏木 友宏
芝浦工業大学工学部機械工学科 玉木 聖悟
芝浦工業大学工学部機械工学科 坂井 里帆
スタンフォード大学病理学科 Catherine A. Hogan
スタンフォード大学病理学科 Kanagavel Murugesan
スタンフォード大学航空宇宙工学科 Ashwin Ramachandran
スタンフォード大学病理学科 Niaz Banaei
スタンフォード大学機械工学科 Juan G. Santiago
論文名:A modular and reconfigurable open-channel gated device for the electrokinetic extraction of cell-free DNA assays
掲載誌:Analytica Chimica Acta
DOI :10.1016/j.aca.2022.339435


■芝浦工業大学とは
工学部/システム理工学部/デザイン工学部/建築学部/大学院理工学研究科
https://www.shibaura-it.ac.jp/

日本屈指の海外学生派遣数を誇るグローバル教育と、多くの学生が参画する産学連携の研究活動が特長の理工系大学です。東京都とさいたま市に3つのキャンパス(芝浦、豊洲、大宮)、4学部1研究科を有し、約9千人の学生と約300人の専任教員が所属。創立100周年を迎える2027年にはアジア工科系大学トップ10を目指し、教育・研究・社会貢献に取り組んでいます。
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