ゴールデンウィーク短期集中連載「スイフト博士カモ?」の加茂 新氏解説で贈るスイスポ丸ごと講座・5日目。今日と明日はボディ編です。プラットフォームから一新されたZC33S。今回のボディは新たな設計思想を採用して、この時代に900kg台のコンパクトスポーツを世に放つことに成功した革新的ボディなのだ!




TEXT:加茂 新(KAMO Arata)

「強靭であり、軽量であること。すべてはドライビングのために。」がキャッチフレーズの970kgボディ

歴史、エンジンと解説を重ねてきましたが、今日明日はボディ編です。




コンパクトスポーツとか、ホットハッチのような呼ばれ方をしてきたこのジャンル(ヴィッツやフィット、マーチ、そしてスイフトスポーツ)。




初代と2代目スイフトスポーツであるZC31S/ZC32Sはほぼ同じスペックで、1050kg程度の車重に130psくらいの自然吸気(NA)エンジンを搭載していた。それでも充分に軽快だったが、3代目となるZC33Sは大きく進化してきた。それは1400cc+ターボエンジンになったこともだが、なんと車重が1tを切ったことが大きなトピックだ。




近年は衝突安全性を高め・るためであったり、そもそもボディの大型化が進められており、スイフトスポーツもZC33Sからは全幅が広がり3ナンバー化された。それでいて80kg近い軽量化を可能にしたのはボディの進化だ。

全体にフレームの曲がりや接合部をゆるやかにすることで、力を逃げにくくする。それによって軽くても剛性感のあるボディを実現した

ZC33Sでは新設計プラットフォームのHEARTECT(ハーテクト)を採用。新発想から生まれたボディで、ボディの骨格をなめらかに接合する設計だ。




これまでで言えば、ボディを横から見たとき、フロントフレームとキャビンは「乙」や「Z」の字のように、キャビンから90°近い角度でフロントフレームが出ていた。その部分を強化するスジガネなんとかとか、そういう補強パーツもあるほどその部分の剛性は重要だし、最近のクルマはストック状態でフロントフレーム接合部にナナメに補強が入っていることが多い。

キャビン部をメインに超高張力鋼板や高張力鋼板を採用してボディ剛性をアップ。とくにキャビン内は、横方向に走るフレームにも超高張力鋼板が採用されている

ハーテクトではそこの取付角度をなめらかに変更。フレームからの入力は浅い角度でキャビンに伝えられる。手を伸ばしてドアを押せば力が入れやすいが、肘を90°にしてドアを押すと肘が曲がる方向に力が逃げやすい。それと同じようなイメージだ。


人間でいうと肘の部分が折れ曲がる方向へ力が逃げにくいので、補強を減らしてボディをシンプルにすることができる。また、サスペンション部品も骨格の一部として使うことで、補強部品の削減に貢献。そうした努力の結果が970kgという軽量ボディを可能にしたのだ。さらに高張力鋼板や超高張力鋼板を使用して、軽量化とボディ剛性を両立させているという。

フロアは後席下あたりまでほぼフラット。とくにエンジン下は真っ平らで相当空力にはこだわっている

メーカーとして軽量化対策として謳っているのはハーテクトだが、ほかにも随所に努力の跡が見られる。




例えばシート。運転席、助手席のシートがZC33Sからヘッドレストが一体構造になった。ヘッドレストの高さ調整はなくなるが、そのぶんステーなどがなくなり軽くできると思われる。実際は純正シートとしてはかなり軽量だ。

先代までは普通のヘッドレストが動くフロントシートだったが、33Sはすべて固定式に。それでいて運転席のみだがシートヒーターが全車標準装備なのは出血大サービスだろう

またマフラーやフロントパイプのつなぎ目などのフランジは肉抜きされたものを採用。HKSのマフラーでいうと軽さが売りの「ハイパワースペックL」と同様の構造なのだ。アフターパーツ並みの努力を純正で重ねているとは驚きである。




そして、フロア形状のZC33Sのハアハアポイント!!


アンダーパネルが先代よりはるかに大きくフロアを覆うようになり、リップから運転席下まではほぼフルフラット。ちょっとお高い欧州車ならともかく、200万円以下のコンパクトカーとしては感動さえ覚えるレベルでフラットになり、空力的に改善されているのだ。




たしかに、東海地方のミニサーキットに行くと、ちょこちょこスズキの車両開発をしている人に会うことがある。それだけ好きな人が作っているんですから、そりゃこだわりますわ!【明日に続く】

情報提供元: MotorFan
記事名:「 スイスポ進化論ボディ編① この時代に970kgのボディという偉業を成し遂げたのがZC33Sだ!【連載|スズキ・スイフトスポーツを愛しすぎた加茂からのラブレター⑤】