何故ボクシングには人生のドラマがこれほどまでに凝縮されて投影されるのだろう――。

何かを背負ったり何かを乗り越えようとする人間が、必死にリング上の戦いにしがみつき、相手に抗いながらも相手にさえしがみつく。

ある人間の尋常ではない覚悟ともがき続ける様を描くには、ボクシングは格好の受け皿だ。

かく言う自分もボクシングを少しだけかじっているため人並み以上な思い入れがあるのだが、それをおくとしても、本作の「ボクシング」は男たちの人生を見事なまでに雄弁に語る。

かつては日本1位まで上り詰めたが、今はデリヘルの運転手をしながら引退のタイミングすら失った「かませ犬」ボクサー(森山未來)。

有名俳優の息子で売れずにくすぶっているお笑い芸人(勝地涼)。

愛する家族を手に入れながらも、施設で育った暗い過去を背負う若いボクサー(北村匠海)。

三者三様の問題を抱えた男たちが、確実に何かに決別しようと己の再起をかけてリングにしがみつく。

その拳は叫びににも似て、痛みは覚悟の大きさを表す。

目の前にいる敵との殴り合いは表面上のもので、本当は自分自身の中にある何か他の物と戦っているかのように見えてくる境地

それ自体人生のどん底のように苦しく辛い四角いリングという場を、あたかも自分を人生のどん底から掬い上げてくれるエレベーターであるかのように信じてやまない男たち。

そんな男たちの表情、眼。

そうだ、きっとボクシングは個人の意地や想いの強さを、リングというキャンパスに絵の具をぶちまけたように表現してみせるから否応なしに感動するんだ。

映画館を出た後に、何かに本気を出したいと静かに思い始めている自分に気付く、そんな劇薬のような本作は是非大画面で味わってほしい。

 

『アンダードッグ』

■監督:武正晴
■原作・脚本:足立紳
■企画・プロデュース:東映ビデオ
■出演:森山未來、北村匠海、勝地涼 ほか
■配給:東映ビデオ  製作:ABEMA 東映ビデオ 

©2020「アンダードッグ」製作委員会

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記事名:「【レビュー】過去や今から抜け出すためのリング、未来をつかみ取るための拳ー『アンダードッグ』