米アカデミー賞・談話

　◇時間かけ生まれる説得力 　パリ在住の文化ジャーナリスト・佐藤久理子さんの話　今作は、演出力の高さで３時間の長さを感じさせない。主人公と女性ドライバーの関係性など、長い時間をかけることで生まれる説得力や意外性、感動が絡み合い、大きなうねりになる点が非常に魅力的だ。 　脚本賞を受賞した昨年のカンヌ国際映画祭でも各国の批評家らの評価は極めて高く、「最高賞を取るべきだった」との声も多く聞いた。そうした評判が各地で積み重ねられ、今回の快挙に行き着いたのではないか。知性派で弁も立ち、「外交力」を備える濱口監督は、作品以外の面でも日本映画の新たな道を開いてくれそうな頼もしさがある。 　◇改革も追い風に 　東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの市山尚三さんの話　今作の評価は、濱口監督の際立った実力と才能に加え、近年の米国の意識の変化も大きい。アカデミー賞が多様性重視の改革を進め、新しい波を求める機運が高まっているタイミング。そこに、各地の映画祭や批評家賞で注目されたクオリティーの高い今作がうまくはまり、ここまでの結果につながったのではないか。 　日本の作り手に与える影響も大きいだろう。今回の受賞がある種の勇気となり、これまでの日本映画界の慣習を打破し、海外を意識した共同制作などに取り組む若手が続いていくのではないか。（了）【時事通信社】