starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

奈良の中学生、企業30社の心動かす 「シリアの同世代支援」実現へ


 私立西大和学園中学校(奈良県河合町、飯田光政校長)の3年生約20人が、昨年2月6日に発生したトルコ・シリア地震で被災したシリアの子どもたちに向けて支援物資を送った。中学生自らが企業に物資の提供を依頼するなどして集め、支援ルートを模索。突き動かしたのは「シリアの同世代に笑顔になってもらいたい」という思いだった。【上野宏人】

 地震発生日の夜、当時2年生だった森孟子(もね)さんは自宅でSNSを見ていた。スマホに映し出されたのは、倒壊した建物にはさまれた幼い姉妹が必死に救助を訴える生配信。「目の前の子どもを助けたいと思うのと同じ」。近くの出来事のように感じ、心が揺さぶられた。

 「同じ10代の子どもに義援金ではなく救援物資を届ける」。早速そんな企画書を書き、翌朝、通学の電車で柴田芽依さんに見せた。貧困問題に関心がある森下紗良さんや、大阪北部地震(2018年)を経験した宮本梨紗子さんらも賛同し、グループを結成。グループ名は「MPS」。「人々を笑顔に」を意味する英語の頭文字からとった。

 とはいえ何をどうやって送るのか? 具体的なあてはなかった。インターネットで調べ、ルートにつながりそうな赤十字社やNPOなど30団体にメールを送った。シリアに特化した被災者支援キャンペーン「サダーカ(友情)・イニシアチブ」を立ち上げた東京外大の青山弘之教授とつながった。

 青山さんのアドバイスを得て、支援物資は現地で必要とされる衣類や生理用品などに決めた。子どもたちの“希望”になればと文具や玩具なども。シリアは内戦が続き、政府側と反政府側で支配地域も分かれてといった政治的に難しい背景がある。しかしメンバーは「同世代の子どもに物資と一緒に心を届けたい」と口をそろえる。「中学生でも支援ができたらシリア支援のハードルを下げることにつながる」との狙いもあった。

 支援物資を提供してくれる企業を探すため約300社にメールを送ったり、輸送費や足りない物資の購入費などに充てるために東大寺(奈良市)で募金活動をしたり。メンバーは約20人に増え、資金調達や物資調達など役割を分担して会の態勢も整えた。

信じてもらえないことも

 企業から本当に中学生が活動しているのかと信じてもらえないこともあった。教員の助言もあり、メールを送り直すと約30社が協力してくれた。昨年5月にはシリアのナジブ・エルジ駐日臨時代理大使が来校。書道部や茶道部にも協力してもらって文化交流会を開いて信頼関係を築いた。

 6月までに集まった物資は段ボール約400箱約4・5トン。トラックで学校に物資を届けた企業もあった。校舎の廊下は段ボールでいっぱいになり、未使用の更衣室を倉庫代わりにした。

 一方、輸送ルートは航空会社などを模索したがなかなか決まらず、「本当に送れるのか」と不安がよぎった。放課後などに支援物資のリスト作りなどを進めるうち、ようやく昨年12月に船便が決まった。港まで運ぶトラックにメンバーらが支援物資を積み込み、送り出すと感極まって泣き出した。

 ところが直後、イエメンの親イラン武装組織フーシ派による商船への攻撃が始まり、出港できなくなった。困り果てたが、横浜の倉庫会社が再開まで保管してくれることに。中学卒業を控えてようやく出港が決まり、船は5月ごろシリアに到着する予定だ。

 森さんは「助けてくれた大人には感謝しかない。人の思いがつながったときのパワーを知った。自分も子どもを励ませられる大人になりたい」と活動を振り返った。物資が無事にシリアの子どもたちに届くことを願っている。

    Loading...
    アクセスランキング
    starthome_osusumegame_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.