マツダの電気自動車MX-30EVは、WLTCモードで一充電走行距離が256kmだ。実走行では200km。航続距離が足りなくて不自由するか、電気代はいくらかかるか? ガソリンモデルのMX-30と比べたらどうなのか? 1週間試乗して考えてみた。

試乗車は、Basic Set(458万7000円)Basic SetとHighest Set(495万円)の主な装備の違いはHighest Setは、 アダプティブLEDヘッドライト/ クルージングトラフィックサポート/ 運転席10Wayパワーシート/ 運転席&助手席シートヒーターが付き、 オーディオがHighest Setだとボーズの12スピーカーとなる。

マツダの電気自動車、MX-30EVモデルと1週間ほど生活を共にした。ご存知のとおり、MX-30には、ガソリンのSKYACTIV-G2.0(156ps/199Nm)+24V M-HYBRIDのモデルと35.5kWhのバッテリーで145ps/270Nmのモーターを駆動するEVモデルがある。




MX-30EVモデルのバッテリー容量は、35.5kWh。これは、最新のEVとしては控えめな数字だ。日産リーフのレギュラーモデル(e+ではないモデル)のバッテリー容量は40kWh、プジョーe208/e2008は50kWh、テスラ・モデルS(スタンダードモデルプラス)は55kWhだから、やはり35.5kWhは、小さめである。

当然、WLTCモードの一充電走行距離も256kmと短い。実走行では200km程度だろう、と思って乗り出した。




1週間で492.5km、走ってみた。

全長×全幅×全高:4395mm×1795mm×1565mm ホイールベース:2655mm

車両重量:1650kg 前軸軸重920kg 後軸軸重730kg
最小回転半径:5.3m  最低地上高:130mm トレッド:F1565mm R1565mm
マツダ得意のGベクタリングコントローは、EVのMX-30こそがもっともその真価が感じられる。

MX-30EVモデルの走り味はひと言でいって、とても上質だ。「EVになったらドライブフィールの違いなんてそんなにないんじゃないか」と思っている方も多いかもしれないが、EVの方が違いが明確になる。




本稿のテーマは、航続距離と電費だから、詳細には書かない。が、MX-30EVの滑らかなドライブフィールは、現在の市販EVモデル屈指だと言っていい。とにかく気持ちよく滑らかに加速し、思うように曲がる。床下にバッテリーを積んでいるEVの常だが、フロア剛性が高く、乗り心地もいい。

MX-30のインテリアは、品が良く、いいモノ感がする。

フリースタイルドアを全開するとこうなる。

マツダの現世代のモデル(MAZDA3、CX-30、MX-30)は、どれも標準オーディオのレベルが高いが、MX-30EVは、パワートレーンの音・振動が小さいから、さらに良い音が愉しめる。




ステアリングホイールの左右には、パドルがあって、左のパドルに−(マイナス)、右のパドルに+(プラス)と書いてある左のパドルを操作すると回生減速度が強まり、右のパドルを操作すると回生減速度が弱まる。どちらも2段階だ(デフォルトを含め計5段階)。これを操作しながら走るのが楽しい。通常はDだが、高速道路な上り坂にさしかかったときは、右のパドルを引く。市街地などで、アクセルペダルで加減速をコントロールして走りたいときは左のパドルを1回、あるいは2回引いてワンペダルコントロールで走れる。

Basic Setのシートにはシートヒーターが付かないが、シートヒーターはぜひほしい装備。となるとHighest Setを選ぶしかない。

ということで、MX-30EVのポイントは、


1:デザインが好きになれるか


2:フリースタイルドアの使い勝手を受け入れられるか


そして最大のポイントは


一充電走行距離約200kmが実用上、どうか?




だと思う。


MX-30EV(もちろん、ほかのEVでも)を買う人は、自宅で200V充電ができる人がほとんどだろう。結論から言えば、MX-30EV、200kmで大きな不満はなかった。一充電走行距離は長ければ長いほど、バッテリー容量は大きければ大きいほどいい、という考え方もあるが、バランスが難しい。

自宅での200V充電。翌朝には100%になっている。充電口はリヤ右フェンダー。使いやすい。AC(普通)充電 最大6.6kWに対応した車載充電器を持っているので、自宅が200V・30Aのコンセントなら充電時間は半分になる。

MX-30EVをお借りしていた間、毎日、自宅へ帰ると、プラグインして充電を開始し、翌朝出かける時には、100%になっている。100%充電で、メーター上の走行可能距離は最大で195kmだった。




自宅の充電は200V・15Aだ。したがって、1時間で充電できるのは、3kWhである。夜10時に帰宅して、翌朝8時に出かけるとして、10時間。3×10で30kWhできる。




MX-30EVのカタログ上のバッテリー容量は35.5kWhだが、実際に使えるのは、おそらく30kWhだろう。これを「ユーザブル・エナジー」とか「ユーザブル・キャパシティ」と呼ぶ。30kWhの90%を使って、残り10%(となるとメーターに表示される走行可能距離は20km程度だ)で帰宅しても、翌朝には100%になる。




自宅で充電できれば、バッテリーの残量は、要するに自分のガレージに帰り着けばいいと思えるようになる。たとえ、「残り5km」となっても、自宅まであと2kmならドキドキすることはない。

第三京浜道路都筑パーキングエリアのCHAdeMO急速充電器の出力は40kW。

お借りしている間、往復150km程度のドライブを2回してみたが、まったく不安にならなかった。




ということで、普段使いなら急速充電をすることもあまりないのではないか。片道200kmを超える行程なら必ず急速充電をドライブコースに入れておかねばならないから、そういうドライブをどのくらいの頻度で行なうか、考えたうえでMX-30(Honda eも同じ)を選ぶ必要はある。




EVを買ったら、使い勝手はどうだろう? というテーマも検証したいので、必要なかったが急速充電も行なってみた。

急速充電直前はバッテリー残量は12%、走行可能距離は24kmだった。走行可能距離が50kmになると「駆動用バッテリーの残量が低下しています」というアラートが出る。
CHAdeMOの充電口も右リヤフェンダー側。
30分間の充電時間はPA内のスタバで読書。余裕があるときはとてもいい時間だが……。

バッテリー残量15%、走行換算距離31kmまで走ったあと帰宅して、あえて自宅で充電せず、翌日急速充電をしにでかけてみた。




目指したのは、第三京浜道路都筑パーキングエリア。ここには、CHAdeMOの40kWの急速充電器が1基設置されている。




Googleマップで調べると、自宅から都筑PAまでは、都筑PAが上り車線ということで、21.3km。都筑PAから自宅までは14.2km。ここで考えたのは、走行換算距離31kmでは、都筑PAの急速充電器が万一トラブルだった場合、自宅まで帰り着かないということだった。それは、まずい。ということで、少しだけ自宅で充電して「23%・41km」の数字を確認してから出発した。




こういうところが、EVは面倒……かもしれない。




都筑PAの急速充電器は幸いなことに先客がなく、すぐに充電できた。急速充電時間は30分間が基本だ。

30分間の急速充電後のバッテリーの状態。30分間で100km分充電できたわけだ。

充電前:航続距離24km バッテリー容量12%


充電後:航続距離124km バッテリー容量64%




30分間で100km分(52%分)充電できたわけだ。


ユーザブル・エナジーが30kWhだとすると、15.6kWh分になる。




さて、今度は電費の話である。


今回492.5km走って総合電費は6.7km/kWhだった。


1kWhで6.7km走れるという意味だから、これにユーザブル・エナジーである30kWhをかければ201kmとなる。やはり走行可能距離はMAX200kmと考えておけばいい。






MX-30に関しては、コンベのモデルにも試乗させていただいている。

今回の走行可能距離は492.5km、平均電費は6.7km/kWhだった。

駆動用モーター:交流同期モーター モーター型式:MH型 最高出力:145ps(107kW)/4500-11000rpm 最大トルク:270Nm/0-3243rpm 駆動用二次電池:リチウムイオン電池 総電圧:418V バッテリー容量:35.5kWh

WLTCモード燃費は、15.6km/ℓ。このときは、520km走った燃費が14.5km/ℓだった。EVもガソリンも約500kmずつ走ったわけだから、それなりに信頼性のあるデータだと思う。




これを金額換算してみよう。走行距離500kmでの計算だ。


コンベのガソリンモデルは


500km÷14.5km/ℓ=約35.5ℓのガソリンを使う。


現在のレギュラーガソリンの価格が147円/ℓだとすると


35.5ℓ×147円で5072円




今度は、EVモデルである。


500km÷6.7=約74.6kWhの電力を使う。


1kWhの電気代は、契約によってさまざまだろうが、自宅を例にとると1kWh=約26円だ。


74.6kWh×26円=約1940円となる。

ボディ色はマシーングレープレミアムメタリック

つまり、500km走るのに


コンベのMX-30は5072円


EVのMX-30は1940円


かかるわけだ。




EVの方がずいぶん安い! もし、年間1万kmの走行なら


コンベのMX-30は10万1440円


EVのMX-30は3万8800円


ということになる。その差額は6万2640円。4年間で25万560円の差額となる。




なんで4年間にしたか? それは、EV購入に関する環境省の補助金の条件が4年間の保有だからだ。



4年間の「再生可能エネルギー100%電力の調達」と「モニター制度への参加」を要件として、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池自動車(FCV)を購入する個人、地方公共団体及び中小企業等に対し、購入時に補助金を支給します。例えば、電気自動車を購入する場合、最大80万円を補助します。

一充電走行距離(WLTCモード) 256km 交流電力量消費率 WLTCモード:145Wh/km 市街地モード 121Wh/km 郊外モード 129Wh/km 高速道路モード 152Wh/km

MX-30EVの場合は、46万6000円の補助金が出る。東京の場合は、これに東京都の場合東京都ZEV導入補助金(令和3年度)が60万円つく(それぞれの自治体で補助の金額・条件が違う)。となると458万7000円のMX-30Basic Setは、352万1000円で購入できることになるのだ。




対する、MX-30のコンベモデルは、オプション込み(MX-30の場合は、パッケージオプションをつけて自分好みの仕様を作るという考えだ)で297万9800円だった。




購入価格の差は、車両価格の160.7万円から54万円ほどになる。さらに、燃料代・電気代で25万円に縮まる。トータルで30万円の違いになる。

サスペンションは、Fマクファーソンストラット Rトーションビーム式。タイヤ:F&R 215/55R18 シルバー塗装 ブリヂストン TURANZAT005A

もちろん、差額がゼロでも、さらにはEVの方が安くて航続距離に不安がある限りEVは選ばないという人もいるだろう。その一方で、MX-30EVモデルの上質な走り味があれば、200kmの航続距離でも不便はない、という人もじつはたくさんいるのではないだろうか?




では、筆者はどう感じたか?

これは、EVすべてに言えることだと思うのだが、


「あと50km、いや30km航続距離がプラスされたらいいのに」


と感じた。


実走行距離が250kmのEVなら、280km、300kmなら330kmというように


……。つまり、そこはつねにないものねだりになってしまうのだ。




コンベのエンジン車より実質50万円くらいのアップで、400km走れて、15分の急速充電で100km分(つまりより高出力の急速充電器がある程度普及する)充電できるようになれば、迷いなくEVを選ぶだろう。それまでは、いつも「あともう少し走れればいいのに」って思うだろう。だが、不自由しない使い方、不自由しない人は確実に増えている。




マツダMX-30EVモデルの年間販売目標台数は500台と控えめだが、少なくても500人よりはだいぶ多くの人がこのクルマで不自由なくハッピーなカーライフが送れると思う。

MX-30 EV MODEL Basic Set


Technical Specifications


全長×全幅×全高:4395mm×1795mm×1565mm


ホイールベース:2655mm


トレッド:F1565mm R1565mm


サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式


車重:1650kg




パワートレーン:e-SKYACTIV


駆動用モーター:交流同期モーター


モーター型式:MH型


最高出力:145ps(107kW)/4500-11000rpm


最大トルク:270Nm/0-3243rpm


駆動用二次電池:リチウムイオン電池


総電圧:418V


バッテリー容量:35.5kWh


水冷式


充電:DC充電 CHAdeMO


AC(普通)充電 最大6.6kW


一充電走行距離(WLTCモード)


256km


交流電力量消費率 WLTCモード:145Wh/km


市街地モード 121Wh/km


郊外モード 129Wh/km


高速道路モード 152Wh/km




車両価格:464万2000円

情報提供元: MotorFan
記事名:「 マツダMX-30EVは使えるか? 500km走って考えた。コンベのMX-30とEVで燃料代・電気代はどっちが高い?