starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

「やめたくてもやめられない…」 実は深刻なネットポルノ依存


 日常生活に支障を来すほど、インターネットでポルノ動画を延々と見過ぎてしまう人たちがいる。ポルノの過剰視聴についてはWHO(世界保健機関)に精神疾患の一つとして認定され、欧米で多くの研究が進む。この問題について日本ではこれまで話題になることは少なかった。しかし、ネットポルノ依存の悩みを訴えるケースは国内でも出始めている。

 「ネットポルノを見続けてしまう。やめたいのに、どうしてもやめられない」。神奈川県鎌倉市の大船心療内科に20代男性が相談に訪れた。ポルノの見過ぎで日常生活に影響が出ており、通っている大学は留年を余儀なくされた。

 診療した井出広幸院長は「アルコールや薬物などの依存と構図は同じ。依存の根底にある心の奥に抱えている生きづらさに着目して治療をする必要がある」と話す。

 一方、ネットポルノならではの難しさも感じている。

 「誰でも簡単に視聴できてしまう現実がある。クリック一つでより強い刺激を求め、どんどんエスカレートするのが依存の特徴だ。表面化しにくい問題だが、潜在的に多くの人が悩んでいる可能性はある」

 WHOは2018年に国際疾病分類の改訂版(ICD―11)を公表し、「強迫的性行動症」を新たに追加した。日常生活に支障を来すネットポルノなどの過剰利用は「強迫的性行動症」に含まれると考えられており、精神疾患として初めて認められた形だ。

 世界で最も視聴されているアダルトサイトへの日本からのアクセス数(19年)は米国に次いで2位だった。多くの視聴にもかかわらず、日本ではネットポルノの影響について議論されることは少ない。

「大学生の5%が生活に問題」の調査も

 そうしたなか、本格的に研究を進めているのが兵庫教育大学で臨床心理学(認知行動療法)を専攻する伊藤大輔准教授と日本学術振興会特別研究員の岡部友峻氏だ。

 2人は国内の一般成人の男女1011人を対象に調査(22年)※1を実施。7・3%(74人)が「やめようと思ったが見続けてしまった」など問題のある視聴をしていたことが明らかになった。74人のうち、半数は抑うつなど重い精神障害をうかがわせる症状があることも判明。中程度のうつ・不安症状や気分・不安障害を示した人を合わせると8割が何らかの障害を示した。ポルノ視聴によって睡眠や趣味、勉強、家事をする時間が削られていたケースもあった。

 日本の4年制大学に通う男女150人を対象にした調査(21年)※2では、程度の差はあるものの5・7%の学生がポルノ視聴をコントロールできず、日常生活に問題が生じていることも分かった。

 伊藤准教授は「ポルノ視聴そのものは多くの個人が行う営みであり、使用しただけで法律に触れる違法薬物などとは異なる。ただ、調査結果を見ると、ポルノ視聴をやめることができず生活に影響が出ている人が一定数いるのは確かだ」と話す。

 岡部氏も「ICD―11に強迫的性行動が認定されたことを踏まえると、彼らの支援を本格的に検討する時期にきているのではないか。ネットポルノは従来のポルノと比べてアクセス性が格段に高く、コンテンツそのものも無限にあるため終わりなく視聴できる。深刻な事態になる前にカウンセラーや病院の医師などに相談してほしい」と訴える。【川上晃弘】

※1 https://doi.org/10.1007/s10508-021-02141-2

※2 https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.638354

    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.