そんな快挙の裏側で、優勝したオジェ選手は最終日の朝、SS17に向かうリエゾン区間(競技区間への移動中)で、なんと一般車両との接触事故に遭遇していたというのだ。
最終日の日曜朝、サービスパークを出発したオジェ選手は、クルマにおける何か(具体的には不明)をチェックすべきことに気が付いた。そのときには中央車線を走っていたオジェ選手だったが、右前方にバス停を見つけたので停止しようと車線変更を行った。そのとき、その車線を走る別のクルマが背後からスピードを上げて接近してきたとともに、オジェの乗る1号車の右サイドに衝突してしまったのだ。 事故直後、オジェ選手はクルマを止め、双方にけが人がいないことをチェックし、相手のドライバーと連絡先を交換した。そして、警察が現場に到着すると、彼らはまったく英語を話せなかったということもあってか、チームメンバーは現場で事故処理を行うように要求されたという。
TOYOTA GAZOO Racingのチームスタッフであるレーティネン氏が現場に到着したときは、ラリーコントロール(ラリー本部)と警察が電話をしているときだった。オジェ選手によれば、ラリーの継続が確認されたように見えたが、車両の前に立っていた警官にはその情報が伝わっていなかったらしい。オジェ選手らはすべての情報を伝え、チーム代表も現場にいたことから、オジェはその場を去って良いと考えてしまったのだ。 この「車両の前で警察官が現場検証を行っていたにもかかわらず、オジエが現場から立ち去った」という行為が、審議の対象となったわけだ。 オジェ選手は、こうした行為を起こすべきではなかったこと、また、ソーシャルメディアで広まっている映像に見るようなことは非常に悪い振る舞いであることを理解していると付け加えた。
事情聴取の結果、FIAのスチュワードは、今回の交通事故はレギュレーション違反ではないと結論づけた。一方で、オジエ選手の行為は受け入れられるものではなく、車両で警官を追いやるという安全ではない状況をオジエ選手は引き起こしたことは、モータースポーツの利益を損なうものであるとした。 これにより、オジエ選手には5000ユーロの罰金を科すとともに、WRC1イベントの出場停止(執行猶予付き)とすることを決定。また、オジエ本人の供述によれば、事故現場から立ち去るときに事故のショックから信号無視を起こしており、これに対しても2000ユーロの罰金を科されている。合計7000ユーロの罰金となった。 同時に、チームには訓戒処分が下されることになった。 まずは事故に遭遇した双方に怪我がなかったこと、そして車両の右側のドアが大きく破損したものの競技の続行が可能だっただけでなく、大逆転劇を演じるコンディションを保てたことは幸いだったと言える。 事故は不運だったが、図らずもGRヤリスWRカーの屈強なボディを証明することにもなったわけだ。
そもそもラリーは一般公道を主に使用したタイムアタック競技だ。競技区間と競技区間をつなぐルートのことをリエゾンと呼び、この区間もラリー車は交通法規に則って走行する。したがって、ラリー車両にはナンバープレートが装着されているし、自動車保険にも加入しなければラリーには参加できない。 日本では11月11日~14日に愛知・岐阜でラリージャパンが11年ぶりに開催されるわけだが、こうした事故が起きないことを祈りたい。また、リエゾン中のラリーカーに遭遇した際は、無闇に沿道から車両に向かって手をだしたり、クルマで並走可能な場面には興奮のあまり追突したりしないよう、十分に気を付けて応援してほしい!