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千葉県にはクマがいない? 本州で唯一、生息未確認 その理由は


 2023年は各地にクマが出没し、過去最悪の人的被害が発生した。そんな中、本州で唯一、クマがいないとされているのが千葉県だ。房総半島は木々が生い茂り、自然豊かなイメージもある。真偽を確かめるため、専門家を訪ねた。

縄文時代以降、確認されず

 動物学を研究し、同県内の哺乳類などの生態に詳しい県立中央博物館(千葉市中央区)の下稲葉さやか研究員(43)に直球質問した。「千葉にクマがいないのは本当ですか」

 「はい。県内にクマがいるという証拠がないんです」と下稲葉さん。国内の野生下にいるクマ科の動物は、北海道のみに生息するヒグマと本州以南に分布するツキノワグマの2種類。九州では1941年に宮崎県で確認されたのを最後に生息の記録がなく、絶滅したと考えられている。

 本州にはクマが広く分布し、34都府県のうち茨城、千葉両県を除く32都府県の野生下にいるとされてきた。2006年に茨城で生息が確認され、それ以降、いないのは千葉のみとなった。東京都では奥多摩町など西部に生息し、最近は神奈川県境の町田市でも目撃されている。

 では、千葉にはいつからクマがいないのか。下稲葉さんは「はるか昔にさかのぼります」と説明を始めた。千葉県には貝塚をはじめ多くの縄文時代の遺跡があり、イノシシやシカは全身の骨が見つかっているが、クマの骨は出土していない。クマの犬歯を使ったアクセサリーが見つかったことはあるが、交易により人の手で持ち込まれたとみられている。

 近世以降は江戸時代の公文書などでも、幕府の馬の牧場を襲うオオカミの記述はあるが、クマは見つからない。近代から昭和にかけてもない。そのため、少なくとも縄文時代以降、数千年にわたってクマが生息していなかったと推測されるという。

謎を解くカギは地形にあり

 なぜ千葉にはクマの痕跡が見つからないのか。房総半島には200~400メートルの山が連なる房総丘陵がある。しかし、県内で最も標高が高い愛宕山(南房総市)は408メートルにすぎず、47都道府県別の最高地点の中では最も低い。それ以外は比較的平たんな地形で、クマの生息に適した山間部が少ないのだ。

 県境の地形も特徴的だ。茨城県境の北側は利根川、東京都や埼玉県と接する西側は江戸川や旧江戸川で隔てられている。房総半島は三方を海に囲まれる。つまり、隣接都県と山地が連なる場所がない。下稲葉さんは「他県の生息域から県内に来るためには都市部や住宅地、川などを通らないと不可能。クマは人目を恐れる特徴もあるため、来られないのではないか」と推測する。

 縄文時代には海水面が上昇して内陸の奥深くまで海が入りこむ現象があった。房総半島は海で本州との陸路が遮られて島になったり、半島に戻ったりした。しかし、陸続きになっても山間部が少なく、えさを探して広い行動域を必要とするクマ類の動物にとっては暮らしにくい場所だったのかもしれない。

 目撃情報や死体、カメラの映像などクマの生息を裏付ける証拠は今に至るまで確認されていない。下稲葉さんは「千葉県内でもクマの足跡に似たものが見つかったことがあったが、調べたら結局、全て違うものだった。全国の街中などに出没するクマは隣接する生息域から来るため、クマが生息していない東京都東部や茨城県南部と接する千葉県で出没する可能性は今後も低いのではないか」と予想する。

猟師は「ホッとした」

 野生動物と対峙(たいじ)する千葉県内の猟師はどう思っているのだろうか。「クマがいなくて良かった」。そう胸をなで下ろすのは、鴨川市でジビエ料理専門店「またぎ」を経営する高橋幸広さん(74)だ。

 狩猟免許を持ち、店の近くの山間部で50年以上、毎日のようにわなや散弾銃を使って山鳥やシカ、ウサギなどを狙ってきた。猟仲間から「クマは馬などを一撃で仕留める力強さがある」と聞いたことがあり、恐怖心を持っていたが、見たことがないという。

 高橋さんは「クマがいたらわな猟をする自分や仲間も被害に遭って、有害鳥獣の駆除もできないと思う。クマが本当にいないと聞き、ホッとしている」と話した。【長沼辰哉】

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