はじめに


GoToトラベルキャンペーンが本格化し、東京から都外への旅行を考えている人も多いのではないでしょうか。宿泊代はGoToトラベルでの割引き対象となるので、気になる宿に泊まってみるチャンスです。宿泊するホテルや旅館は旅の楽しみのひとつでもありますね。そこで、ホテル評論家の瀧澤信秋さんに、個性的な空間を楽しみながらも快適に過ごせる、今年オープンしたばかりのホテルを3つ伺いました。今回初めて紹介する最新情報もあるので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

Photo&Text:瀧澤信秋

個性的なコンセプトの宿に注目!


2020年の春から夏にかけては、コロナ禍の自粛等に伴いホテル評論家としての取材活動もままならない状況が続いていました。7月以降は徐々に営業再開するホテルも増え、少しずつではありますが、取材に訪れるホテルも厳選して増やしていきました。各ホテルともに隅々まで消毒・衛生に気遣うと共に、新たなコンセプトを追求する姿勢も印象的でした。今回はそうしたホテルの中からメディアで紹介したことのない、個性的なコンセプトながら決して奇をてらわず快適に過ごせる3つのホテルを紹介します。

TWIN-LINE HOTEL KARUIZAWA JAPAN(長野県軽井沢町)


▲ホテルでは自転車を貸し出しており、レンタサイクルやそのほかのアクティビティを楽しむことができる。

2020年7月に開業したリゾート地のライフスタイルホテル。軽井沢駅から徒歩約7分、軽井沢駅と旧軽井沢のちょうど中間にあたる好立地。駐車場も隣地に立体駐車場25台が設けられ、宿泊者は無料で利用できます。個性的かつ機能的な客室にレストラン・バー、ソファーラウンジ、フリースペース、ランドリーなどを擁し、長期滞在にも適したホテルでもあります。一部客室はペットの同伴も可能です(追加料金3,000円/小型犬1匹)。スペイン王室ご用達レストラン「ホセ・ルイス」も同ホテル内に誕生し、ハイセンスな宿泊客をはじめ、別荘族の舌を唸らせています。
ホテル内には多彩な施設が設けられています。暖炉を囲んでパソコン片手にワインとホセ・ルイスのDELIを楽しめるソファーラウンジ。パソコン作業にはデスクタイプのフリースペースもおすすめです。バーカウンターではバーテンダーと語ってゆったりと。客室は全51室5タイプで、自宅のように寛げて利便性高きステイが実現できます。各部屋で特徴的なのが館内同様に、さまざまなものがペアになっている“TWINのアート”が配されている点。特に様相の違う二つの木を描いた絵など、グラフィックアートが印象的です。落ち着くインテリアの中で、どこか遊び心感じる空間には心くすぐられます。シェアする空間とプライベート、名前の通り“TWIN”(二つ)の空間を持ち合わせたライフスタイル型ホテルでは、クリエイターや感性豊かなインバウンド客、アーティストにノマドワーカーなど多彩な人々が行き交います。

miss morgan hotel(神奈川県平塚市)


神奈川県湘南エリアである平塚に個性派ホテルが2020年3月に誕生しました。特徴的かつホテルを象徴するスペースがラウンジ。宿泊客ばかりではなく街を行き交う人々が自由に使える空間です。モーニングにランチ、カフェ、ディナーそしてバータイムと時間に合わせてメニューや流れる音楽が変わり、さまざまな移ろいを楽しむことができます。エリアの一角にはミニキッチンが備えられ簡単な料理を作って楽しむことも可能。各種ドリンクも販売しています。このホテルのテーマのひとつが“アート”。アートが暮らしのすぐそばにあることを大切にするかのように、ホテル内のさまざまな場所でアートに触れることができ、五感が研ぎ澄まされるよう。日常ではなかなかできない体験です。
ホテルが提供するステイプランも個性的。30日間のロングステイから3時間のショートステイまで、ゲストのライフスタイルに合わせたプランが用意されています。客室にも多様なアートが配されており、アナログレコードを部屋で聴くことができるなど、ワクワクするような時間が過ごせます。客室に付けられたネーミングにも注目です。たとえば201号室のダブルルームは“自由の女神”、203号室のツインルームには“ヒーローの条件”、301号室のダブルルームは“不都合な真実”で、503号室のダブルルームは“逃避行”などなど。なぜそんな名前が付けられているのか、まるで謎解きをしているような気分になれるホテルステイでもあります。

THE BASICS FUKUOKA(福岡県福岡市)


2020年3月1日に開業した個性的なデザインコンセプトのホテル。従前のハイアットリージェンシー福岡からリブランドされました。ポストモダニズムの巨匠マイケル・グレイヴス氏による旧ホテルの特徴のあるデザインが活かされつつ、イメージを一新する空間になりました。ホテルを象徴するのが約5000冊の書物を収納したロビーライブラリー。高さ約42mの吹き抜けが圧倒的なインパクトとなる円形ロビーは以前のホテルでも象徴でしたが、さらに12本の円柱を利用しつつ高さ約8mの書架6本が設置されました。そんな円形に並ぶ書架の内周棚は“シーズンサイド”。日本の伝統的な季節の移ろい「七十二侯」をモチーフに四季の繊細な美しさと文化を表現する書物、文豪作品や全集・写真集等が収納されています。外周棚は“グローバルサイド”。円形ロビーの特性を活かしつつ、実際の方角にある国・地域の名著名作が揃えられています。
また、収められた書物は客室やロビーやレストランなどで自由に読書ができます。客室は全20タイプ238室で、それぞれに「Chapter チャプター(章)」「Episode エピソード(挿話)」「Story ストーリー(物語)」とロビーライブラリーにちなんだ名称が付けられています。1階フロントロビーには「Episode」または「Story」の宿泊ゲスト専用ラウンジが設けられており、大阪で絶大な人気を誇るタカムラコーヒーロースターズ(大阪市西区)より取り寄せた豆を使うコーヒーや、ビール・ワインなどアルコール類をフリーフローで愉しめます。

おわりに


新しい3つの個性派ホテルをご紹介しました。10月からはGoToキャンペーンに東京都も対象となりました。安く旅行ができる機会だからこそ、非日常感溢れるホテルへ出向いてみてはいかがでしょうか。
◆瀧澤信秋
1971年生まれ。ホテル評論家、旅行作家。国内ホテルを対象に、利用者目線やコストパフォーマンスを重視した取材調査、評論、批評を行う。財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボードを務めるほか、多数メディアでも幅広く活躍。著書に『辛口評論家、星野リゾートに泊まってみた』(光文社新書)など。

情報提供元: 旅色プラス