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分裂か 包容か 国際秩序は大きな岐路に 佐橋亮東大准教授


 大国間の対立が深刻化し、民主主義国家の中でも分裂が広がる世界で、現状をどうとらえ、新しい国際秩序をどう構想すべきなのか。米中関係や東アジアの安全保障秩序に詳しい佐橋亮・東大准教授に聞いた。

 国際秩序の揺らぎは過去10年近く指摘されてきたが、状況はより厳しくなっている。新型コロナウイルスのまん延や米中対立でグローバル化は停滞し、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルのパレスチナ自治区ガザ地区での戦闘拡大が追い打ちをかけ、本格的に転換点と言わざるを得ない状況を迎えた。

 ロシアによるウクライナ侵攻の根本的な原因はプーチン露大統領の野心主義だ。しかし、この侵攻が国際秩序に与えた打撃は大きい。ウィルソン米大統領の「国際秩序はジャングルを動物園に変える」という有名な言葉があるが、世界は逆に弱肉強食のジャングルへと一歩近づいた。

 同時に中国やロシアなど権威主義国家の影響力は増大し、制度的にも結束を強めている。中露ブラジルなど新興国グループのBRICSがイランやサウジアラビアを含め、拡大したことがその典型だ。

 今はまさに国際秩序の岐路だ。先進国中心の秩序に限界が見え、中国のほかグローバルサウスと呼ばれる国々を含めた、包括的な秩序構築ができるのか、という瀬戸際に立っている。

 また、ウクライナ侵攻を巡る国際秩序の再構築も困難が予想される。これだけの犠牲を出し、ウクライナはもちろん、欧州各国もロシアを許せないだろう。他方、ロシアに対して厳しい懲罰的な措置を取れば取るほど、新たな秩序は最初からそれへの不満をため込むことになる。そして平和が続く確信が持てなければ、世界の軍拡は止まらない。

 世界を見渡せば、このままでは先進国中心の古い秩序と、中国などが作っていく新しい秩序が並立していく可能性が高い。こうした新旧二つの秩序が並列する状況は日本にとっては苦しい。貿易と投資で生きる国にとって、世界のこちらとあちらでルールが違い、大国の利害に振り回されやすい状況は望ましくないからだ。

 米国のバイデン政権は少数国による枠組み「ミニラテラリズム」を重視する。その中で日本は、日米豪印、日米韓など、さまざまなメカニズムの中心に置かれた。これは、中国による台湾侵攻を念頭に置いた抑止の観点では有効だ。ただ、中国、北朝鮮、ロシアと向き合う東アジアにおいては、抑止を超えた大きな秩序の絵を描く必要もある。地域でも世界でも、私たちとは価値観の違う国も含めたインクルーシブ(包容的)な国際秩序を構想する必要があるだろう。【聞き手・米村耕一】

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