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自衛隊派遣、増員が容易でない背景 能登半島地震と熊本地震の差


 石川県能登半島地方を震源とする地震に対する自衛隊派遣を巡り、野党の一部から「逐次投入」「初動が遅い」といった批判が出ている。政府は部隊の増強を重ね、6日までに5400人態勢に拡充したが、2016年の熊本地震では発生から5日後に2万2000人を派遣した実績があるだけに、派遣規模に限れば見劣りの感もある。数字上で差が生じた背景には何があるのだろうか。

 「今般の自衛隊の災害派遣について一部、逐次投入であるとか、初動が遅いといった指摘がある。私から少し詳しく説明をしたい」

 首相官邸で6日に開かれた政府の非常災害対策本部会議に出席後、記者団の取材に応じた木原稔防衛相が問わず語りに説明を始めたのは、地震発生後からの自衛隊の対応だった。

 自衛隊は、地震発生翌日の2日までに2000人態勢を構築し、ヘリによる人員や物資の輸送、救助活動を実施。3日は4600人態勢で、重機を使った陸路の修復や給水・給食など生活支援にも活動を広げ、6日までに5400人規模に拡充した。木原氏は「被災者に寄り添った生活支援活動を強力に推進するため、さらに部隊を増強させていく」と強調した。

 防衛省によると、5日現在で自衛隊は174人を救助し、糧食9万4563食、毛布6979枚、燃料6520リットルなどを輸送した。給食、給水支援はそれぞれ1387食、247トンを数える。

 一方、最大震度7を2度観測し、震災関連死を含め熊本、大分両県で225人が亡くなった熊本地震では、発生翌日に自衛隊員1700人を投入。2日後に1万5000人、5日後に2万2000人と一気に派遣規模を引き上げ、日本の災害対応として初めて、被災地からの要請を待たずに物資を緊急輸送する「プッシュ型」の実現に貢献した。

 こうした経緯を踏まえ、立憲民主党の泉健太代表は5日、「自衛隊が1000人、2000人、5000人という逐次投入になっているのは遅い」と批判。SNS(ネット交流サービス)上でも政府の対応を疑問視する投稿が見られる。

 自衛隊の初動対応に問題はなかったのか。対応を困難にした要因の一つが被災地の地理的な特性だ。自衛隊幹部は「陸の孤島と言われている半島での未曽有の震災。一番起きてほしくない場所で起こった」と振り返る。

 能登半島は日本海側最大の半島で、金沢市から半島先端までは陸路で約140キロに及ぶ。険しい海岸線も多く、山地がほとんどを占め、小さな集落が山あいに点在している。被害が激しい半島先端に向かうにつれて道路網が寸断されており、石川県によると6日午前6時現在で、半島中央の七尾市から北部に向かう道路は1本しか確保されていない。

 木原氏は、半島では陸路が限られるため、「道路の復旧状況や現地での受け入れ態勢の段階などを見ながら人数を増やしていった」と説明。自衛隊では活動可能なエリアの拡大に応じて人員を増強する手法をとっており、主に平野部が被災した熊本地震とは条件が異なるとの認識を示した。

 さらに、熊本に比べ、能登半島には規模の大きな自衛隊の拠点がないという事情もある。熊本市には南九州全体を管轄する陸上自衛隊第8師団の司令部があり、1万人超の隊員が常駐している一方で、能登半島には航空自衛隊のレーダーサイトしかない。防衛省幹部は「アクセスが非常に難しい場所で、通信の状況も悪く、状況把握が難しかった。そのなかで非常にスピーディーに部隊投入ができた」と語り、初動に問題はなかったと強調した。

 また、今回初めて、被災者の要望聞き取りを任務とする臨時部隊を400人規模で結成した。「プッシュ型」支援ではくみ取れない物資や支援のニーズを迅速に反映させ、きめ細かな支援につなげるとしている。【源馬のぞみ】

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