木村花さん母、フジテレビなど提訴＝ＳＮＳ中傷、安全配慮義務違反

　フジテレビの番組「テラスハウス」に出演したプロレスラー木村花さん＝当時（２２）＝がインターネット交流サイト（ＳＮＳ）の中傷を苦に自殺した問題で、母響子さん（４５）が６日、出演者の安全配慮義務に反したとして、同社と番組制作会社に約１億４２００万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。 　訴状によると、番組は男女６人がシェアハウスで共同生活を送る恋愛リアリティーをうたい、木村さんは２０１９年９月に入居。２０年１月、プロレスのコスチュームを台無しにされたことで共演者に激怒する様子が撮影され、その後、木村さんにも非があるかのような演出がなされた。 　ＳＮＳの中傷は、「コスチューム事件」を取り上げた３８話がネット配信された同年３月以降、大量に投稿された。木村さんは自傷行為に及び、友人に「たすけて」「心臓がばくばくいってる」などと訴えていた。制作側も認識していたが、「事件のその後」の配信で中傷が再燃し、３８話が地上波放送された４日後の同年５月２３日に亡くなった。 　原告側は、リアリティー番組は出演者が直接評価を受けるにもかかわらず、誓約書で従わせ、「もっと感情を出した方がいい」「キレちゃえ」などと実像と異なる演出を指示し、ＳＮＳの炎上を誘発したと指摘。中傷への対処や心身へのケアなどを怠った安全配慮義務違反があると訴えた。 　響子さんは提訴後に記者会見し、「出演者の人権や安全が守られていないと感じた。若い人の夢が搾取されるようなことはこれ以上起きてほしくない」と述べた。海外のリアリティー番組でも同様のケースがあるとし、「作り手のモラルと心が重要だ」と訴えた。 　フジテレビは「訴状が届いていないのでコメントは控える」としている。　（了） 【時事通信社】 〔写真説明〕フジテレビなどの提訴後に記者会見するプロレスラー木村花さんの母響子さん＝６日午後、東京都千代田区