現実には存在しないものを、あたかも実在しているかのように感じられるVR。

技術も進歩し、最近では皮膚感覚を再現する触覚デバイスの開発も進んでいます。

しかし、どんなに技術が進歩しても、「味覚」のVR化は難しいと思われています。

実際に口に物を入れない限り、味を感じることができないので、一番の難関です。

どうすればVRで味覚が再現できるのか?

ここでは、VR味覚について紹介します。


VR内で味覚を再現するには?

VR内で味覚を再現するには想像以上の困難があります。

味覚とは舌で食べ物を味わう時の感覚で、

「甘味、塩味、酸味、苦味、うま味」

という基本五味を感じることで味を認識します。

これらをVRで再現しようにも、口の中で感じる「味」を電気信号として変換する技術は、映像や音とは違いまだ確立していません。

電気味覚で味を再現する

VRで味覚を表現するためにまず注目されたのは、電気刺激を与えるときに感じる「電気味覚」です。

「電気味覚」は200年以上も研究されているもので、飲食物の後味を増強させる技術などの開発が行われています。

ただし、電気味覚には

・舌を直接電気的に刺激する

・口の中にデバイスを入れる必要がある

・電気味覚は全ての味をカバーしていない(金属味、塩味,酸味,苦味のみ)

・発電・給電の問題

といった課題が残っており実用化までにはまだまだ時間がかかるとのこと。

日本国内で電気味覚を研究している明治大学の宮下芳明教授は、電気味覚を応用した「味ディスプレイ」の開発を発表しました。

味ディスプレイ

「味ディスプレイ」とは基本五味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)を感じさせる電解質をゲル状に固め、そこに電気を流すことでどんな味も再現できるという技術です。

舌を刺激せずに全ての味を遠く離れた場所へも伝達できるため、電気味覚の大きな問題点を解消したものとして大きな話題となりました。

宮下教授は「味ディスプレイ」のVR/ARへの応用についても言及していることから、この技術の今後の進展が注目されています。

参考:「任意の味を表現できる味ディスプレイ」[明治大学プレスリリース]

嗅覚を利用して味を再現する

電気味覚とは別で、嗅覚を利用して味を再現しようとする開発も進められています。

嗅覚と味の再現にどのような関係があるのでしょうか。

味覚と味は完全に一致するものではなく、味の認知には舌で感じる味覚以外に鼻で感じる嗅覚が大きく影響します。

最近の研究では「味」の8割は「風味」、つまり嗅覚によって構成されているともいわれています。

味覚は基本五味を感じる成分を舌にある味蕾(みらい)という味細胞が集まった部分で感知します。

そして、嗅覚の場合は、鼻の奥の粘膜で匂い成分をキャッチすることによって、脳へ神経伝達されることによって匂いを感じます。

そのため、味覚物質を舌で感知できても、嗅覚が鈍くなっていると脳が風味をうまく捉えられずに、「味」を構成できなくなってしまいます。

味の認知には嗅覚が大きく影響するので、匂いを利用すれば味も再現できるのではないかと様々な試みがされています。

仮想現実の世界でも嗅覚をVRで再現するデバイスが開発されており、匂いを通じて味覚を再現するデバイスが登場しています。



匂いを利用した味覚デバイスVAQSO

匂いを利用した味覚デバイスVAQSO

2019年7月、匂いを再現するVRデバイス「VAQSO VR」で知られるスタートアップ企業VAQSOは味覚を再現するVR体験を発表しました。

「VAQSO VR」はOculusやHTC、PSVRなどのVRゴーグルの下部、鼻の上辺りに取り付けて使うものです。

VAQSOデバイスは

  • ・ミント
  • ・チョコレート
  • ・ラーメン
  • ・女性のいい匂い(シャンプー)
  • ・ゾンビの腐敗臭

などの香料が充填されたカートリッジを5種類セットでき、VRコンテンツに連動した香りが出るという仕組みです。

2017年に開催された「東京ゲームショウ2017」では大手ゲーム会社の有名コンテンツに匂いをつけるディスプレイを行い話題になりました。

VAQSOの匂いVR

VAQSOが開発した味覚VRコンテンツ「Tasted VR」では、

  • イチゴ
  • レモン
  • メロン
  • ブルーハワイ

の4種類の香料を装填したデバイスを使ってVR空間の飲食物に匂い・風味をつけることで味を再現します。

発表会などでは、フローズンドリンクをデバイスのカメラを通じてVR空間に映し出し、匂いを選ぶことで味を変化させる体験が展示されました。

何もしなければ薄いスポーツドリンクのような味のドリンクが、

イチゴの匂いが放出されればイチゴ味に

レモンの匂いが放出されればレモン味に

切り替わっていきます。

イベントを通じて200人以上が味覚VRを体験し、全く新しい形のVR体験に驚きと関心が集まりました。

VAQSOは今後、さらにVRにおける味覚や嗅覚の再現をブラッシュアップしていくことで

  • 飲食業界
  • 観光業界
  • エンタメ

など様々な分野で活用が進むのではないかとしています。

参考:VAQSO VR公式サイト

まとめ

口の中で感じる味覚はVRで技術的に再現することは困難です。

この課題を解決するために電気刺激や嗅覚を活用するなど様々なアプローチが試されています。

もしもVRで味覚を再現する技術が確立すると、私たちの体験できる仮想現実に食事が加わり、格段にリアルなものへと進歩していきます。

例えば、自宅にいながらにして観光地の名物料理を味わったり、来店する店を決める際にVR空間で「試食」してから決めることも可能です。

また、ゲームやアニメに登場する料理を味わうことができるなど、これまで想像もできなかったエンタメ体験もできるようになると言われています。

それだけでなく、医療現場でも高血圧や糖尿病などで薄味のものしか食べられない人が味覚VRを使って濃い味の料理を食べる体験ができるので、精神的な負担なく食事療法を進めることが可能です。

このように、味覚をVRで再現する技術が実現すれば様々な分野に大きなインパクトを与えることになり、VRそのものの普及にもつながります。

今後の研究・開発の進展に期待したいですね。








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情報提供元:VR Inside
記事名:「VRで食事も?!VRで味覚を再現するには?