starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

やり過ぎは逆効果?1日90分月23回以上の運動はメンタルに悪影響を与える


運動は身体的健康だけでなく、精神状態も改善します。

では具体的にどれくらいの時間・頻度で運動をすれば、最もメンタルを改善できるのでしょうか。

イギリスのオックスフォード大学のサミー・チェクロード氏(Sammi Chekroud)らの研究チームは、120万人以上の健康データを使用し、運動時間・頻度と精神状態の関係性を検討しています。

結果、まったく運動をしていない人と比較して、運動をしている人はメンタルが落ち込む日数が約43.2%少なくなりました。

そして精神状態を改善する最適な運動の頻度は、1日30-60分、週3-5回であることも確認されました。

しかしやりすぎは禁物です。

1回90分以上の運動を1カ月23回以上行った人は、メンタルヘルスを悪化する可能性があるようです。

この研究の詳細は、学術誌「ランセット精神医学誌」にて2018年8月8日に掲載されました。

目次

  • どれくらいのペースで運動をすればメンタルに良いのか
  • 運動していると精神的な落ち込みが少ない
  • 過剰な運動量は精神状態を悪化させる

どれくらいのペースで運動をすればメンタルに良いのか

どれくらいのペースで運動をすればメンタルに良いのか
Credit: Unsplush

運動は循環器系の疾病、脳卒中、肥満などのあらゆる原因の死亡率を低下することが良く知られています。

しかし運動と精神的健康の関連を調べた研究は存在するものの、その関係性ははっきり分かっていません。

ひとつ具体的な研究の例を挙げると、イギリスのブリストル大学の研究があります。

その研究では、18-69歳の男女361名を対象に、実験期間に運動をするよう指示される人と、指示されない人の2つのグループに分け、運動が精神的状態に与える影響を検討しています。

結果、運動は精神状態に良い効果をもたらしますが、10代においてはそのような効果はありませんでした

このような年齢層で違う傾向が確認された原因の1つには「サンプルサイズが少ない」ことがあったと考察されています。

また、どれくらいの頻度・強度・時間で運動に取り組めば、メンタルに一番良い影響を与えることができるか、一方で運動のやりすぎによりメンタルに悪影響はないかはわかっていませんでした。

運動が精神的健康を改善するのであれば、どれくらいのペース・強度・時間で運動をすればよいのかを明らかにすることは、多くの人にとって有益なはずです。

そこでイギリスのオックスフォード大学のサミー氏らの研究チームは、今までの最大規模の120万人以上の健康データを使用し、運動と精神状態の関係性を検討しています。

研究チームは、2011年、2013年、2015年に行動危険因子監視システム調査により収集された米国の120万人以上のデータを使用しました。

行動危険因子監視システム調査とは、米国全土で毎年行われる自己報告式の電話調査です。集められたデータを分析し、一般的な健康状態に関連する行動リスク要因に関する有病率データを提供しています。

彼らは運動をしている人と運動をしていない人の自己申告による精神的な落ち込みを経験した日数を比較

そして年齢、人種、性別、婚姻歴、年収、教育年数、BMI、身体的健康度の影響を除くため、調整を行ない、運動の有無と精神的状態の関係性を分析しました。

さて運動の有無は精神面にどのような影響を及ぼしたのでしょうか。

運動していると精神的な落ち込みが少ない

分析の結果、運動をしていない人(月に約3.5日)と比較して、運動をしている人(月に約2日)は精神的健康状態が悪い日が月に約43.2%少ないことが確認されました。

またこの傾向は過去にうつ病の診断履歴がある人ほど、運動によるメンタルの改善効果が強いことが分かっています。

具体的には、運動をしていない人(月に約11日)と比較して、運動をしている人(月に約7日)は月に精神的に落ち込む日数が約3.8日少なくなりました。

運動をしていない人(月に約3.5日)と比較して、運動をしている人(月に約2日)は精神的健康状態が悪い日が月に約43.2%少ない
Credit: Chekroud et al. (2018)

さらに運動の種類に関して「チームスポーツ」が精神的健康を改善することが分かりました。

基本的にはどの種類の運動でも効果はあるのですが、ウォーキングやランニングのような1人でする運動よりも、野球やサッカーなどの複数人で行う有酸素運動の方が強い効果を持っています。

またチームスポーツについで、サイクリングとエアロビクスそしてジム通いが精神的健康度の向上に寄与することも分かっています。

運動の種類によって精神的な落ち込みの減少率が変化する
Credit: Chekroud et al. (2018)

しかし1人でできるヨガや家事であっても、精神的負担を約10%以上減少させる効果を持っているので、負荷が少ない運動でもメンタルを改善できるようです。

チームスポーツの方が1人の運動よりもメンタルを改善できる理由は、当然のことながら運動をする中に人間関係が伴うだめだと考えられています。

研究チームは「今回の結果は運動に伴う社会活動が引きこもりや孤立を減らし、チームスポーツが他のスポーツよりも精神的健康の維持に優れている可能性を示している」と述べています。

さらに今回の研究では、運動の種類のみでなく、精神的健康にとって最適な運動量についても調査が行われています。

そしてその結果、興味深いことに運動のやり過ぎが逆効果になる可能性が示されたのです。

過剰な運動量は精神状態を悪化させる

この研究によると、運動と精神状態には「U字型」の関係性があるようです。

つまり、ある地点まで運動頻度を増やすことでメンタルを改善できますが、ある地点を超えるとメンタル状態を悪化させてしまうということです。

その折り返し地点である、メンタル面を改善する運動の最適なペースは「1日30-60分、週3-5回」でした。

メンタル面を改善する運動の最適なペースは「週3-5回、1日30-60分」
Credit: Chekroud et al. (2018)

この折り返し地点を越えた「1日90分以上、1ヵ月23回以上」の運動は、精神状態にとって最適な運動量の場合と比較し、過去1か月に落ち込む日数が約1.5倍増え、メンタルヘルスが悪化してしまう可能性が確認されました。

研究チームは「これまで人々は、運動をすれば精神的健康が良くなると信じてきた。しかし、私たちの研究はそうではないことを示唆している。1回の90分以上の運動を月に23回以上を行うような過剰な運動は、精神的健康状態が良くなるのではなく、悪化する。」と述べています。

運動をする際は、身体的・精神的にも健康になれるよう、時間と頻度に注意し、運動をするよう意識してみてください。

全ての画像を見る

参考文献

One Hour of Exercise a Week Can Prevent Depression https://neurosciencenews.com/exercise-depression-7643/ Exercise linked to improved mental health, but more may not always be better https://www.sciencedaily.com/releases/2018/08/180808193656.htm

元論文

Association between physical exercise and mental health in 1·2 million individuals in the USA between 2011 and 2015: a cross-sectional study https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30099000/ Exercise and the Prevention of Depression: Results of the HUNT Cohort Study https://ajp.psychiatryonline.org/doi/10.1176/appi.ajp.2017.16111223 Facilitated physical activity as a treatment for depressed adults: randomised controlled trial https://www.bmj.com/content/344/bmj.e2758
    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.