starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

知識人・富裕層が中国脱出=習政権に嫌気、日本移住も―ルポライターの安田峰俊氏インタビュー


 中国共産党大会を経て、習近平総書記(国家主席)が異例の3期目入りした。習氏は党大会で過去10年の実績を誇り、「ゼロコロナ」政策の成果を強調。新指導部の顔触れを見ると、習氏の3期目はさらに独裁色を強めそうだ。一方で、長期化する強権政治に嫌気が差した知識人や富裕層が、続々と国外脱出を図っている。中国社会の実情に詳しいルポライターの安田峰俊氏に聞いた。  ―中国で今起こっていることとは。  メディア界の重鎮や知識人、富裕層が、続々と中国から逃げ出している。脱出先としてシンガポールに次いで人気があるのが日本。文化的に近く、比較的低い予算で定住できる。自分が知るだけでも、日本で言うなら大手雑誌の編集長クラスの大物や、数億円のビルをぽんと買えるような大金持ちが来ている。永住するつもりで家族を連れ、全財産を中国から持ち出している。  メディア人の脱出に関しては、習政権で言論空間が急速に狭まったことが背景にある。中国は「言論の自由がない国」というイメージがあるが、2012年まで続いた胡錦濤政権やその後の習政権初期は、かなり規制が緩かった。直接的な党批判さえしなければ、地方政府の政策批判や調査報道もでき、人権派の人たちが当局の取り締まりをインターネットでライブ発信することすらあった。こうした状況を覚えているメディア人は、当然現在の社会に疑問を覚える。天安門事件から30年の節目となった19年に一気に統制が強まり、この頃から見切りを付け始めた人が多い。  ―富裕層はなぜ逃げる?  中国政府にぶら下がっている国営企業よりも、民営企業の関係者が危機感を感じている。(当局が巨額の罰金を科すなどした)「アリババたたき」に代表されるように、どんな大手企業でも政府に目を付けられると大打撃を受ける時代。富裕層は突然財産を没収されるかもしれないという恐怖を感じている。  決定打となったのが、今春の上海でのロックダウン(都市封鎖)。北京や広州といった大都市に住む先見の明のある人々も、上海の状況を見て逃げ始めた。資産数億~100億円レベルの中国人が日本に流入しており、大都市圏では高額な不動産が、投資目的ではなく「住宅」として買われている。これは日本にとってはチャンスで、政府は富豪誘致のための仕組みを本格的に整備した方が良いのではないか。  ―こうした現状をどう見るか。  中国にとってはまずい状況だ。今国外に逃げているのは、社会の中で最も「元気な人々」。自分の頭で考え発言し、コンテンツを作って国民の心を動かせる知識人や、自由市場で自らの才能で稼ぎ、巨額の富を築ける経済人だ。本来であれば、国が大切にして自国にとどめるべき層が出て行っている。一番頭の良い人たちが中国を見切っているということの意味は深刻だ。習政権3期目でこの傾向は続くだろう。  ―中国社会の閉塞(へいそく)感は今後も強まっていくのか。  揺り戻しはいずれ来る。1980年代から胡政権の時代まで、中国は経済や社会の各方面でおおむね自由が拡大していく傾向にあった。それが習政権下でイデオロギーを重視する極端な「左寄り」に傾き、統制が強まった。ソフト路線だった胡政権末期の党内には、次期総書記(習氏)に権力を集中させ引き締めを図らなければならないという共通認識があった。ただ、結果として習氏は強くなり過ぎた。いずれ習氏が何らかの理由で執務に困難を来したり、政策上の失敗で求心力を失ったりした場合、相当な混乱を伴う揺り戻しがあるのではないか。「夜明け前が一番暗い」。今の中国はそういう状況だ。 【時事通信社】 〔写真説明〕ルポライターの安田峰俊氏(本人提供)
    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.