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ビール宣伝にトランスジェンダー起用 不買呼びかけ広がり幹部休職


 米国の大手ビールメーカーが、定番商品のプロモーションにトランスジェンダー女性のインフルエンサーを起用したところ、保守派による不買の呼びかけが広がり、同社の幹部が休職に追い込まれた。分断が進む米国で左右の価値観がぶつかる「文化戦争」の根深さが改めて浮き彫りになっている。

 米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルは今月23日、ビール大手アンハイザー・ブッシュで主力商品「バドライト」のマーケティングを担当した幹部2人が休職したと特報した。同紙は関係者の話として、休職は「自発的なものではない」とし、1人には後任も指名されたとした。同社は休職の事実を認め、他メディアも一斉に後追いで報じた。

 この人事情報が注目されたのは、バドライトのプロモーションが大きな波紋を広げていたためだ。

 きっかけとなったのは、俳優でインフルエンサーのディラン・マルバニーさん(26)の起用だった。マルバニーさんは昨年3月に自身がトランスジェンダーであることを公表し、動画投稿アプリ「TikTok」(ティックトック)では1080万人ものフォロワーを抱えるなどネット上で大きな影響力がある。昨年秋にはメディアの企画で、性的少数者の権利についてバイデン米大統領とも対談した。

 マルバニーさんは今年4月初め、バドライトとのコラボレーション動画を自身のSNSに投稿した。本人の顔がデザインされた非売品のバドライトのビール缶の画像なども披露した。

 米国では日本同様に消費者のビール離れが進み、とりわけ健康意識の高い若い層でその傾向は顕著とされる。マルバニーさんの起用は、多様性と包摂を志向する若い層にアピールする狙いもあった。しかし、政治的な分極化が進む米国において、性的少数者をめぐる社会的な課題は「文化戦争」と呼ばれるイデオロギー対立の火種となる。

 マルバニーさんの起用を受け、有名ロック歌手のキッド・ロックさんは、バドライトに向けて銃を乱射し、中指を立てながら同社をののしる動画をSNSに投稿した。ロックさんは、トランプ前大統領の支持者で、一緒にゴルフを楽しむなど個人的な親交があることでも知られる。各地のレストランやバーでもメニューからバドライトを削除した例もあったと報じられた。

 米メディアによれば、バドライトの4月半ばの1週間の売り上げは前年比で17%低下したという。同社のブレンダン・ホイットワースCEO(最高経営責任者)は14日に発表した声明で、「私たちは、人々を分断するような議論に参加するつもりはない」と釈明に追われた。

 スポーツ用品大手ナイキも、女性用アパレルの広告にマルバニーさんを起用している。しかし、バドライトのような反発の動きは広がっておらず、商品の顧客層やブランドイメージの違いが影響しているとみられる。

 バドライトはこれまでも、LGBTQなど性的少数者の権利や文化、コミュニティーを支持するイベントなどを支援してきた経緯がある。米NBCは、「少数の反LGBTQ活動家がソーシャルメディアで騒ぐからといって、企業が広告やマーケティングに多様な人々を含めるというビジネスの標準的な慣行が終わることはない」とする支援団体の声明を伝えた。

 マルバニーさんは沈黙を保っていたが、27日におよそ3週間ぶりにSNSを更新。フォロワーに向けて「私は大丈夫」と語りかけ、「私は保守的な家庭で育ち、家族は私をとても愛してくれている。そこは非常に恵まれており、最も苦しんでいる点だ」と打ち明けた。その上で、「(自身について)完全に理解したり、うまく付き合ったりすること」ができなくても、「人間性をみてくれる人に感謝する」と語った。【ニューヨーク八田浩輔】

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