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相次ぐ無投票当選 有権者「健全ではない」不満の声も 統一地方選


 31日に告示された統一地方選の41道府県議選は、各地の選挙区で定数を上回る候補者がおらず、無投票当選が相次いだ。「政策を見比べて判断したかった」。人口減少など地域課題が山積する中、選択の機会が失われた有権者からは不満の声も漏れた。

 埼玉県議選の西11区(鶴ケ島市、定数1)では、自民新人の長峰秀和氏(52)が無投票で初当選した。7期務めた元県議会議長の父宏芳氏(80)から議席を引き継いだ。東京・池袋から電車で約40分と首都圏への通勤圏内で、住宅街が広がる都市部だが、無投票当選は2回連続となる。

 長峰氏はこの日、立候補の届け出後に市内を遊説して回った。午後6時に無投票当選を伝える放送が市内に流れると、選挙事務所に続々と支援者が駆けつけ、祝福を受けた。

 父親の代からの支援者だという70代男性は「当選したことには安心したが、選挙戦がないと我々支援者も引き締まらない」と話した。地元政界の関係者は「野党側は地元の市議会に足場が乏しく、県議選に候補者を立てるのは難しい」と分析する。

 長峰氏は「政策を訴えたり、自分を知ってもらったりする機会が少なくなってしまう」と話し、今後はミニ集会を定期的に開く予定だ。

 有権者はどう見ているのか。東武線の鶴ケ島駅前にいた女子大学生(22)は「県議選があることも知らなかった」。60代の無職男性は「若い人に立候補してほしいけど、そうそういないだろう」と冷ややかだ。会社員の男性(55)は「県議が選挙を経験しないのは健全ではない。候補者の政策を見比べて、判断したかった」と話していた。

 4年前の前回、無投票率が47・8%に上り全国一だった岐阜県議選(定数46)。31日は26選挙区中17選挙区の19人(41・3%)が無投票で当選を決めた。

 長良川などの木曽三川が流れる県南西部の海津市選挙区(定数1)では、自民現職の森正弘氏(75)が無投票での6選を決めた。新人3人が議席を争った補選で初当選して以後、5回連続で無投票当選が続く。事務所開きでは、国会議員が「祝当選」のビラを持参し、無投票を見越して「告示日に使ってもらいたい」と話す一幕もあった。

 無投票が続く背景について、県内の政界関係者は「この地域に残る『輪中(わじゅう)根性』が無投票を助長している」と解説してみせた。この地域では、海抜0メートルの中州状の土地を堤防で囲み浸水を防ぐ「輪中」が発達した。天災から地域を守るための結束が、時に異論を認めない閉鎖性にもつながる――との解釈だ。

 森氏は午後5時過ぎ、事務所で支持者らとともに万歳した。報道陣の取材に「日ごろの活動が有権者に認められて当選できた。(無投票でも)当選回数を重ねることで、自分の後ろに多くの有権者がいることを行政が認識してくれるのではないか」と話した。【安達恒太郎、太田圭介】

「民主主義の機能不全」

 地方選挙で無投票当選が相次ぐ事態をどう受け止めればよいのか。大川千寿(ちひろ)・神奈川大教授(政治学)は「今の日本の民主主義の機能不全を端的に表している」と述べ、危機感をあらわにする。

 無投票当選が決まると、有権者は政策論戦に触れる機会を失う。その弊害について、大川教授は「立候補者に対する有権者による民主的なチェックが働かなくなる。一方で議員は選挙を通して有権者の声を拾い上げることができない」と説明する。「その結果、政治と有権者がますます離れてしまう」

 「競争は地域の活力の表れでもある。無投票が地方の元気をなくし、それが無競争を生む悪循環に陥っている」とも指摘する。

 無投票の背景には地方議員の「なり手不足」の問題がある。総務省によると2022年末現在、現職の議員で都道府県は9割近く、市区は8割超を男性が占める。議会の構成が地域社会の「縮図」とは言い難い状況だ。打開策として、議会のオンライン化やハラスメント対策の促進、報酬増のほか、現職有利になりがちな「1人区」の解消など区割りの見直しを提起する声が研究者らから出ている。

 大川教授は、必要に応じて制度を見直すべきだと考えている。その上で、「住民の政治に対する意識を喚起していくことが重要だ。議会や議員は情報発信し、地方議会の存在価値を示さなくてはいけない。住民は地方自治には地域の未来がかかっており、最終的な責任を持つのは私たちだと再認識すべきだ」と強調する。【福島祥】

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