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「海の防人」に進む無人機導入 海自、来秋までに24時間警戒監視へ


 海上自衛隊が有人の哨戒機で実施している洋上での警戒監視などを、大型無人機で代替可能かどうか検証を進めている。来年秋までには航続時間を人では困難な24時間まで延ばす計画だ。活発化する中国艦船の海洋進出の監視など任務が多様化する中で、隊員の負担を減らしながら警戒を強化する狙いがある。海上の「防人(さきもり)」に、無人機が加わる時が近づきつつある。

 海自八戸航空基地(青森県八戸市)にある格納庫の一角。試験運用が始まったばかりの米ジェネラル・アトミクス社製の無人機シーガーディアンの管制施設が6月、報道陣に初公開された。三陸沖を飛行する無人機のカメラで撮影した船舶の映像が室内のモニターに映し出されると、その鮮明さに驚きの声が上がった。

 シーガーディアンは全長11・7メートル、全幅24メートル。高性能カメラを搭載し、管制室にいるオペレーターの操作で付近を航行する船舶に焦点を合わせる。海自は遠隔操作や機体整備を含めた運用を民間企業に委託し、5月に試験運用を始めた。来年9月ごろまで計約2000時間の試験飛行を実施し、警戒監視などの任務が果たせるかを見極める。事業費は47億円。

 海自の管制室の隣には、2022年秋から同型機の運用を始めた海上保安庁の管制室もある。海保は違法漁船や不審船の監視などに活用しており、海保が運用している3機のうち1機は海自と共用するかたちだ。ある制服組は「海保と情報がリアルタイムで共有できれば、警戒監視の負担は非常に軽くなる」と話している。

 滞空型の大型無人機は18年末に閣議決定された中期防衛力整備計画(19~23年度)で、太平洋側の広域の監視能力を強化するために導入を検討するとされた。防衛省によると、無人機は有人機に比べて購入価格が割安な場合が多い。長期の連続運用が可能で、隊員の負担や危険を減らせるメリットがある。

 海自が無人機導入の検討を進める背景には、海自の任務が拡大を続けていることがある。中国が東シナ海から太平洋へと海洋進出の動きを強める中で、有人の哨戒機による日常的な警戒監視は緊張感が高まっている。さらに、イージス艦による弾道ミサイル防衛やソマリア沖での海賊対処、多国間訓練の増加など任務が多様化しており、「人と装備に余裕があるとは決して言えない状況」(海自幹部)だという。

 こうした中で海自内で期待されているのが、有人機と無人機の双方を組み合わせた警戒監視だ。海自では有人のP3C哨戒機がレーダーで探知した船舶に近づき、1隻ごとに不審な点がないかを確かめている。記者も同乗して取材したことがあるが、搭乗する隊員が記者には見えないほど遠くにいる船の種類を目視で確認し、異変を感知する観察眼はまさに職人技。自衛隊関係者は「有人機は無人機より展開が早く、相手へのプレッシャーも大きい」と指摘する。

 無人機を巡っては、航空自衛隊が22年12月、三沢基地(青森県三沢市)に無人機専門の部隊を発足させ、大型の無人偵察機グローバルホークの運用を始めている。また、ロシアとウクライナの戦闘で無人機を使った攻撃が展開されたことも受けて、防衛省は23年度から5年間で約1兆円を投じて無人機の整備や運用能力の強化を目指している。

 自衛隊制服組トップの吉田圭秀・統合幕僚長は「有人機、無人機にそれぞれメリットがある。我々が持っているアセット(資源)を活用し、いかにして実効的な対応が取れるのかを不断に検討していきたい」と話している。【松浦吉剛】

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