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スキー場のリフト券発売直後に営業終了 地元自治体が支援やめた背景


 北海道芽室町でスキー場など観光施設を運営する町100%出資の第三セクター「めむろ新嵐山」(社長・佐野寿行副町長)が突如、10月10日で事業停止すると発表した。支援金5170万円を計上した町の補正予算案が今月21日の町議会で否決され、営業継続が困難になったのが理由。新型コロナウイルス禍などで経営が悪化する中、町は赤字補塡(ほてん)の支援を続けてきたが、度重なる公金支出に議会が「待った」をかけた形だ。町は近く清算手続きに入る。

 21日の町議会本会議の採決は、反対11、賛成4の圧倒的大差の否決だった。行政側が示した予算案が議会で否決されるのは極めて異例。町政策推進課の石田哲課長は「異論はあっても最終的に理解を得られると思った。否決は想定外だった」と肩を落とす。

 町議会の梶沢幸治議長(52)は毎日新聞の取材に「コロナ禍の苦労は分かるが、これまで相当の税金を投入しても経営改善は見られなかった。限られた町財源の中、『立ち止まるべき』と判断した議員が多数を占めた」と背景を説明した。

 否決から6日後の27日、第三セクター「めむろ新嵐山」はホームページで「10月10日で営業終了」と告知。宿泊予約のキャンセルやスキー場のリフト券購入者への返金手続きなどを示した。今月1日にリフト券を発売開始した直後だった。

 「めむろ新嵐山」は2006年から町の指定管理者としてスキー場と宿泊施設、キャンプ場などを備えた「めむろ新嵐山スカイパーク」を運営。19年度から3期連続の赤字決算などで債務超過となり、町は毎年度の委託料のほかに追加補助として支援金を拠出してきた。22年度は委託料約5350万円と支援金を合わせて公費支出は計約1億1400万円に膨れ上がり、今年度も今回の支援金が議会で認定されていれば、1億円を突破する状況だった。

 抜本的な経営体質の改善は進まず、町は今年7月、第三セクター方式の運営は限界と判断し「25年3月末で清算する」と表明。当面は支援金拠出などで同社を「延命」させ、その間に民間事業者など新たな経営体を探すシナリオを描いたが、予算案の否決で目算は破綻した。

 一方、町議会は町の清算方針を受け調査特別委を設置し、今後の公費支出の妥当性を検討。経費削減など民間企業では当然行われる経営改善策の動きが鈍く、町の補助金頼みの体質が浮き彫りになってくるにつれ、「現状の経営体制では損失が拡大するだけだ」との認識が広がった。梶沢議長は「大切な税金をどう使っていくか、否決は議会の責任として事態に向き合った結果だ」と話す。手島旭町長は「町民の代表である議会の判断は重く受け止める」とした。

 同社は従業員36人の9月分の給与支給も困難なほど資金繰りが逼迫(ひっぱく)し、支援金が否決された時点で事業継続は不可能になった。町は顧問弁護士と相談し、近く同社の清算手続きを開始し、従業員の給与支給や雇用支援など対策を練る方針だが、めどは立っていない。

 「めむろ新嵐山スカイパーク」は市街地からも近く、手軽で自然豊かな観光スポットとして親しまれている。特にスキー場は小中学校のスキー授業にも活用されてきた。町、議会とも「新嵐山スカイパークは町民の財産として守りたい」との思いは共通している。

 町議会は29日の調査特別委で、各事業をゼロベースで見直し、持続可能な運営を求める提言書をまとめることを確認した。新たな経営体による早期の事業再開は可能なのか、先行きが見通せない中で模索が続く。【鈴木斉】

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