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『花束みたいな恋をした』土井裕泰監督インタビュー「1日、1日の“出来事と気持ち”を積み重ねていく様に撮影しました」


「東京ラブストーリー」(91)、「Mother」(10)、「最高の離婚」(13)、「Woman」(13)、「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(16)、「カルテット」(17)、「anone」(18)など、常に私たちの心を捉えて離さない多くの連続ドラマを手掛けてきた脚本家・坂元裕二さんが、2020年の東京を舞台に、今を生きるすべての人へ贈るため書き下ろした最新作『花束みたいな恋をした』が、いよいよ2021年1月29日に公開となります。

主役を演じるのは、菅田将暉さんと有村架純さん。2人の実力派俳優による〈初のダブル主演〉が実現しました。監督を担うのは『罪の声』の土井裕泰さん。『いま、会いにゆきます』(04)、『ハナミズキ』(10)、『映画 ビリギャル』(15)など多くの大ヒット映画を手がけてきた土井監督と坂元裕二さんとのタッグは、ドラマ「カルテット」以来、映画では初のタッグとなります。

土井監督にインタビューを敢行。本作についてじっくりとお話を伺いました!

――本作大変楽しく拝見させていただきました。映画を観ているのに、自分の事の様に切なくなったり嬉しくなったりしてしまいました。

土井:皆さんすごく自分の思い出と重ね合わせてくださって、主人公の二人のどこかに自分のことがフラッシュバックする事が多い様です。この物語は、2015年から2020年までの様々なカルチャー、固有名詞に彩られていますけれど、描かれていることは普遍的な20代の男女の5年間なので。僕から「こう感じて欲しい」という作品では無くて、色々な年代の方が観て、その人なりに自分を投影してくれれば良いなと思っています。

――たくさんの作品やアーティストさんの固有名詞が出てくるのも面白いですね。そこに「わかる!」となる方も多そうです。

土井:例えば10人のうち8人は分からないことなんだけど、そのことで繋がっているという事がとても大切で。少数派であっても大好きなものを共有できた時の喜び。そこをしっかり描きたいなと。
僕も30年前は、こういったサブカルチャーが好きな青年ではありましたけど、でも、本作には基本的に自分を投影しないようにしていました。麦と絹という2人を観察し続けるというか、菅田将暉さんと有村架純さんという2人のトップランナーと、坂元さんの言葉があれば、僕はニュートラルにそれを見つめる存在に徹しようと。元々、脚本も2人の日常を描いた日記の様な形で描かれていたので、撮影も「その日の出来事と、その日の気持ち」を1日、1日、積み重ねていく様な形で。

――「日記の様に書かれた脚本」とはすごいですね。監督はお読みになった時にどの様な感想をいだきましたか?

土井:すごく面白かったです。ですが、とても難しいとも思いました。なかなか、ある様で無い話ですよね。だと思うんですね。今ラブストーリーを描こうと思った時に、麦と絹は主人公にならない2人だと思うんです。いわゆる外的な枷というものは何もないですからね。これをエンターテイメントとして面白く見せるするのは大変だろうなとは思いました。でも、坂元さんの紡ぐ言葉はすごく素敵で力を持っているし、2人の俳優さんの表現を信じていれば、必ず良い形には向かうだろうという確信はありました。

――お2人が本当に自然体で、どの様に撮影したらこんなにナチュラルに撮れるのだろう、と感動しました。

土井:作劇上、演出上、ドラマティックな何かを起こすというよりは、彼らと自然に日々を過ごすように撮影していました。朝ごはんを食べて家を出て京王線沿線の現場に行って、絹と麦の1日を撮って自宅に帰ってお風呂に帰って寝る。という、僕自身の生活と彼らの生活がつながっている様な不思議な感覚の毎日だったんです。だからある日麦君が髪を短くしてスーツを着て現れたとき、僕たちスタッフもどこか切ない気持ちになって。そういう感情が自然に起きてくるような現場でしたね。

――部屋など美術のリアリティもすごいですね。

土井:彼らが読んでいる本、本棚、聴いている音楽など、坂元さんの脚本にかなり具体的に書かれていたので、細部まで手を抜かずにきちんと描という事がある種のテーマだと思っていました。部屋も「調布駅から徒歩30分の多摩川が見える部屋」と書いてありましたので、まずそれに合う建物を探して。部屋の中は実はセットで、ベランダだけが実際の場所でのロケ撮影なんです。

――一つの部屋だと思っていたので、ビックリしました。

土井:そう言っていただけると嬉しいです。

――菅田将暉さん、有村架純さんとの久しぶりのお仕事はいかがでしたか?

土井:菅田くんとはほぼ10年ぶりくらいのお仕事で、有村さんとも『ビリギャル』以来でした。その間に2人ともたくさんの作品で主役をやってきて、すごい活躍をしているわけですけど、良い意味でスターの特別感を感じさせないというか、僕たちと同じ空気を吸って同じ世界に生きている人たちだと思えることが素晴らしいなあと改めて思いました。渋谷の道玄坂や調布の駅前など、人通りの多い場所で撮影をしていると「何の撮影だろう?」「誰だれ!」ってたくさん人が集まってくるのですが、2人の前を気がつかずに通り過ぎていくんですよね。それくらい、2人は街に馴染んでいた。お互い共演も何度かしていて、同世代の俳優としてリスペクトしあっているし、カメラが回ってない時でもずっと2人で一緒にいましたね。

――他のキャストの皆さんも本当に豪華で、かといって2人を邪魔することなくとても素晴らしかったです。

土井:オダギリさんの役柄は難しくて、背景が説明出来ない中で存在感をしっかり出してくださいました。あと、本当に短い登場時間なのですが、麦君のお父さん役の小林薫さん、絹ちゃんの両親役の岩松了さん、戸田恵子さんという素晴らしい俳優さん達に参加していただいた事が、映画自体をとても豊かにしているなと思います。

――本当にそうですね。個人的には岡部たかしさんが好きな俳優さんなので、そのシーンも好きです。

土井:実は映画に使われている部分の3倍くらい喋り続けてくれてるんです(笑)。全部お見せ出来ないのが残念です。

――監督は本作の前に『罪の声』という骨太のサスペンスを撮られていますが、ジャンルが異なる作品を撮り続けていく秘訣というものはあるのでしょうか。

土井:ジャンルは違えども、「みんな人間の話だ」と思ってやっています。演出という意味での自分の重心の置き方は変わってきますが。同じ様な作品を求め続けられるよりも、こうやってタイプの異なる作品を撮れた方が、この仕事をやっている上で楽しいですし、刺激になります。『罪の声』と『花束みたいな恋をした』の間にも、テレビドラマを2本作っていますが、作品ごとにまっさらな状態で一から取り組むことを心がけています。

――「みんな人間の話だ」というのは本当に素晴らしいお言葉ですね。このコロナ禍で監督のドラマをイッキ見したり、改めて楽しんだ方も多いのではないかと思いました。

土井:昨年、『愛していると言ってくれ』(1995)というドラマを再放送していただいて。本放送時は僕も駆け出しのディレクターだったのですが、当時観ていた方の娘さんから「面白かったです」って言っていただいたり、皆さんが改めて豊川悦司さんの格好良さを認識して「トヨエツ」という言葉がトレンド入りしたり(笑)。この仕事を長くやっていることの面白さや意味を感じることができました。それに、20数年前の自分の作品を観るという事は、とても貴重な経験になりましたね。

――それこそ『花束みたいな恋をした』は二世代など、様々な年代の方が楽しめますよね。私も今から皆さんの感想を聞くのが楽しみです。今日は本当に貴重なお話をありがとうございました!

『花束みたいな恋をした』
東京・京王線の明大前駅で終電を逃したことから偶然に出会った大学生の山音麦(やまねむぎ)と八谷絹(はちやきぬ)。好きな 音楽や映画が嘘みたいに一緒で、あっという間に恋に落ちた麦と絹は、大学を卒業してフリーターをしながら同棲を始める。拾った猫に二人で名前をつけて、渋谷パルコが閉店してもスマスマが最終回を迎えても、日々の現状維持を目標に二人は就職活動を続けるが──。

【動画】『花束みたいな恋をした』140秒予告 運命的な出逢いから、衝突し始める二人まで…
https://www.youtube.com/watch?v=2icLu4DwlpU [リンク]

(C)2021『花束みたいな恋をした』製作委員会

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